金沢シーサイドタウン並木2丁目第9住宅
(神奈川県・横浜市)
平成16年11月6日大規模修繕工事施工中の同住宅において、マンション・ユニオン保全設計協同組合主催、NPO日住協神奈川後援による工事見学会があった。同住宅の建物は種類が多く、専門的な工事内容なので設計・監理者にご執筆いただいた。
建物概要
並木2丁目第9住宅は、京浜急行線富岡駅から海に向かって約15分の埋め立て地に立地する、経年22年の旧住都公団分譲の26棟246戸の建物である。建物は、5階建(階段室型)・陸屋根、3階建(連棟型)・陸屋根及び傾斜屋根、3階建メゾネット・傾斜屋根、2階建タウンハウス・傾斜屋根、2階建タウンハウステラス付・傾斜屋根(2階に中庭)、の5種類に分類される。
管理組合の取り組み
第1回目の大規模修繕工事は、建物竣工後10年を経過した平成4年に、旧住都公団の瑕疵補修工事と同時に実施。平成7年に長期修繕計画の見直しに伴い、修繕積立金の値上げを決定。平成11年に修繕積立金を棟別会計に変更。平成12年に、直結給水システムに変更を行った。
これらの実施は、管理組合の下部組織として設立された長期修繕運営委員会が検討し、理事会で承認されて実行された。今回の第2回目の大規模修繕工事の修繕設計・工事監理は、第1回目の大規模修繕工事のコンサルタントを担当した、八生設計事務所に依頼した。
平成15年6月には修繕設計のための建物調査を行い、傾斜屋根については、3階建の一部が漏水したために、一部葺替とともに2・3階住棟の屋根材を撤去しての劣化状況や不具合の有無についての調査を実施。平成16年3月には、住棟タイプにより戸当りの工事費が異なり、修繕積立金も住棟により異なることから、修繕内容・概算工事費等について住棟タイプ別の住民説明会を実施し、意見・要望の集約を行い、工事範囲・工事内容の最終決定を行った。
平成16年7月に臨時総会を行い、工期・工事内容・工事費・施工会社の承認を求め、9月から工事をスタートさせた。
修繕工事の特長等
- 外壁等の躯体改修・止水工事は実費精算工事とし、見積(設計)数量と実際の施工数量により工事費の増減を行ったが、全棟で、見積数量と比較し施工数量が少なかった。第1回目の大規模修繕工事の際に充分に躯体改修工事を実施している場合は、第2回目は比較的施工数量は少なくなる傾向が見られる。尚、鉄筋発錆が多い部位は、5階建及び3階建・階段上裏であった。
- 外壁塗装は、付着力強度試験結果は114箇所実施し、全て重ね塗りを行う場合の必要付着基準強度以上であり、シーラ塗の上に、微弾性下地調整材・シリコーンアクリル樹脂系上塗で重ね塗りを行った。コンクリートの中性化は比較的良好であったが、上裏が外壁より進んでいたので、上裏の中性化抑止のためカオチン型ポリマーセメントモルタルを施した上に、再塗装を行った。
- バルコニー床面は、第1回目の大規模修繕工事の際にウレタン塗膜防水を施し、今回の大規模修繕工事では、巾木・排水溝は再ウレタン塗膜防水を行い、床面は既存ウレタン塗膜防水の上に防滑性ビニル床シート貼りとし、グレードアップをはかった。
- 鉄部・金物等・補修・雑工事では、竪樋・呼樋・支持金物の取替、バルコニー・外壁等に取り付けられている各種換気金物・多目的スリーブキャップ等の取替、天井灯の取替、5階建住棟の集合郵便受取替、住棟入口床段差部補修、自転車置場上屋腐食部補修、ゴミ・コンテナ置場屋根腐食部補修を行った。尚、3階建住棟は、階段部にエキスパンション・ジョイント金物があり、床面のステンレスプレートを撤去し下地材のスチール製アングルの劣化状況を点検したところ、腐食が進行していたので、ステンレス製に取替を行った。エキスパンション・ジョイント金物にステンレス製が使用されていても、下地材にスチール製が使用されている場合は、腐食状況の点検が望まれる。
- 陸屋根や傾斜屋根の防水は、第1回目の大規模修繕工事では、部分補修は行われたが、全面的な改修工事は実施していない。今回は陸屋根・傾斜屋根とも劣化が進行していることから、全面改修を実施した。陸屋根は塩ビ系シート防水、傾斜屋根は既存と同様にコロニアル葺とした。尚、傾斜屋根は修繕積立金の関係で、3階建、は全面改修、3階建メゾネット、2階建タウンハウス、2階建タウンハウス・テラス付は、数年先に全面改修を前提として部分改修工事を行った。
図:3階建の傾斜屋根葺替工事設計図面の一部
(片流れ棟廻り詳細図)
<アメニティ新聞269号 2005年2月掲載>