最初の事業協力者は公団当初の事業協力者は分譲者でもあった住宅公団で、80m2台のプランを提示し、最新の高級団地をバスで案内した。すぐにでも最新住戸が無償で入手できると期待した人も少なくなかった。
しかし、2ヶ月もしない内に、組合員間で意見対立が生じた。144戸の地権者が均等に土地を所有しているが、専有面積は3Kと3DKで異なっている(分譲価格にも差有)。
公団の提案は土地を原資とした等価交換で、建て替え後の取得住戸面積は均等であった。
3DK所有者は3K所有者よりも広い新住戸を得て当然との意見と、あくまでも均等という意見。更に建物登記面積にもミス(矛盾?)に気づき、"公団瑕疵論"も聞かれた。
この問題が落ち着くまでは数年を要したが、建て替えの原資については62年の内に組合員が共通の認識を持つことができた。この共通認識が問題の複雑化を防いだといえよう。紙面都合もあり詳細は後日改めて説明したい。
一時建て替えへの関心が低下していたが、平成5年に再び活発化すると、一旦撤退していた公団も戻ってきた。公団は市へ事前協議に出向き、都市計画変更の成果を持ち帰った。周囲は容積率が200%であるにもかかわらず団地及び隣接地には容積率70%等の網(都市計画法の一団地)がかかっていた。この網を改める変更である。だが、諸状況により公団は再び撤退した。
あらためて事業協力者を募集
改めて事業協力者を募集した(部分譲渡を条件)のは12年。数社から絞られた2社がプレゼンテーションし、アンケートを経て旭化成工業(現旭化成ホームズ)が選ばれた。呈示還元面積は75m2。 再び容積率200%化等のため、市と協議を開始した。市との折衝にはコンサルとして公団に期待したが、数度旭化成に同行した後に辞退したため、旭化成に業務を委託した。
白紙からの協議
前回の事前協議から年が経っていることもあり、白紙の状態からの協議であり、交渉長期化が予想された。打開を求め、組合員の90%を超す署名を添えた要望書を市に提出したのは14年の春である。
協議のクライマックスは15年であった。組合員数名と旭化成が、市と具体的な内容を話し合った。当初は建物の高さ制限等の話も出たが、晩秋には管理組合の希望に近い内容に落ち着いた。翌16年秋には、内容が条例化された。
国領住宅は、一団地を廃止し容積等の制約を外した日本第一号であるといわれている。 今年1月の総会で還元面積変更を承認(75m2→66m2)、4月の市開発調整金の免除決定を経て、決議を迎えることができた。
川崎 幸男
東京都調布市国領町8-4-1
事業面積
約13,300m2
用途地域等
第1種中高層住居専用地域、準防火地域
第2種高度地区 容積200% 建蔽 70%
建物規模
地下1階地上14階 他6棟
延べ床面積 約32,600m2
容積/建蔽
199.95%/ 42.6670%
住戸数等
320戸(駐車場191台)
還元面積
平均66m2
<アメニティ新聞277号 2005年10月掲載>