Q
管理費等を滞納している区分所有者(居住者)の代理人弁護士から、自己破産予定である旨の通知が届きました。債権届を出すことを求められています。今後、どのような流れで滞納費を回収していくのか教えてください。
A
まず、この時点では、滞納居住者に弁護士の代理人が就いたことの通知がなされたにすぎず、まだ裁判所へ自己破産申立はなされていません。代理人弁護士は、滞納居住者に対する他の債権者にも通知を送り、債権届の提出を求めて債務の状況を調査して、自己破産申立の準備を進めます。管理組合としては、まずは代理人弁護士の求めに応じて、債権届を代理人弁護士宛に提出してください。
自己破産の申立がなされる前に、居室の任意売却がなされる場合があります。その任意売却の際に、滞納管理費等が精算されることが普通です。任意売却後に発生する管理費等は、当然新所有者へ請求していくことになります。
では、任意売却されずに自己破産の申立がなされた場合はどうなるでしょうか。しばらくして、裁判所から管理組合へ書面が届きます。この書面には2パターンありまして、ひとつは、破産手続が開始されると同時に、破産手続が終了(廃止)したとの通知です(「同時廃止」と呼ばれています)。これは、破産者に配当できるだけの資産がない場合の処理です。居室は破産者が所有したままになります。多くの場合で滞納居住者の債務は免責され、管理組合は、破産開始決定前日までの滞納管理費等を滞納居住者へ請求できなくなります(破産開始決定日以後は請求可能です)。この場合は、ほぼ例外なく居室に抵当権が付いていますから、抵当権者が居室の競売を申し立てるのを待って、新所有者へ滞納分を請求するか、場合によっては、区分所有法59条に基づいて、管理組合自ら競売を申し立てることも考えられます。
もうひとつパターンは、破産管財人が裁判所から選任されて破産手続が開始されたとの通知です。破産手続の中で、破産管財人が破産者の一定の財産を管理処分していきます。この場合、管理組合は、破産開始決定前日までの滞納管理費等を債権として、裁判所へ届け出てください(ひな形が裁判所からの通知と同送されてきます)。しかし、この債権は、先取特権といって、居室を担保として一般の債権よりも優先的に弁済を受けられる権利を居室の新所有者にも主張できるため、通常、配当手続に参加することはできません。他方、破産開始決定日以後の滞納管理費等は、破産管財人が管理する金銭預貯金に比較的余裕がある場合は、適宜破産管財人が支払ってくれるときもあります。
では、破産管財人が選任されたケースで、どのように滞納管理費等を回収するかですが、やはり居室が売却される際に、精算がなされます。破産管財人は、破産者の財産を換価して、債権者へ配当をすることを任務としています。ですので、居室をなるべく任意売却しようと努力します。しかし、居室の買主が見つからない場合もあります。その場合、破産管財人は、居室の所有権を放棄して、居室は破産者の財産に戻ります。この場合は、上記の「同時廃止」の場合と同様に、精算をすることになります。競売となった場合に、配当要求をして、競落代金から回収できることもありますが、希なケースです。
回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・内藤 太郎
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年12月号掲載)
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