森の山水
2010-06-03 | 森
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山上湖や深い森のなか緑を映す池の存在は、それだけで神秘的で想像力を掻き立てられる。
残念ながら、私がフィールドとしている石鎚山系には、そんな神秘的な湖水は存在しない。
例えば西黒森近く林道沿いの神鳴池のように地図上に、その名前を記す場所はある。
しかし、図書館でアルピニズム黎明期の文献をあたってみても
大雨の後に水を湛える程度の湿性の窪地だったという記録しか見当たらない。
そんな意味では、原生林に囲まれた天然の苔庭、笹倉(さぞう)湿原の方が
ずっと神秘的なロケーションと云えるだろう。
特に新緑が始まる5月下旬から梅雨の走りの6月上旬にかけてのこの時期が好い。
周囲の森の新緑と苔球(または毬藻)のようなウマスギゴケの柔らかい緑、
そして降雨後の適度に水を湛えた水面に緑を映す佇まい。
その上、霧が降りて来てくれれば、もう、そこは極上の山水世界だ。
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60年代までは年間1種程度だった生物種の消滅が、現在は年間4万種を越えるという。
おそらく100年から200年前の風景は、もっとゆるやかな時間をかけて変遷していったのでしょう。
でも毎年、異例続きの記録的な気象異常が続くと
今、現在見ている風景は10年後には、もう別の生態系へと変わり、まったく違った風景
になっているかもしれない?
例えば、私の住む松山市近郊の重信川河川敷の風景は、この10年で一変した。
外来種のオオキンケイギクが河川敷を一面に覆い黄金色の花園が広がっている。
その他、沢山の帰化植物が繁殖して河川敷の風景は、以前とはまったく別の風景
へと変わってしまった。
山の風景や生態系が、この先変わらないと誰が言えるでしょうか?
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この森には幹周り3mを越える巨木が数多く観られる。
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やがて倒木は菌類によって分解され土へと還ってゆく。
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この美しい山紫水明の森や山の風景を記録に残す時間は、
もう、それ程残されていないのではないかと危惧している。
雪舟や等伯の描いてきた湿潤な気候風土が育んだ和風山水を写し撮りたい。
下記に紹介する松岡正剛の(あの伝説の雑誌「遊」の編集長)「山水思想」(ちくま学芸文庫)は、
私自身の自然観に大きな影響を与えてくれた優れた風景論です。
風景写真を志す人や日本の自然景観を愛する人には是非読んでほしい。
あわせて「花鳥風月の科学」(中公文庫)もお薦めします。
![]() | 山水思想―「負」の想像力 (ちくま学芸文庫) |
松岡 正剛 | |
筑摩書房 |
![]() | 山水思想―もうひとつの日本 |
松岡 正剛 | |
五月書房 |
![]() | 花鳥風月の科学 (中公文庫) |
松岡 正剛 | |
中央公論新社 |
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