概要
2003年6月に着工した第二回大規模修繕工事は今年5月に完了した。第一回大規模修繕工事は、痛んだ部分をなおす一般修繕工事が主だったが、今回はバリアフリー改修、グレードアップ改修が追加された。管理組合では団地を100年持たせたいとの意向があり、今後も団地を良好な状態で長持ちさせるためには、建物の構造体を補修することだけではなく、若い世代の居住者が増加し世代交代をしていくことが必要であると考えていた。それによりに将来の世代構成を意識した改修設計内容となった。
バリアフリー改修
住棟6棟のうち4棟は、エレベータ-が各階に停止しない。居住者は毎日エレベーターと階段を利用した生活をしている。その全ての階段に上り下りを補助するための手摺を設置した。その他、各階エレベ-タ-ホ-ル、エントランスホールなどに点在していた小さな床段差を、できる限りフラットまたはスロープに改修し、急勾配の1階の階段は踏段を追加して緩勾配の階段にした。この改修により高齢化してきている居住者および小さな子供も安心して住み続けられるようになった。
グレードアップ改修
利用頻度の高いエントランスホールと住戸玄関廻りを主に改修をおこなった。エントランス廻りの改修は隣接するピロティの一部を郵便受け室に造り替えて、室内の仕上げ、郵便受けなど全て新しくした。エントランス庇は鉄骨のままだったがアルミ板で化粧をした。また各戸玄関廻りはメーターボックス扉等をアルミ製に取替え、メーターボックス上部は居住者が積極的に活用出来るように飾り棚に造り替えた。改修後は居住者が思い思いの飾り付けをして、廊下、階段が明るく楽しい空間になった。その他、共用廊下の床を化粧シ-トで仕上げ、エントランスホ-ルから住戸玄関までの共用部分を総合的にデザインしたので、グレードの高いマンションの雰囲気が感じられるようになった。
しかし、共用部分の工事は居住者の生活通路を確保しながら行われるために、居住者、施工者ともに苦労が多かった。
色彩計画
当団地の外壁はタイル貼り部分が多い。そのタイル部分の色は替えられないが、その他の塗装部分の色彩を替えることで、新しい外観にすることができる。それはコストがかからないグレ-ドアップ工事である。既存のままの色にするか?新しい色にするか?それぞれの計画案を作り居住者アンケ-トを実施した。その結果新しい色彩案に決定し、明るい軽快なイメ-ジの団地に生まれ変わった。
(株)汎建築研究所・設計室主任 斉藤武雄
■団地概要
- 所在地:神奈川県横浜市南区永田みなみ台1-4
- 構造/階数:鉄骨鉄筋コンクリ-ト造 10~14階建 6棟
- 総戸数:1035戸
- 入居/経年:1974年/30年
■主な改修内容
- 躯体改修:コンクリ-トひび割れ、欠け、錆鉄筋等の補修
- タイル改修:タイルのひび割れ、浮き、剥落等の補修
- 防水改修:バルコニ-、廊下、階段床の防水
- 金物改修:物干金物、階段ノンスリップの取替
- 塗装改修:外壁、内壁、鉄部の塗り替え
- バリアフリ-改修
- 階段補助手摺の新設
- 各階EVホ-ルの床段差改修
- 床段差のあるエキスパンションジョイント取替
- 1階の階段勾配改修
- エントランスホ-ル入口の床段差改修
- グレ-ドアップ改修
- エントランスホ-ルの内装改修
(郵便受け室の新設、ホ-ル壁・床・天井貼替え) - エントランス庇の化粧幕板新設
- 住戸玄関廻り改修
(飾り棚タイル貼り、メ-タ-ボックス扉および面格子をアルミ製に取替、インタ-フォンパネル新設) - 色彩デザイン改修
(外壁、住戸玄関扉) - 歩道橋入口に庇新設
- 各種サインの取替
- 照明器具の取替
- エントランスホ-ルの内装改修
<アメニティ新聞260号 2004年5月掲載>