Q
築38年目になり、住戸のアルミサッシや玄関扉を取替えたいのですが、修繕積立金が足りません。しかし、居住者の中には結露や気密性の悪さ等から早急に取替えたいという希望が出て来ています。このため、管理規約を改正し、区分所有者が自らの責任と負担で共用部であるアルミサッシや玄関扉を取替えられるようにしたいと理事会で考えています。
当該規約改正と実際に区分所有者がこれらを取替えるに当たってどのような事を注意しなければならないのでしょうか?
A
住戸のアルミサッシや玄関扉は、経年と共にパーツの劣化や建具本体の変形等による不具合が発生し、経年30年以降には性能が著しく低下してきます。また、建設当初の性能が、最近のアルミサッシや玄関扉の性能に比べグレードが低い事もあり、新しいマンションに比べると性能の差が目立ちます。
しかし、これらの取替えには、玄関扉が20万円/戸前後でアルミサッシは設置されているアルミサッシの数により差はありますが100万円/戸前後の費用が掛かります。この費用を賄う修繕積立金が積み立てられている管理組合はごく少数です。よって、管理規約に区分所有者が共用部であるアルミサッシや玄関扉を取替えられるように規定し、区分所有者の自己負担で取替えてもらわざるをえない事態に至っている管理組合が多くなっています。
標準管理規約の(窓ガラス等の改良)第22条第2~3項相当を規約にもりこむ事になりますが、のちのち管理組合で一斉にアルミサッシや玄関扉を取替える事になった場合を想定し、先行し自費で行った住戸に対する対応基準を決めておく事が必要です。
また、自費で取替えるサッシや玄関扉の仕様基準を決め、その基準に則して取替えを許可する事が必要です。
アルミサッシの仕様基準は、アルミサッシの性能(遮音性能・気密性能・水密性能・耐風圧性能・防火性能)やアルミサッシの枠の色、ガラスの種類(透明かくもりか、ガラスの色、網入の要否、ガラスの厚みや断熱・遮熱性能)、取替え工法の種類(カバー工法・持ち出し工法)など建物の高さや立地条件により守らなければならない基準や外観の統一性を維持するための基準です。
また、玄関扉についても玄関扉の性能(遮音性能・耐震性能・防犯性能・防火性能)、扉の外観(色や形状、取手の種類)、取替え工法の種類(カバー工法・持ち出し工法)など法定基準や外観の統一基準が必要ですが、玄関扉の外観デザインはメーカーや取替える時期により変わってしまい、統一性を確保する事は困難です。のちのち管理組合で一斉に取替える事があった場合には、先行して自費で取替えた玄関扉も合わせて取替える事が望まれます。特に玄関扉は地震の際に変形し、扉が開かず閉じ込められる危険性があるので、閉じ込め防止機能(対震機能)のついた扉に早急に取替えることが必要です。
回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2018年10月号掲載)