このマンションは、北軽井沢(群馬県)の自然環境豊かなリゾート地内に立地し、約10年を経過している。寒冷地特有の躯体劣化や不具合現象が目立ち、建物診断を踏まえ根本的な改修を進めることになった。
敷地周辺には別荘の点在ばかりではなく長野原町の水源取水口や排水が流れ込む河川があり、工事にあたっては外壁塗材剥離など洗浄後の排水にはデリケートな対応が必要であった。
特徴的な改修
年間のうち約半年は寒冷で、春先でもマイナス気温を記録し、夏場でも気温は低く湿度も高い。降雨量も比較的多い立地条件でありながら、寒冷期を中心にした造られ方をしており、雨水は垂れ流し状態であった。雨水排水対策を講じていないこともあって外壁に常時雨水が垂れ落ち、ひび割れ部に雨水が浸透して凍結融解を繰り返し躯体の劣化や塗材の剥げ落ちが目立っていた。
したがって、このマンションの根本的な改修は、雪解けシーズンから温暖期の雨水処理対策とひび割れなど止水効果の高い躯体改修が必要になった。
雨水竪樋の新設
この建物の各階バルコニー排水は先端に設けられた落し口から直接落下していた。下階ほど水量は多くなり躯体部の劣化も烈しい。これを解決するためには、温暖期の雨水対策として竪樋の新設が要求された。また、管内の雨水凍結による新設される竪樋の破裂が考えられ、材質を鉄管とし、最下階の管内に電熱ヒーターを挿入した。実際の工事においては、当然ながら降雨日が断続的に有り、他の工事に先立って竪樋の設置を先行して進めた。降雨の影響は、竪樋による排水処理がなければ外壁塗装など実質的に施工不能であったと考えられる。
バルコニー手摺支柱の根元アンカー部躯体破損処理
この建物ばかりではないが、通常アルミ製の手摺が多い。パイプ内部は空洞でビス穴などから雨水が浸入し、支柱根元躯体内部に供給され続ける。そのため凍結すれば膨張し、躯体の破損へと繋がっている。基部への雨水等の供給を断ち切らなければ、ひび割れ部の注入や断面修復だけではこの現象を解決できないため、当社とメーカーで共同開発した特殊スペックで支柱のパイプ基部の雨水遮断処理を併せて行った。
剥離洗浄水等の廃水処理
洗浄廃水は、強アルカリを示し、集めて見ると旧塗材などが混入した相当な混濁状況を呈していた。水質の極度な変化により、河川等に直接流入すれば水棲動物への影響は計り知れない。そのためこの現場では、設計当初から廃水処理システムの導入を考えていた。
水処理専門家の協力の下に、廃水の凝縮浄化プラントを設置し、浄化後の水は中水として洗浄等に再利用し、極力放流しないこととした。処理水は放流しても問題ない状態まで水質の改善を行ったが、放流にあたっては、放流水の生物化学的な安定化を図るため、人工池(ビオトープ)を設け少しずつオーバーフローさせることとした。
施工 佐藤工業・建設塗装興業建設共同企業体
<アメニティ新聞230号 2001年11月掲載>