白杖のトライリンガル

難聴だけじゃない?網膜色素変性症を併せ持つアッシャー症候群の息子達の日常を母の目からつづります。

2019-07-19 12:27:43 | その他
私には妹がいる。かわいい、かわいい妹がいる。

あまり良い家庭環境ではなかったため、私と妹は二人で寄り添って育ってきたように思う。

何にでも立ち向かう私と、気の優しい妹。

妹は私を慕ってついてきてくれた。
私は優しい姉ではなかった、でも私なりに必死で妹を守った。

私が21歳の時に母が死に、その10年後に父も死んだ。

私にとっての実家は妹の家になった。
子供を連れて日本に帰るときは必ず妹の家に泊まった。
妹はそんな私を歓迎した。

日本から何か送ってほしい時はいつも妹に頼んだ。
妹はいつも快く
「いいよ~~!」
っと私がリクエストするものを送ってくれた。

今妹は、優しい旦那さんと3人の子供たちに囲まれて幸せに暮らしている。


いや、幸せに暮らしていた。



癌が発覚するまでは。。。




癌の中でも特に質の悪い癌、胆管癌。
もう、手術はできないほど進行しているらしい。
転移も見られ、リンパ節にまで広がっている。


不幸な生い立ちを克服し、幸せを手に入れたはずだった。
なぜ?どうして妹なんだろう?
私の妹。かわいい、かわいい、妹。


そして10歳、5歳、3歳の三児の母。

死が怖くない人なんていないと思う。
だれだって、死にたくなんかない。
でも、でも、でも、幼い子供を持つ母ほどその気持ちが強い人はいないんじゃないだろうか。
それは、命が自分だけのものではないから。
子供の将来を心配し、母を亡くす子供を不憫に思い、そしてもう二度と会えなくなってしまうという耐えがたい悲しみに直面している。

なんで今なんだろう。
せめて母の享年である49歳まで生きることができたら。

妹は、アメリカに帰る私を見送りながら泣いた。
「また来るから、またすぐに来るから、頑張るんだよ。」

奇跡は起こらないのだろうか。


遊園地での障害者差別 その2

2019-07-16 12:42:09 | RP
これまた屋内遊園地でのお話。

その日は大変混んでいた。
小さい子を蹴飛ばしたりしないように、長男には白杖をしっかり持たせる。

そんな中での出来事。


長男は白杖を持っていたため、並んだアトラクションに乗ることを拒否されたのだという。

2時間も並んで、やっと自分の番になって「これから」という時に、「あなたは乗れません」って、ちょっとあんまりでしょ。

数歩トコトコと歩いて乗ってシートベルトを締める。
座ってしまえば見える人も見えない人も同じ。
終わったらシートベルトを取って、数歩トコトコと歩いて出てくる。


たったそれだけのこと。


目の前にあるその乗り物にのるだけなのに、座ってシートベルトをするだけなのに、

「あなたは目が悪いのでできません」

「いやできますよ。見ててよ。」

「いえ、決まりなので、ダメなことになっているので。」


夫が言うには、そのアトラクションは映像を見ながらシートががたがたと揺れるだけでいったい何がどう危険なのか、どうして目が悪いとだめなのか、わからなかったそうだ。


納得がいかないから電話をしてみた。


責任者の大崎さん(仮名)という方が私の対応をした。


私はなぜ白杖を持っていたら乗れないアトラクションがあるのかを聞いた。


「暗くて足元が見えにくいので、乗り降りの際、また避難をする際など危険ですのでご遠慮いただいています。」

まただ。

まるで障害者を守っているかのような口ぶりの差別、排除、締め出し。


私の頭の中には、いろんなことがよぎった。

まず長男は、視野は狭いけれど、中心視力は普通だ。
乗り降りだとか、階段だとか、気を付ける場所がわかっているのであれば何の問題もない。
問題は予期せぬ障害物であったり、小さな子供なのだ。


