マンション・メンテblog

集合住宅管理新聞「アメニティ」のブログです。工事業者募集やセミナーの案内などを随時掲載していきます。

直結増圧給水への切り替え工事を検証する

2005-08-10 09:00:00 | 直接給水

Koji47_01 狭山台第二住宅(埼玉県・狭山市)



NPO日住協主催による工事事例見学会が7月9日(土)、直結増圧給水方式への切り替え工事を、3月に竣工した狭山台第二住宅にて開催された。



11管理組合から総勢40名が参加し大盛況であった。当日は雨模様の一日であったが、工事見学時には幸いにも雨は止んでいた。



当日は近くの管理組合の工事事例(ガーデンシティ狭山の加圧給水ポンプの更新事例)もプログラムに組まれ、2団地の給水設備改修方法が見学でき、参加者には改修方法の異なる事例を、1日で見学でき大変参考になったのではないだろうか。狭山台第二住宅管理組合の集会室において、同管理組合理事長から、今回工事への取組みなどが紹介され、続いて2団地の設計・監理を担当した、今井建築設備設計事務所所長・今井哲男氏による「直結増圧給水方式の解説とマンションにおける給水設備の現状」と題しての講演があり、また、2団地の改修工事を行った京浜管鉄工業・の現場代理人から、パワーポイントを用いての2団地の改修時の説明があった。その後狭山台第二住宅の改修現場を見学し、予定時間をオーバーして活発に続けられた。



■狭山台第二住宅管理組合からの説明(理事長談)



数年に渡り協議されてきた、直結増圧給水工事が完成した後、住民から水道の水が美味しくなったとの声が、またお茶をやっている方からも、立てたお茶が美味しくなったと感謝された。



今回の直結増圧給水工事は「設計・監理方式」を導入したが、工事の成功は設計事務所の提案された計画が、シンプルな設計であり狭山市の水道課の意向と一致した設計であったことは大きな要素となっている。



狭山市での大型団地への直結増圧給水は第1号のケースで、市の取り組む姿勢にも並々ならぬものがあり、きつい要求もあったが設計者と管理組合が同席しての事前協議では、ほぼ当方の要望を取り入れてもらうことができた。しかし、市の要望にはできる限り協力をしてきたつもりである。



Koji47_02 柵で囲った給水ポンプ(狭山台第2住宅)



■狭山台第二住宅における直結増圧給水システム切替工事の概要(H17年3月竣工)



 所在地=埼玉県狭山市狭山3-26-2 住宅規模=5階建11棟・全270戸/1975年旧日本住宅公団分譲



Koji47_03 給水ポンプ内部



改修前の給水方式は、「加圧給水方式」で配水本管から一旦受水槽に貯留した水を加圧給水ポンプで加圧し、各住戸に給水する方式をとっていた。新システムは、これを配水本管からの引込管に直接ポンプを接続する「直結増圧給水方式」にシステム変更を行った。11棟270戸に対して、直結増圧給水ユニットを7台設置。新システムに改修するにあたって、各棟までの配管は全て高密度ポリエチレン管(PE管)で新規に配管し、不要となった既存ループ配管は残置としていた。直結増圧給水方式にしたことにより、既存ポンプ室(約70m2)及びポンプ地下にある地下水槽は不要となったので、管理組合ではこのポンプ室の有効利用を検討している。 後半は近くのガーデンシティ狭山住宅にマイクロバスで移動しての見学



Koji47_04 図1.狭山台第二住宅の改修後の給水システム


Koji47_05 ガーデンシティ狭山(埼玉県・狭山市)



■ガーデンシティ狭山の加圧給水ポンプ更新工事の概要(平成11年3月改修)



 所在地=埼玉県狭山市北入曽755-1 住宅規模=11階建1号館250戸、2号館248戸/1983年民間分譲



Koji47_06 給水システムを見学



1号館、2号館とも給水システムは変更せず、ポンプのみ更新した事例であった。ポンプは旧型の陸上ポンプ2台(1台は変速ポンプ、1台はエンジン直結の定速ポンプで1号館、2号館とも同じ)で運転していたが、修理用部品の製造が中止されていて、故障時の修理に対応できないことが懸念されていたため、最新式のインバーター制御方式の給水ユニットに更新した事例であった。インバーター制御方式の給水ポンプは従来のものと比較して、ランニングコストが改善され省エネを達成しているとのことであった。2号館の改修にあたっては、1階にあった給水ポンプを地下室にある受水槽側に降ろすことにより、ポンプ吸引側逆止弁の故障不安からの解消をはかったと、設計者の説明があった。そのために旧ポンプのあった1階床を開口し、地下室に下りる鉄骨階段を設置するなどの改良がなされていた。当日は見学者も鉄骨階段から地下室に下り、受水槽脇に設置されている給水ユニットを見学できた。



