またとんでもないクライアントの担当になってしまった。
この会社、バイオテクノロジーの機材を研究開発している。
創業は2002年、創業以来まだ一度も売上を上げていない。
この業界はとにかく研究開発にお金がいる。
商品が売れる段階に来るまでには、時間と資本が必要なのは素人の私にでもわかる。
社長さんを始め、会社のトップの人たちは、自分のお金をとにかく会社につぎ込んできた。
借りるだけ借りてきた。
でもここに来て、もう資金はそこをついてしまった。
そこで、大手の会社に買収合併してもらう話をつけてきたらしい。
生き残る道はこれしかない。
買収合併で必要不可欠なのが、監査済み財務諸表。
それでうちの事務所に転がり込んできた。
そこで2003年、4年、5年、6年と4年分の監査を一挙にすることとなった。
始めの予定では1月中旬までに財務諸表を完成させて監査レポートにサインするというものだった。
し・か・し。。。
この手の小さい会社によくあるのだけど、この会社、会計の帳簿付けをコンサルタントに代行してもらっている。
会社経営者たちは誰も、会計のか字もしらない技術者ばかり。
コンサルタントといっても、会計事務所ではなく、起業を後押しする投資系の団体で、面倒な法的手続きや会計事務を代行してやっているようだ。
すなわち、すべての会計データを握っているのはこのコンサルタントで会社経営者ではない。
またこのコンサルタントの女がすっげ~図太い神経の持ち主で、
「あれを提供してくれ、これはどうなっているの?」
と聞いても頼んでも、
「明日までに準備して出すわ」
っというものの、1週間しても2週間しても出さない。
電話をすれば、
「もう準備はできてるのよ、すぐに送るから。」
っというくせに、送らない。
あっという間に1ヶ月が過ぎてしまった。
会社経営者は危機迫って泣きついてくる。
「どうしても、どうしても今月末までにこの合併を取り付けなきゃ後がないんだ。もうお金がないんだよ、お願いだから監査レポートを発行してくださいよ。」
わかるけど、情報がないし、必要書類がないし、やりたいけどできないんですよ!
うちも実家は自営業だったから、経営者の気持ちが痛いほど良くわかる。
でも。。。
大ボスは、
「数字を裏付ける必要書類がない段階で監査はできない!」
っと跳ね返す。
でもそのクライアントが帰ってから私は大ボスに呼ばれた。
「すぐにこことあそこに電話をして口頭で言いから○○を確認しろ。それから顧問弁護士に手紙を書いてFaxしてすぐにサインをくれるように電話をしろ。それからあれとあれとこれとこれと。。。。」
アメリカの監査にはGAASと呼ばれる決まりがあって、監査の手順段取りを詳しく規定している。
その規定では、確認しなければいけないことや、サンプルの数の割り出し方まで事細かに規定されており、私たちはその通りにしなければいけない。
それを一通りやって、それでもクライアントの粉飾決算を見つけられなかった場合は、そんなに監査人が責任を問われることはない。
反対にもしそれをやらずに適当に監査レポートにサインして、嘘の報告をしてしまった場合は、監査人は刑務所にぶち込まれる。
上司が私に言いつけたのやり方は、明らかにGAASに準じてない。
「あの。。。もしかして。。。1月末までに監査レポートを発行するつもりですか?」
おそるおそる聞いてみた。
「一緒に刑務所に行こう。」
っと大ボス。
「え?」
私はこのときよっぽどすごい顔をしたんでしょう、大ボスは
「冗談だよ、心配しなくていいから言ったことをやりなさい。」
大ボスは人が良すぎる。
悪いのはあのコンサルタントなのに、危ない橋を渡るつもりだ。
言われたとおりにあっちこっちに電話する。
すると出てくる出て来る、隠された事実。
私たちの手元にある、あのコンサルタントが作った会計帳簿は嘘だらけ。
えらそうな口を叩くくせにめちゃくちゃじゃないか!
帳簿上では2005年の時点で優先株が何百万ドルもある。
でも実際に優先株が発行されたのは2006年、よくよく調べてみると、これは全部純粋な債務。
資産の部に唯一載っている項目は、機械などの固定資産。
でもよくよく聞いてみると、それらはどれも研究開発に使っているもの。
ごめんなさい、アメリカの会計規定では、研究開発に使うものはたとえ耐久財でもすべて費用計上しなきゃいけないの。
数十万ドルの単位で資産が減って、その分損失が増える。
貸借対照表に載るのは、債務と累計負債ばかり。
こんなんで、せっかく取り付けた買収の話も消えるんじゃないかしらと、いらない心配をしてしまう。
こんなリスクの高い会社こそ、GASSどおりの監査をしなきゃこっちがやぱいのに、ボスは本当に無理やり終わらせるつもりなんだろうか?
