隅田川沿いに建つ尾竹橋公園スカイハイツは築後23年、第一回目大規模修繕工事からは13年を経過した本年1月に第2回目の大規模修繕工事を行った。11階建て182戸は周辺地域の中では最大規模のマンションである。管理組合・自治会活動が活発で、祭礼などで近隣との交流もあり地域にとけ込んでいる。市街地の単棟型高層マンションにもかかわらず、敷地に余裕があり、緑も多く落ち着いた環境を生み出している。
管理組合の重要な仕事の一つがマンションの維持保全であり、その最も重要な大規模修繕工事に、多くの心血を注いだ数少ない例と言える。準備期間を含めて工事完了まで3年間、この間に開かれた専門委員会は66回を数え、居住者に広報した「大規模改修だより」は30号までになった。これらは、管理組合全員が一丸となって大規模修繕工事を進めて行こうとする強い意志の現れであり、工事の成功を導いた元となったと思われる。
【専門委員会の発足から設計事務所選定まで】
管理組合では平成13年7月に専門委員会を設けて準備作業を始め、以来本年6月の工事完了まで3年間をかけてきた。当初より綿密なマスタープランを作成し、順次段階を踏みながら慎重に進めてきた。平成14年8月までの1年間は、過去の調査診断や工事の資料を整理して建物の現状を把握すると共に、他のマンションの改修事例を参考に工事の内容・方法・費用等を検討していった。その結果、設計監理方式を採用する事となり、調査診断会社の募集を行った。
事前に業務内容の詳細を決め、関係する資料を整理して、組合内より推薦のあった調査診断会社へ見積を依頼した。組合が各社へ提供した修繕経歴などの参考資料は、出来るだけ利用できるものは活用し、費用抑制効果を期待したものであった。委員会では見積書提出の3社と面接を行い、過去の資料を最も生かして費用を抑えた(有)柴田建築設計事務所が選定された。
【調査診断から施工者選定まで】
平成15年4月の定期総会で調査診断会社が承認され、5月より調査診断業務を開始した。内容はアンケートから始まる通常の建築関係調査以外に、給排水・TV共聴設備・外灯照度測定等について行われ、8月に報告書が提出され、居住者に広報された。同時に修繕項目・内容についても検討を進め、仕様書・改修図・予算書などを作成する修繕設計を行った。
組合では9月に臨時総会を開き、大規模修繕の内容(工事項目・仕様・予算・時期など)について議決した。工事施工者は公募により応募した21社の中から、書類選考により選ばれた7社に見積を依頼した。提出された見積内容を比較検討して2社を選定、ヒアリングを行った上で最終1社に絞り込んだ。12月中旬に再度臨時総会を開催して、工事施工者と決まった大木リフォーム(株)と工事予算を決議した。翌年1月下旬に工事説明会を行い着工の運びとなった。
【工事内容の特長】
工事の内容としては、外壁等の躯体補修・塗装、ベランダ床防水、外回りシーリング取替、鉄部塗装等の一般的に行われる修繕工事に加えて、いくつかの改良工事を行った。これらの改良工事には居住者にとって切実なものもあったが、近隣で始まった新築マンションにも対抗できるグレードアップにより、自分たちのマンションが蘇る喜びをもたらした。
エレベーター更新
2台設置されているエレベーターは故障がちであった。内装リニューアルから準撤去工法など色々検討を重ねた結果、費用対効果を考え全面撤去工法により一新する事とした。全面的更新により基本性能・デザインなど全てが最新型に向上し、身障者・防犯対策なども十分に行う事が出来た。
エントランスのグレードアップ
エントランス廻りのホール・ロビー・エレベーターホールは比較的暗く、デザイン・仕上材料的にも古くさいイメージであった。床・壁・天井の仕上げをより高級感のある材料を使用して、現代的にデザインし直した。同時に天井を高くし、照明器具も全て取替え、段差部分のスロープも広げ、手摺を新設した。入口のアルミ製玄関ドアーはステンレス製の自動ドアーに取り替えると共に位置を外側にずらすことにより、ホールが広くなった。メールボックスのあるロビーは外壁の窓を大きく広げて見通しの良い広々とした空間とし、居住者に便利な宅配ボックスを新設した。
開放廊下の改良
開放廊下の天井に付く照明器具が少なく、夜間は暗いイメージであった。照明器具を全て取替えると共に倍近くに増やし、鉄製に塗装の屋内消火栓箱等は配管と共に全てステンレス製に取替える事とした。鉄骨階段には専用の床シートを貼り、騒音防止と美装性が向上している。
防犯カメラシステムの導入
玄関・エレベーターホールに設置してあった数台の防犯カメラを全て取替えると共に、外部やエレベーター内にも設置して大幅に増設した。ホール・エレベーター内各所にモニターを設置して防犯効果を向上し、最新の録画装置で充実を図った。
外構の全面的改修
補車道のアスファルト舗装は全面的にオーバーレイし、アプローチの床タイルは全て貼替えることとした。比較的暗かった外灯は全て明るいものに取替え、再配置すると共に増設した。補車道境界の無粋なガードパイプを撤去し、プラントボックスを並べて区画するスタイルに変えた。植裁についても専門委員会で検討し、低木・地被類を中心に植替え・増植した結果、見違えるほど建物をひきたたせる事が出来た。その他自転車ラック・ステンレス製車止メ・カーブミラーの新設などの利便性や安全性に関わる設備が充実された。
<アメニティ新聞263号 2004年8月掲載>