Koji47_07図2.ガーデンシティ狭山の給水システム



<アメニティ新聞275号 2005年8月掲載>




豊島区初の高置水槽方式から特例直圧給水方式へ切替え

2004-11-10 09:00:00 | 直接給水

藤和高田馬場コープ
藤和高田馬場コープ

 (東京・豊島区)



「特例直圧給水方式」と言われても、聞き慣れない言葉であろう。これまで一定規模のマンションでは、受水槽や高置水槽、その他付帯するポンプ類など必要であったが、平成16年6月1日より、一定の要件を満足していれば1戸建てと同様の水道直結が可能となった。つまり改修する場合に、給水圧力等一定の適用要件等満たす必要はあるが、受水槽や高置水槽などを撤去して給水できる特例の取扱いを受けることが可能になった。



改修工事の概要



藤和高田馬場コープでは、すでに給水管のエポキシライニング工事(更生工事)を実施しており、今回2回目の更生工事を検討していたが、将来的なメンテナンスコストを総合的に解析したところ、共用給水管をステンレス管で更新することに併せて給水方式の切替えを行うことになった。



また、雑排水管(排水用炭素鋼鋼管)のねじ部に腐食が烈しく、今後、漏水する可能性が懸念されたため、埋設部分を除く排水縦主管を耐火二層管で更新している。



給水管等更新改修の経緯



このマンションは、4階建てで30戸、築年数25年という小規模分譲マンションであり、昨年より給水管および排水管の改修を検討していた。高置水槽の耐震性に不安があることや将来的なメンテナンスコストを削減するため、当初は、配管の更新に併せて給水方式を高置水槽および受水槽が不要になる増圧直結給水方式で検討していた。おおむね改修の方針が決定していたところ、東京都では『「特例直圧給水」及び「3階までの受水タンク以下装置を直圧直結給水に切替える場合の例外」の取扱い』ができることを知り、早速その可能性を検討した。その結果、水頭圧等適用要件をクリアすることが分かり、改修方針を変更して給水管の更新および特例直圧給水方式での改修に切替えを行った。



高置水槽および鉄塔撤去前
高置水槽および鉄塔撤去前


Koji40_3
高置水槽および鉄塔撤去後


「特例直圧給水方式」の適用要件



対象となる建物は、4階または5階の小規模マンションに限られ、口径が20mm以上50mm以下で、動水圧、所要水量および末端給水栓の流量など一定の要件に該当しなければならない。詳細については、東京都水道局の所轄事業所に問い合わせ、事前調査申請を踏まえて「実施対象区分」に該当することを確認してから設計審査の申請に移行することになる。



当マンションは、建物の規模のほか、一部がワンルーム賃貸を併設した分譲マンションで戸数の割には所要水量が少ないことや、地理的に見て周辺よりも地盤が比較的低いため給水圧が十分にあったことが幸いした。通常のファミリータイプのマンションであれば、20戸程度が限度と思われる。水道使用量が少なく、小規模だからといって適用できるとは限らないが、将来的な保全費用削減の効果を期待できるため、一応は検討する価値があるものと思われる。



受水槽撤去前
受水槽撤去前


受水槽撤去後
受水槽撤去後


設計・監理
有限会社 鈴木哲夫設計事務所
鈴木哲夫



Koji40_6 Koji40_7



<アメニティ新聞266号 2004年11月掲載>




高架水槽方式から直結増圧給水方式に切り替え 大型団地では稀なケース

2004-01-10 09:00:00 | 直接給水

Koji31_1
サンコーポ検見川

(千葉県/千葉市)



今月は千葉市のサンコーポ検見川の工事事例をご紹介します。給水方式を直結増圧方式へ切り替える事例は、大型団地ではきわめて稀です。



昨年12月6日、給水設備等改修工事中のサンコーポ検見川(千葉市美浜区真砂5-2)において工事見学会が開催され、7管理組合25名の参加があった。同住宅は、昭和49年に京成不動産他が分譲した、RC造5階建4棟169戸の自主管理の民間マンションで、今回が第2回目の給水管改修工事(1回目は、平成6年にライニング施工)となる。



