「仏滅の日々」の後、なお県議会への請願の模索を経て、岩手県知事への要望書となった。検討はやぶさかではないはずだ、というある賢い政党の示唆に依ったところもある。
岩手県知事 達増 達也 様
平成27年 3月 3日
宮古市鍬ヶ崎地区防潮堤整備事業に関する要望書
提出者 鍬ヶ崎の防潮堤を考える会
(要旨)
宮古市鍬ヶ崎地区防潮堤整備事業における安全性への疑問について調査、解明を行っていただきたい。
昨年11月4日に宮古市役所において、鍬ヶ崎地区の直立式逆T字型防潮堤の住民説明会を宮古土木センターが開催してくださいました際、看過できない以下のような二つの疑問が浮上しましたので検証の労を執っていただきたいと思います。その後もセンターとは接触を持ちましたが知事ならびに行政の幹部の直接聴取でなければ判断がむずかしいと思われる現場の「無理」や行き詰まりの問題が横たわっているのであります。
1. 基礎工事に係る地質調査について、
2. 工事に係る「プレキャスト工法」について、
の問題であります。
(理由)
1、防潮堤を支える支持地盤調査について
1)地質調査データの半分(7/15)は震災以前のデータ
鍬ヶ崎の防潮堤は大きな防潮壁(かべ)を、硬い支持地盤まで打ち込んだ鋼管杭(くい)で下から支える設計になっており横バネの有効性のためにも地下地層の3D的データの存在が基礎工事の生命線であります。(別紙図2参照)
しかし、岩手県の地質調査のボーリング15地点の半分の7地点は東日本大地震で大きな地殻変動が起こった2011年3月11日以前の、ボーリング調査のデータをそのまま使っているのです。水平方向、垂直方向に大きな地殻変動があった震災前の平成19年、21年のデータであります。時間的な震災前後の問題データと同時に、このデータは以前に鍬ヶ崎で計画されていた旧防潮堤(6.5メートル高 L字型)のためのデータであり、目的も方法も異なる調査のものです。
2)100m~200m間隔の粗すぎるボーリング調査
震災以前のデータを有効だとして100mに1カ所、敷地巾10mとして1000�(平方メートル)に1カ所のボーリング調査の信頼性には常識的に大きな疑問があります。8m~40mの一本一本長さの異なる鋼管杭の先き80cmを支持地盤に埋める工事がまず最初に始まる訳で(県の説明)、事前に支持地層の詳細な 3D的起伏地図が出来ていなければならないのに、岩手県の地質調査は粗雑すぎます。いずれにしても地質調査の追加、またはやり直しが求められています。
3)地質調査の重要性
杭の先き80cmを支持地盤に固定することによって鋼管杭の横抵抗力(横バネ)で津波を跳ね返すこの構造では、正しい地質調査でなければその効果は発揮できないものであります。短かすぎ、長過ぎる杭、またずぶずぶの柔らかな地層で宙吊りなった鋼管杭では圧倒的な力の津波に耐えきれないばかりか、たとえ1本の不具合でも、有事の際は、そこからドミノ倒し的に防潮堤の全体的崩壊に進む恐怖心がつのります。
このようなずさんな地質調査で鋼管杭が鍬ヶ崎防潮堤の基礎構造としてその力を発揮できるかどうか大きな疑問が残っております。合意形成は出来ないと思われます。
上の(別紙図面)コメント再記載 ──
図 1 標準断面図 図 2 鋼管杭概念図
岩手県は、この2年間、鍬ヶ崎防潮堤計画図について鍬ヶ崎住民、宮古市民、岩手県民に標準断面図(図1)しか示してこなかった。「逆T字」型とはこの図に由来している事だけを。鋼管杭の概念図(図2)はこちらで書いたものである。
図 3 ユニット図
(上から)
ユニット
鋼管
コンクリートブロック
底版(3穴)
鋼管杭(岩盤地盤に80cm埋設)
支持地層(岩盤等)
このユニット概念図についても県の口頭説明やメーカーの断片的図面からこちらで勝手にまとめてみたものである。まだまだ概念図とはいえないが…
この「ユニット」が鍬ヶ崎防潮堤のハード面の基本単位になる。1ユニットは鋼管2本、鋼管杭4本、底版(3穴)2個、積み上げコンクリートブロック数個などで出来ている。海に面してユニット幅6mという事で1600m計画では約266ユニット必要である。ちなみに鋼管は532本となり鋼管杭は1064本となる。
(続き)につづく