色んな本を読んできて、ちょっと煮詰まっていた。
私たちが、あれこれ頭の中でこねくり廻している以前に、生命活動の原点に還るような記述と出会った。
筋ジストロフィー、鹿野靖明の42年間の記録。
鹿野靖明は、わずかに手を動かせる以外は何もできない。
一日24時間、すべての生命活動を他人の手に委ねるしかない。
彼を支えるのは20数名程度のボランティアと数名の介護士だ。
そして酸素吸入をしなければ生きてゆけない。
ある意味、末期の延命治療患者が、病院を抜け出しケア付き介護住宅で自立している。
余命一年とも医師に宣告された身体だ。
排泄行為などを人の手に委ねることをよしとしない「尊厳死」など、吹っ飛んでしまう壮絶な生の記録だ。
あっ、重要なことを言い忘れていた。
鹿野靖明は喋れるのだ。
気管支に管を通す人工酸素吸入患者が、自ら喋れること事体、医学の常識を逸脱している。
そして鹿野靖明は、超ワガママである。
あらゆる理不尽な要求をボランティアたちに突きつける。
ためらっては、いられないのだ。
私たちが普段、無意識に行っている「痒い」とか「喉が渇いた」とかの生理的欲求に対して、
他人の手を借りなければ、何も成さないのだから。
もちろん、それ以前に痰の吸引をしないと窒息死するし、寝返りが打てないので常時体位を変えなければ壊死する。
生命活動の極限状態にあって尚、この人は生きることに感動的なくらい貪欲だ。
527ページに亘る命のドキュメンタリィは、単に重度障害者の闘病の記録に留まらず、
その社会的背景や、これから迎える超高齢化社会の私たちの処し方まで予見的に思索の糸は網羅される。
講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞したのも肯ける。
本書の著者である渡辺一史も、鹿野靖明のボランティア要員の一人として2年半介助を続けた。
ボランティア活動とは、もちろん困っている人に対して手を差し伸べる行為であると同時に、
実は、彼らもそれ以上に大きなものを得ていることが判ってくる。
「健常者」助ける人、「障害者」助けられる人という関係性が見事に逆転しているのだ。
これは人という生物(否、地球上の生態系の)の基本的な生き方である「相互依存」に見事に合致している。
またワガママな鹿野靖明とボランティアたちとの一触即発の感情のぶつかり合いは、
他者とのコミュニケーションを否が応でも若い学生ボランティアに実体験させることになる。
ここでも最も重要視されるのは「対話」だ。
平田オリザが力説したようにコミュニケーションの基本が「対話」なのだ。
終戦記念日のTV討論を観ていて、自主防衛、憲法改正に世論が傾いていることに暗然となった。
アメリカを含めて、現在単独で自国を守れるような国は何処にも存在しない。
勇ましい武力に頼る自主防衛論は耳障りがいいかもしれない。
先の戦争もそんな他国との対話や外交努力(民間も含めて)を欠いた卓袱台返しが、
三百万人という途方もない犠牲を国民に強いたのじゃなかっただろうか?
もっと人という生物の生命活動の原点に戻って、これからの処し方を考えてみたい。
そんな一冊の本でした。
こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫 わ) | |
渡辺 一史 | |
文藝春秋 |
という感想が寄せられました。
この意見には、真向から反対します。
私の言葉足らずもありますが、
鹿野靖明氏は、もっとも野生の生命力を発揮した人です。
健常者である私たちなど、遠く足元にも及ばないくらいに。
人工呼吸器および痰の吸引は、現行法では医療従事者及び近親者しかできません。
それを彼は、すべての責任を自分が負うからと、彼を介助するボランティアや介護スタッフを、
自ら指導して、その作業に当たらせます。
そして自分を介助する人たちも自らが募集し集めているのです。
重度障害者が病院や施設を出て自立するということは、そういうことなのです。
それくらい貪欲な生存の執念が、彼を支えるボランティアたちを惹きつけて止まないのだと思います。
鹿野靖明氏の葬儀には400人を超える、彼に携わったボランティアOBたちが参列したといいます。
8/20発表、福島県の子どもの甲状腺がんが、前回より6人増えて18人に。
がんの疑いも10人増えて25人に。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013082102000122.html
昨日のニュースも今朝の新聞も、何処を探しても、そんな記事ないじゃないか?
本当に、日本の大手メディアは、官制報道しか流さないのか?
健常者のものには分からない世界観があるのでしょうね。
甲状腺がん、今朝の愛媛新聞には掲載されていました。
もう一つ、福島への韓国航空便、10月はストップとか?旅行客からいうと当然なんでしょうね。
その当然が日常化してしまうことが怖いですね。
つまり、何も無かったかのような・・・
甲状腺がんも同じです。心配していたとおりに・・・
汚染水漏れ、どうなっているのでしょう?
御免なさい。
朝日新聞も今回は社会面の片隅に小さく掲載されていました。
ざっと読んでいたため見落としてしまいした(汗)
それにしても100万に一人か二人の発症といわれる甲状腺がんが、福島では事故以前から18人もいたと県の調査委員会は強弁するつもりなのでしょうか?
どうか考えてもリアリティがありません。
そうですか。韓国便も。
韓国でも脱原発の世論が盛り上がっているようです。
ソウル市長が革新的なエネルギー政策を提唱していると聞いています。
欧米を含め多くの識者が、現在の日本の動向を危惧しています。
何度も云いますが、どんどんキナ臭い方向へ流されています。
また、それに対する歯止めが効かなくなっています。
鬼城さん、我々大人が煙たがられても、
口喧しい年寄りとして機能しなければなりません(笑)
酷暑は多少ゆるんだといって、やっぱり残暑厳しいです。
また今日から山へエスケープしてきます。
虎はパイ自身だったんですね。
「アンデスノ聖餐」とか「ゆきゆきて進軍」
のようなトンデモないお話みたいですね。
まだ、観てないですが観なければ。
誰かのコメントにあったように観終わったあとパイだけに
割り切れないかも。
ディズニー映画みたいな動物との交流を期待した観客には酷評を浴びています。
ホッホさんの好きな河合隼雄の世界ですね。
でも観てからコメントを書いてください(苦笑)
それよりも昨夜のNHKスペシャル「亡き人との再会」は凄かった。
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0823/
http://www3.nhk.or.jp/d-station/episode/special/3325/
先日書いた「季節はずれの蛍」の世界です。
紹介された2番目のエピソード「白い花」は、かなり有名な話です。
こういう話を私たちは必要としているのです。
柳田國男も「遠野物語」や「雪国の春」で、いくつも取り上げています。