今回工事の主な特徴は、



  1. 従来の高架水槽給水方式を直結増圧給水方式へ切り替え改修、


  2. 共用部給水管をステンレス管に、専有部給水・給湯管をポリエチレン管に更新、


  3. 住戸の玄関から洗面所へかけての給水・給湯管を隠蔽工法(床下及び壁内の既存同位置に配管)による施工、


  4. 専有部分工事の工事費を管理組合が立て替え融資


など。工期は平成15年7月~12月。



安心して暮らすために直結給水方式に



同管理組合では、今回工事の計画を早い段階から着手し、更生工事も含めて検討していたが、4・5階の水の出が悪く、銅製給湯管(継手部分等にピンホール)からの漏水事故等もあり、衛生面からも安心して暮らすために直結方式を選択した。



工事の態勢としては、4月の通常総会で、「共用部分の設備更新」並びに「給水設備改修工事専門委員会(新任理事8名、旧理事会並びに有識者6名の計14名がメンバー)」の設置を決議し、同委員会が工事計画を推進することになった。6月には臨時総会を開催して、専有部分の工事について決議。共用部分工事については管理組合が費用負担、専有部分については各戸のオプション工事とした。



また、専有部分のオプション工事を促進させるための処置として、戸当たり30万円を上限に管理組合が一時立て替え(利用する各戸は月額1万円を毎月返済)を実施、約50%の住戸がこの制度を利用した。



Koji31_2 専有部復旧工事



施工会社の選定にあたっては、6社に見積りを依頼し、ヒアリングを行って3社にしぼり、財務内容等、専有部分のリフォーム等、専有部分にも実績のある京浜管鉄工業(株)に決定し、同社の責任施工による工事とした。



工事の広報については、工事広報並びに工事説明会を開催して周知徹底した。



共用部の工事



既存の受水槽は地下式のため、今後コンクリートの劣化も予想され、外部からの水の浸入が懸念されることからも衛生上に問題があった。したがって、これら衛生問題の解消及び既存受水槽設置スペースの有効利用、省エネルギーの推進などを実現するため、



  1. 住戸内給水圧力を通常器具使用圧力である0.15Mpa まで上げる、


  2. 給水管老朽化による漏水の防止、


  3. 受水槽及び高架水槽のメンテナンス費用の削減、衛生面の向上、


  4. 新規取り付け給湯器の給湯能力の復活、


  5. 給水量の増加、


  6. 資産価値の向上、


などを目的に給水設備を改修することとした。主な工事内容並びに範囲としては別表の通り。



主な工事内容及び範囲



























工事項目工事内容
1次側給水工事 給水取出配管口径変更工事。敷地の北側水道本管より1箇所、100 ¢の水道管を埋設にて引き込み、敷地内へ仕切り弁を設置する
ブースターポンプ設置工事 サブステーション~管理棟スペースに屋外設置型増圧ポンプを設置(電気工事他を含む)
2次側給水工事 本管制水弁2次側~増圧ポンプ~棟内飛込迄を高性能ポリエチレン管(PE)、棟内引込~各棟引込~各棟PS内竪管迄をステンレス鋼管(SUS304)にて更新
PSメーター廻り給水配管工事 PS内の給水枝管を、ステンレス鋼管(SUS304)にて更新
雑工事
  1. 高架水槽撤去工事、受水槽撤去工事(マンホール撤去後上面を平坦に仕上げ)


  2. 工事後の各戸給湯器の差圧調整及び性能測定
    調査対象項目
    • 給水量 適正:12L/min 以上


    • 給湯量・温度 適正:10L/min 以上、60℃ 以上
PS内温水配管更新工事 PS内竪管系統バルブ以降~カロリーメーター~熱交換器迄の温水竪管及び枝管を、ステンレス鋼管(SUS304)にて配管
熱交換器の接続部は抗菌・絶縁の為ピュアフレックス(同等品)を使用


専有部の工事



専有部給水給湯管工事はオプション工事とし、主な工事内容としては、



  1. 隠蔽工法により玄関口から洗面所までの給水管・給湯管を更新


  2. 配管工事箇所の壁・床の解体復旧工事


  3. 上記工事に伴うリフォーム工事


専有部工事の着工にあたっては、



  1. 事前に各戸アンケートにより、配管工事の希望の有無、室内の内装仕上り、ユニットバスの状況等の調査、


  2. アンケートに基づき、施工担当者か各戸毎に訪問して住戸内の事前調査並びに住戸内工事の詳しい説明等打合せ、


  3. 住戸内工事の実施(日程4日間)


