● Ⅳ号Aのボギー転輪
某所で写真を見る機会があったので、その記憶のみで描きました。
初期のⅣ号戦車の転輪ボギーは後期のものと比べていくつかの相違点があります。
改良の要点は、地上近くの低い所の形状を洗練させて泥等が付着しにくくしたもの
と思われます。
板バネの前面を鉄板でエンクローズして破損防止とし、二本のボルトを廃止。板バネの
固定用クサビの先端を曲げて抜け防止としていたのを止め、先端をその中に納まる
ようにしています。いずれも地上物があたって破損したりひっかかったりする事への
防止策でしょう。
板バネの強化についてはまだ記述は見つけられませんが、ヘッツァーの記事の中に
前方が重くなったので前のリーフスプリングを7mm厚から9mm厚にしたとありますので、
Ⅳ号でも同様の方法がなされた可能性が出てきました。
● Ⅳ号戦車の鋼製転輪(サイレントブロック)
Ⅳ号戦車系列の重量増加対策の一つがスチール転輪です。
上左図はパンツァー誌の図面を若干手直ししてトレースしたものですが、細部が
実際の物と異なるようです。青い部分がゴムのパッドで振動や衝撃を吸収する
ようにしたメカです。緑の部分はベアリングですが、円筒形のコロが使用されていた
ようです。赤い棒が車軸ですがどうやって車輪を固定しているか今一つわかりません。
ハブキャップで押さえているとは考えにくいので、固定用の部品が中にあるはずです。
Youtubeに当時の整備風景を見つけたのですが、肝心の固定作業は映っていません。
当時のニュース映像
http://www.youtube.com/watch?v=VwLunJBdy3g
Ⅳ号系列の走行系は、小さめな転輪と簡単な機構のため整備性は極めて良好
だったと思われます。
● 計画戦車E-50/75の転輪
Eシリーズという戦闘車両製造計画が大戦末期にドイツで立案されています。
E-5、E-10、E-25、E-50/75、E-100、からなる戦闘車両群は、例の
兵器局第6課の提案になる次世代の生産計画を統合するものでした。
いくつかの設計が実際に製造され写真も残っていますが、車両として完成したもの
は一つとしてありませんでした。
上図はそうしたものの一つで、1944年に完成した転輪サスペンションです。
タイガーⅡ戦車に実際に装着されて走行試験を行ったとされていますが、詳細は
分かっていません。
形状的に気が付くのは、Ⅳ号戦車やフェルディナント駆逐戦車のサスペンションと
よく似ているということでしょう。ただし、二本のアームはそれぞれのスプリング・ダンパー
ユニットに接続されているので、独立懸架装置であるといえます。スプリングは独自の
板バネを重ねた構造になっていて、コイルスプリングより大きな加重に対応できそうです。
二個の転輪がオーバーラップしていますが、タイガーなどの複雑な転輪配置から
見ればかなり簡略化されています。これで実際に問題が起きなければ、Ⅳ号戦車でも
私の案のようなオーバーラップの大径転輪が使えることになります。
どこかに前述の実験の詳細についての資料があればよいのですが・・・。
● オーバーラップ転輪の配置
オーバーラップ配置にも種類があって、ドイツはそれらをすべて製造しました。
千鳥式とはさみ込み式があり、キャタピラへの重量分布を一定にした上、捻り応力が
かかるのを極力避けようとしていたことが分かります。
タイガー戦車の転輪は整備兵泣かせとして有名で、その教訓からか後年に簡略化が
進んでゆきます。最終的に到達したE-50/75の配置は、整備性と実用性の経験上
から導き出された回答ですので、実現する可能性は充分であったといえましょう。
ただし、大戦後の戦車がオーバーラップ配置を全くかえりみなかったことを考えると、
技術上の特異点であったことも又事実といえます。
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