Q
台風15号でバルコニーの戸境に設置されているパーティション(隣戸避難板)のボードが破損した住戸が10戸程ありました。比較的高層階に多く見られましたが下層階でも確認されています。使用されているボードは補修業者に確認したところケイカル板5㎜であるとのことでした。滅多に無い強風だったのでやむを得ないと思いますが、割れたボードが飛散して手摺のガラスが割れたり、外壁や天井の塗装が傷付いたりする二次被害も発生しています。地球環境が変わりこの様な強風が今後多発する事が想定され、ボードの破損防止対策をしたいと思います。その方法を教えて下さい。
令和元年台風15号は一部の地域で最大瞬間風速が60m/sに達したとの報告があります。この風速は木造の建物の倒壊が始まる風速と言われています。最大瞬間風速が60m/sに達していなくても、30m/s以上でも多くの物が破損する可能性があります。その立地条件や建物高さなどから予想される風圧力を計算し、設計されている建造物・工作物等もありますが、長年の経験や感だけで作られている工作物や建物の付属物が多くあります。
A
隣戸避難板のボードは厳密に耐風圧強度を計算しているものはあまり無く、過去の事例から仕様を決めているものが多いものと想定されます。尚、このボードは非常の際、人力で割って隣戸へ避難するためのものです。そのため、割りやすいことも必須条件であり、風圧強度確保と相矛盾する設計条件が課せられています。
ケイカル板(=ケイ酸カルシウム板)の5㎜厚のボードは隣戸避難板に使用されている例が多いボードです。このボードは割りやすい反面風圧で破損しやすいボードです。解決策としては、隣戸避難板が中棧が設けられ上下2枚に分かれている場合は、下段をケイカル板5㎜とし、上段をセメントと繊維を主原料とし、強度と弾力性をもたせたフレキシブルボード5㎜とする事です。上段のパネルは手摺より上部にあり強風をまともに受け破損すると外部へ飛散しやすい一方、避難の際、上段から避難することはないからです。下段は手摺が屏風代わりになり若干風圧が小さくなることと、避難に使われる部位であることから割りやすいボードにする必要があるからです。
必ずしも下段が強風で割れないわけではありませんが、避難上割りやすくする本来の機能を考えるとやむを得ません。又、割れる要因には、風で飛散した物がボードに当たることも考えられますので、台風時にはバルコニー設置物はエアコン室外機や給湯器以外はすべて室内に取り込むことも重要です。
回答者:NPO日住協協力技術者
一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2019年12月号掲載)