の手順で進めた。また、この住戸内工事を機に、水回り等のリフォームを希望する住戸のために、工事事務所内にモデルルームを開設して、各種水栓類、システムキッチン、洗面化粧台などの展示とリフォーム相談も行った。



なお、同住宅の立地する地域は入居当初から地域暖房が施されており、今回工事ではその調整にも注力しなければならない工事でもあった。



<アメニティ新聞256号 2004年1月掲載>




大型団地の受水層加圧給水システムから直接給水/直結増圧給水へ

2002-05-10 09:00:00 | 直接給水

並木二丁目第九住宅
(神奈川県・横浜市)



横浜市金沢区並木二丁目第九住宅
中層5階建5棟129戸、低層2~3階建21棟117戸への導入改修事例



はじめに



旧厚生省では、1991年6月【21世紀に向けた水道整備の長期目標】を策定し、安全でおいしい水の供給の推進が図られており、その一つに直結給水(受水槽を介さない給水方式)の範囲拡大がテーマとして取り上げられている。



従来、直結給水の範囲は2階建ての建物まで、3階て以上は受水槽方式による給水が原則とされていた。これを10階建て程度の建物まで拡大し、欧米先進国と同程度までその範囲を拡大していこうとしている。



このような背景のもと、平成7年10月より東京都水道局にて「増圧直結給水方式」が導入されたのをはじめ、各地の自治体が増圧直結給水方式の導入をしてきた。横浜市水道局でも平成12年10月より増圧直結給水が認可されることとなった。



LCC(ライフサイクルコスト)の検討



第九住宅管理組合では、長期修繕計画の中で、給水設備改修について委員会を設置して検討中であったが、折しも横浜市水道局が増圧直結給水の導入を打ち出したのを機に、コンサルタントに依頼し、給水設備の改修方法の比較検討に入った。



当団地の従来の給水システムは、一旦受水槽に貯水し加圧給水ポンプで各棟に給水していた。建築後19年を経過し、受水槽、給水ポンプの劣化、非常時用の発電機は部品も無く修理不可能な状態であり、埋設給水配管にも漏水が散見されていた。



そこで、従来の給水システムでの改修費用(受水槽・給水ポンプ・埋設配管等)と直結給水システムに変更した場合の今後40年間のLCCのシュミレーションを行った結果、直結給水システムの方が改修費用及び維持滋養負担の面で有利であり、ランニングコスト(電力量料金)の面でもはるかに有利であることが分かった。



Koji14_1 従来の受水槽給水



Koji14_2直結給水/直結増圧給水



管理組合の取り組み



管理組合ではコンサルタントの答申を受けて臨時総会を開催し、直結給水化工事の承認を得て、平成13年9月より工事に着手し、14年2月9日に竣工式を執り行った。



直結増圧給水システム 横浜市水道局の場合



直結増圧式給水を希望する場合には、事前に所轄の営業所等と協議を行い「直結給水事前協議申請書」を提出しなければならない。同協議書提出後、直結増圧式給水の可否は管理者(水道管理所)が判断する。



直結式給水には、1. 直圧式、2. 増圧式(増圧猶予)、3. 直結・増圧式併用の3方式があり、事前協議においてその建物に可能な給水方式を選択する。



1 直圧式
配水本管から分岐された配管に直接接続する方式で3階までの建物に適用される。当団地の場合21棟117戸にこの方式が適用された。
2 増圧式(増圧猶予)
配水本管の口径75mm以上から取水する場合で、配水本管の水圧が3.5kg/平方cm以上であれば、5階建物であっても現時点で増圧ポンプの設置を猶予される。猶予期間は横浜市全市の配水水圧の調整(減圧)を行う予定の2010年まで、猶予されたとしても2010年には増圧ポンプの設置が義務付けられる。当団地も増圧ポンプ設置の猶予を希望したが、団地周辺の水圧調査を実施(水道局で調査)した結果、必要水圧3.5kg/平方cmに対し2.9kg/平方cmであり猶予されなかった。
3 直結・増圧併用
今回当団地で採用した方式はこの方式である。


Koji15_1



上図1階~3階は直結給水方式とし、1階~5階へは増圧ポンプを設置し給水した。5階建棟は5棟あり増圧ポンプを3台設置した。
5階棟-1棟(25戸)
5階+1部3階-4棟(26戸×4=104戸)



