大規模修繕工事を計画するにあたっては、将来の建替えについてどう考えるかという視点も重要なものとなります。今月はその観点でよい参考となる、府中日鋼団地の大規模修繕工事をご紹介します。
府中日鋼団地管理組合(昭和41年都市公団分譲、RC造4~5階建、総戸数702戸)は、平成14年9月~平成15年5月までの工期で第3回の大規模修繕工事を実施した。
当初の予定では7月末完工としていたが、夏は各住戸のクーラー使用時期とかさなるなどの理由で工期を短縮した。
工事の主な内容と範囲
主な工事範囲としては外壁等建物工事、給・排水関連等設備工事、外構土木工事。
建物工事の主な内容は、
- 外壁等の改修・塗装工事(一般外壁=日ペ・オーデリウォールシステムSi工法)
- バルコニー床防水(ウレタン塗膜防水ノンスリップ工法)
- バルコニー手摺り鉄部塗装(鉄部の地肌まで2種ケレンを施して塗装)
など。
外壁の塗装色については、既存色に準じて大規模修繕工事実行委員会が3種類のパターンを作って、その中から決め、団地内に掲示した。
既存塗膜の劣化調査は、平成13年に前回工事で採用した塗料メーカーによる引張り試験等を実施。屋根防水については、平成2年の第2回大規模修繕工事で実施し、15年保証の期間中(5年毎にトップコート施工)であるため除外した。
階段室床防水についても、平成10年にウレタン性の遮音・防滑性シート防水を実施済みのため除外。
バルコニー手摺り鉄部については、アルミ製手摺り等に交換することも検討したが、将来の建て替えを考慮し総合的に判断して鉄部の再塗装にとどめた。給水関連については、加圧給水方式に切り替え、給水塔回りの給水施設整備を。排水管連については、3DKボックス棟のバルコニーを貫通している既存の雨水排水竪管を撤去して、バルコニーの外に新規敷設し、バルコニーを広く使えるようにした、など。
外構土木については、集会所周りのバリアフリーの対策、歩きやすくするため既存のタイル路面を撤去してゴムチップ製のもので舗装、小休止ができるように歩道に陶器製のスツールを設置、など。
施工会社の選考については、見積り合わせ方式を採用し、建物の工事については応募16社の中から6社に見積りを依頼し、その内3社とヒアリングを実施して決定した。選考に当たっては、会社内容や施工実績等を重視し、金額だけで選ぶようなことは避けた。ヒアリングの結果、第2回目の施工会社で、団地の様子をよく分かっているユアサ商事(株)と決定した。
実行委員会を組織して工事を推進
同団地の大規模修繕の経緯は、昭和53年に第1回目工事、平成2年に第2回目工事、今回は第3回目となる。
昭和63年頃から中長期の修繕・整備について検討を進め、これらを中心に「中長期修繕・再整備計画書」を作成してその都度見直しを行い、今回工事は10年に見直し修正した内容を前提に実施した。
工事の実行にあたっては、14年3月の定期総会にて決議して、同5月に「大規模修繕工事実行委員会(委員15名。一級建築士などの専門家、主婦など一般組合員、管理組合理事などにより構成)」を組織し、技術部会・生活部会・確認部会(建物の事前状況や工事の確認を主務とする部会)の3部会により分担して推進した。4ブロックに分けての住民説明会、大規模修繕ニュースの発行、事前居住者調査など、調査や広報活動にも注力した。
「建替え」と「修繕」は車の両輪という考え方で工事を実施
同団地の建替え構想としては、平成8年に「将来構想に関する特別委員会」から平成23年(築後45年)を目処とする考え方を理事会に答申し、建替え勉強会がスタートした。同12年に「建替え問題特別委員会(メンバー16名)」に組織替えし、始動した。同13年度定期総会では「建替え問題を本格的に取り組む」決議が採択され、定期総会が始動。同14年10月に建替えを専門的に論議する場として「建替えサロン棟」をリースで設置。2~3年後には「建替え推進決議」を行って、23年の建替えの実現に取り組んでいる。
今回工事では、住民から「建替えするのに何故工事が必要か」などの質問が寄せられたりもしたが、「建替えと修繕とは車の両輪で、双方完璧に推進することが重要であり、その為の予算措置は欠かしてはならない」との考え方を同組合ではとっており、建替えを視野に入れている団地へのメッセージとしたい、とのことだった。
<アメニティ新聞253号 2003年10月掲載>