締め切りは1月末。
来週どうなるかにかかっている。
このドラマの続きは来週に引き続きます。
この会社、バイオテクノロジーの機材を研究開発している。
創業は2002年、創業以来まだ一度も売上を上げていない。
この業界はとにかく研究開発にお金がいる。
商品が売れる段階に来るまでには、時間と資本が必要なのは素人の私にでもわかる。
社長さんを始め、会社のトップの人たちは、自分のお金をとにかく会社につぎ込んできた。
借りるだけ借りてきた。
でもここに来て、もう資金はそこをついてしまった。
そこで、大手の会社に買収合併してもらう話をつけてきたらしい。
生き残る道はこれしかない。
買収合併で必要不可欠なのが、監査済み財務諸表。
それでうちの事務所に転がり込んできた。
そこで2003年、4年、5年、6年と4年分の監査を一挙にすることとなった。
始めの予定では1月中旬までに財務諸表を完成させて監査レポートにサインするというものだった。
し・か・し。。。
この手の小さい会社によくあるのだけど、この会社、会計の帳簿付けをコンサルタントに代行してもらっている。
会社経営者たちは誰も、会計のか字もしらない技術者ばかり。
コンサルタントといっても、会計事務所ではなく、起業を後押しする投資系の団体で、面倒な法的手続きや会計事務を代行してやっているようだ。
すなわち、すべての会計データを握っているのはこのコンサルタントで会社経営者ではない。
またこのコンサルタントの女がすっげ~図太い神経の持ち主で、
「あれを提供してくれ、これはどうなっているの?」
と聞いても頼んでも、
「明日までに準備して出すわ」
っというものの、1週間しても2週間しても出さない。
電話をすれば、
「もう準備はできてるのよ、すぐに送るから。」
っというくせに、送らない。
あっという間に1ヶ月が過ぎてしまった。
会社経営者は危機迫って泣きついてくる。
「どうしても、どうしても今月末までにこの合併を取り付けなきゃ後がないんだ。もうお金がないんだよ、お願いだから監査レポートを発行してくださいよ。」
わかるけど、情報がないし、必要書類がないし、やりたいけどできないんですよ!
うちも実家は自営業だったから、経営者の気持ちが痛いほど良くわかる。
でも。。。
大ボスは、
「数字を裏付ける必要書類がない段階で監査はできない!」
っと跳ね返す。
でもそのクライアントが帰ってから私は大ボスに呼ばれた。
「すぐにこことあそこに電話をして口頭で言いから○○を確認しろ。それから顧問弁護士に手紙を書いてFaxしてすぐにサインをくれるように電話をしろ。それからあれとあれとこれとこれと。。。。」
アメリカの監査にはGAASと呼ばれる決まりがあって、監査の手順段取りを詳しく規定している。
その規定では、確認しなければいけないことや、サンプルの数の割り出し方まで事細かに規定されており、私たちはその通りにしなければいけない。
それを一通りやって、それでもクライアントの粉飾決算を見つけられなかった場合は、そんなに監査人が責任を問われることはない。
反対にもしそれをやらずに適当に監査レポートにサインして、嘘の報告をしてしまった場合は、監査人は刑務所にぶち込まれる。
上司が私に言いつけたのやり方は、明らかにGAASに準じてない。
「あの。。。もしかして。。。1月末までに監査レポートを発行するつもりですか?」
おそるおそる聞いてみた。
「一緒に刑務所に行こう。」
っと大ボス。
「え?」
私はこのときよっぽどすごい顔をしたんでしょう、大ボスは
「冗談だよ、心配しなくていいから言ったことをやりなさい。」
大ボスは人が良すぎる。
悪いのはあのコンサルタントなのに、危ない橋を渡るつもりだ。
言われたとおりにあっちこっちに電話する。
すると出てくる出て来る、隠された事実。
私たちの手元にある、あのコンサルタントが作った会計帳簿は嘘だらけ。
えらそうな口を叩くくせにめちゃくちゃじゃないか!
帳簿上では2005年の時点で優先株が何百万ドルもある。
でも実際に優先株が発行されたのは2006年、よくよく調べてみると、これは全部純粋な債務。
資産の部に唯一載っている項目は、機械などの固定資産。
でもよくよく聞いてみると、それらはどれも研究開発に使っているもの。
ごめんなさい、アメリカの会計規定では、研究開発に使うものはたとえ耐久財でもすべて費用計上しなきゃいけないの。
数十万ドルの単位で資産が減って、その分損失が増える。
貸借対照表に載るのは、債務と累計負債ばかり。
こんなんで、せっかく取り付けた買収の話も消えるんじゃないかしらと、いらない心配をしてしまう。
こんなリスクの高い会社こそ、GASSどおりの監査をしなきゃこっちがやぱいのに、ボスは本当に無理やり終わらせるつもりなんだろうか?
締め切りは1月末。
来週どうなるかにかかっている。
このドラマの続きは来週に引き続きます。
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