Koji15_2 設置した直結増圧給水ポンプ



〔横浜市水道局の設置基準〕



*「設置基準」は水道局によって違いがあり、各水道局の配水計画の事情によって独自の「設置基準」を定めている。当該水道局の「設置基準」を満たしたものとしなければならないので、事前協議において確認することが必要である。

直結増圧給水の場合



  • 給水量の計算は、BL(ベターリビング)規格による。
    1住戸4人、1人1日250リットル


  • 1日最大使用量は1引込み50立方m以下とする。


  • 増圧ポンプへの引込口径は50mm以下で、1引込み50戸以下。


  • 1建物で50戸を超える場合は、1建物2給水系統まで可。


  • 10階程度の建物を対象に市全域で実施。


  • 需要者の負担で増圧ポンプを設置。


  • 2010年に全市配水水圧の調整を行う予定。


直結給水の場合



  • *引込管50mmの場合上限18戸。


  • *引込管75mmの場合上限30戸。


最終給水開始3ケ月後の報告



  1. 「水の出が以前に比べて良くなった」という居住者の感想が多くあった。
    以前の加圧給水の場合の給水圧力は4kg/平方cmの設定であったが、直結後の水圧は昼間では5kg/平方cmまで上昇していたので、そう感じたようである。
    水圧上昇の影響で、既存の古い水栓で止水しきれないための水の滴り、トイレのロータンクからの水が完全に止まらない(パッキンの不良による)などが起き、水道料金が平月に比べ多いとの報告が2~3件あった。この場合水道局では、不具合部分を修理した業者の証明があれば、平月に比較して跳ね上がった料金分は返金するということであった。


  2. 「増圧給水ユニット」の稼働が極端に少ない。
    昼間は本管の圧力で十分給水されていた。給水ユニットが稼働するのは、朝と夕刻のごく短時間のみ稼働するようである。このことは3の電気料金から見ても明白であった。


  3. 「電気料金」は以前の17%であった。
    加圧給水時の13年1~3月の合計が120,000円であったのに対し、直結増圧給水後の14年1~3月の合計は21,114円であった。この内、直結増圧給水後のランニングコスト(実際にポンプが稼働した電気料金)は3ケ月で約1,836円であり、大半が基本料金の19,278円(基本料金2,142円×3台×3ケ月)であった。
    また、給水ユニットのモーターはインバーター制御で、要求給水量に応じた回転数で運転されているので省エネ効果を発揮している。
     ※増圧給水ユニットは3台あり、1ユニットのポンプ容量は1.5KW、契約2KW


  4. 「維持・メンテ費用」の低減
    受水槽を無くしたことによる、水槽の改修費、水質検査費、およびポンプのメンテナンス費用などが大幅に低減された。ただし、新規に設置した給水ユニットのメンテナンス費用と、修理部品代の積み立ては必要であるが、後者の方がはるかに少ない費用で済んでいる。


  5. 「旧給水棟の有効利用」
    給水棟ポンプ類の機器撤去後に、9m×11m・階高4mの空間が出来たことと、ポンプ室上部の受水槽2槽部分にも横からの出入り口を開口し、2槽間を連通開口し1槽とし、水槽であった所も徹底的に利用しようと管理組合では夢を描き、アイデアを出し合っている。


Koji16_1 役目を終えた給水棟



【設置基準】の追記



前項で直結増圧給水の設置基準について「横浜市水道局」の場合を例に述べたが「設置基準」は水道局によって違いがあり、各水道局の配水計画の事情によって独自の「設置基準」を定めている。当該水道局の「設置基準」を満たしたものとしなければならないので、事前協議において確認することが必要である。



(文責・今井建築設備設計事務所 今井哲男)



発注者から見た経過報告



~金沢並木二丁目第九住宅管理組合 長期修繕運営委員会 岡本 喆二様~



 本コメントは、同様の改修を検討している管理組合の皆様の参考になればと考え発注者サイドとしての経緯・経過を中心に寄稿しました。



工事設計と監理



  • 管理組合の立場と考えを充分に理解し、住民サイドの設計監理ができる専門家探し


  • 設計・監理者との出会いは、日住協主催の研修会から


優秀な工事業者の選定



  • アメニティ紙上での工事業者の公募掲載が役立つ


  • 数多くの応募があり、数回に渡りプロポーザルを行う


  • 経費、工事内容も組合の納得のいく工事が遂行される


専有部室内立入工事の住民協力



  • 住民の工事参加意識(水栓・部品の実費交換がご婦人に注目され、楽しみながらの工事協力が得られた)


  • 工事説明会に9割以上のご家族が出席(会場での蛇口展示で、数多く夫婦同伴出席も)


  • 工事事務所に関連商品・部品の展示コーナーを併設(工事内容の理解に貢献)


給水関係管理からの解放



  • 日常の水質管理からの解放


  • 新設の増圧ポンプ電気代も17%に激減


給水設備棟の後利用についてのアイデア募集



  • 大きな独立施設のため、上階の水槽部も含めて組合書類保管、防災備蓄、自治会倉庫リフォーム工事期間の家財保管など、夢のある将来の利用方法のアイデア募集中


〔工事関連のお問い合わせ先〕
並木2-9管理組合(9:00~16:00 月・水・金)
横浜市金沢区並木2-9 TEL045-785-2518



<アメニティ新聞234号~236号 2002年3月~5月掲載>




大団地における増圧直結給水方式のリニューアル

2000-08-10 09:00:00 | 直接給水

横須賀馬堀台住宅
(神奈川県・横須賀市)



この工事は従来の給水システムを水道本管から直接各戸に給水する「増圧直結給水方式」に、システムの変更を行った。



従来方式は敷地内に立つ、高さ34メートルの給水塔から22棟の各戸へ給水されていた。給水塔の地下には受水槽が埋設にて設置され、ここに一旦、水道水が蓄えられ、揚水ポンプで給水塔上部に設置された高架水槽に貯水し、ここから重力方式で各戸に送水される仕組みが取られていた。



この増圧直接給水方式を行う事により、水道本管からの直接給水による水質の安全性向上、受水槽・高架水槽の清掃やポンプの点検補修費・オーバーホールなどのメンテナンス費用が掛からなくなる等、数々のメリットが生まれた。



団地敷地に高低差があるため低い方に位置する住棟は水道本管よりの直結給水方式で



高台に位置する住棟は増圧ポンプを新設して増圧給水方式とした。



今回の工事で第一に問題になった事は、500戸を超える集合住宅での増圧直結給水工事は、ほとんど例がないため、市水道局と協議を重ねた結果、団地敷地内に高低差があることから低い方に位置する9棟については、水道本管よりの直結給水方式に切り替え、高台に位置する13棟については6台の増圧ポンプを棟の妻側に新設、増圧直結給水方式とすることで、工事着工する事が出来た。



工事にあたっては既設の埋設給水管は埋め捨てにし、住宅内引き込み制水弁以降の共用給水管は新たにステンレス鋼管で埋設配管し、棟の廻りは同じくステンレス鋼管でベランダ下及び床下への配管作業を行った。共用部の堅管や量水器廻りの給水管もステンレス鋼管での配管替えを行った。専有部の給水管においては、建設省技術評価工法であるNPCパイプライニング工法による更生工事を行った。更生工事を行う事により、このままでは今後予想された漏水についても同時に予防を行うことが出来た。



施工実施の作業工程を作成するに当たり、留意した点は専有部更生工事の入室日程に合わせて、ガスの新管への切替工事を行った点である。



ガス管の切替工事の場合、東京ガスの規定による着火テストを行った室のみ閉栓を行うため、専有部更生工事の2日間在宅以外にもう一回ガス管の切替による在室が必要となり、これを避けるため、同日の施工を計画した。



幸いにして専有部更生工事及びガス切替工事は、順調に進み一戸の不在もなく工事が出来、510戸全ての専有部工事が無事行われた。



これは管理組合をはじめ、コンサルタント、居住者、施工者が一体となりこの工事に取り組んだ結果だと思います。



[工事概要]



現場名称



横須賀馬堀台住宅給水設備及びガス管改修工事



所在地



神奈川県横須賀市桜が丘2-20



建物概要



RC4~5階建て
22棟+管理集会所住戸 全510戸
昭和52年神奈川県住宅供給公社分譲



工事範囲



  1. 給水引込管工事


  2. 共用部埋設及び床下給水管更新工事


  3. 増圧ポンプ新設工事


  4. 共用部堅管及び量水器廻り給水管更新工事


  5. 専有部給水管更生工事


  6. 集会所給水管更新工事


  7. 給水塔解体工事


  8. ガス埋設管更新工事


工期



平成12年2月7日~平成12年6月30日



<アメニティ新聞215号 2000年8月掲載記事>