「白杖」イコール「視覚障害者」イコール「全盲」イコール「危険」は先入観と偏見でしかない。


二つ目、暗くて足元が見えないんだったら、かえって晴眼者の方が危ないんじゃないの?
全盲の人の方が見えない足元には慣れているわけで。



しかし、屁理屈を言うために電話をしたのではないため、この辺のことは言わないことにした。


私の目的は「守っているかのように見せかけた差別」に気付いてもらうことと、
「責任逃れのために張ったバリアが、結果、差別になっていること」に気付いてもらうこと。


私は続けた。

「大崎さん、ではこれはどう思われますか。ある映画館が『館内は暗くて足元がよく見えないため、視覚障害者の入館はお断りしております。』といったとしたら。」

「それは違いますね。」

即答だった。

「映画館がそんなことをしたら差別にあたるけれど、あなた方は良いという意味ですか?それはなぜでしょう?何が違うのですか?」

「それはー。」

「何がどう違うのですか?」

「それに関しては、後程回答させていただきます。」




避難時に危ないからという理由で視覚障害者の利用を断るのであれば、視覚障害者はどこにもいけないではないか。

「出入口が狭いので」
「階段は危険なので」

などという理由で、ありとあらゆる建物の出入りを禁じることが可能になるではないか。


「それに、〇〇の場合危険なので」という理由も、なんとでも作れると思う。


映画館も、スーパーも、デパートも、ホテルも、レストランもありとあらゆるものが「危険だから」という理由で視覚障害者を締め出すことが可能になってしまう。

「うちのレストランでは、熱いものを出しますので、ぶつかってやけどの危険があるため、視覚障害者の来店はお断りしております。」

「陳列棚にぶつかって、重いものが落ちてきては危険ですので、当店への視覚障害者の来店はご遠慮願っております。」

「うちのホテルは段差があるため、足をつまづいて転んでは危険ですので・・・」

まるで、"風が吹いたら桶屋が儲かる"状態だ。

そんな取ってつけたような「安全上の理由」を正当な理由として認めてしまえば、障害者差別のし放題になる。


誤解しないでほしいのは、「安全上の理由」がすべて間違っていると言っているのではない。
例えば車の運転など、目が見えない人が行うと危険な行為は実際にある。

私が言いたいのは「安全上の理由」と言ってしまえば何でもOKという風潮はおかしいということ。
少なくとも、事業者側はそのルールが本当に理にかなっているものなのか、しっかり吟味する必要があるし、それが当の本人から「不当だ、差別だ」と思われるのであれば、見直すべきではないのかと言っているのだ。



さて、電話の話に戻ろう。

私は長男が断られたアトラクションの話をしているのに、大崎さんはローラーコースターの話に持っていこうとする。

「危険だから安全のためにっ」と言いたいようで、
そのためには最も危険度の高いローラーコースターが都合が良いようだ。

でも私からしてみたら、ローラーコースターでも、椅子ががたがた揺れるだけの映像アトラクションでも、はたまた映画館でも、目が見えない人だけを除外する正当性はないと思う。

ローラーコースターだって、座ってシートベルトをしてしまえば見える人も見えない人も同じなわけで、目が見えないからと言って危険度が特に上がるわけではない。


大崎さんは言った。

「実際にうちでも死亡事故があったんですよ。」

「それは目が見えない人が、見えないことが理由で起こった事故ですか?」

「いえ、それは、まぁ普通の人でしたが。」

事故があったから、じゃー見えない人はダメにしようって、いったいどこから出てくる発想なの?
そんなに危ないなら、そのアトラクションは辞めればいい。

目が見えないからと言って、危険度が上がるわけではないけど、でもやっぱり危険なので、まー念には念を入れて目が見えない人はダメにしておこうっといったところか?

大崎さんは、この決まりができた経緯だとか、過去の例を話して、私を説得しようとする。
どの話も視覚障害とは何の関係もない話だけれど、責任を問われないようにと考えた挙句にできた決まりだということはよくわかる。

まぁ、説明されなくてもそれくらいのこと想像はつきましたけど。

この決まりを作るに至った経緯が何であれ、できたものが結果的に障害者差別になっているのだから、見直すべきだという私の意見に耳を傾ける気配はない。


数が少ないから、怒ってこなくなったところでたかが知れてる。
面倒な障害者が来なくなったら逆にありがたいくらいなところか。



自己責任を棚に上げて、何でもかんでも相手のせいにしてしまう人々。

責任を問われるのが面倒で、過剰にバリアを張り巡らすあまり、面倒な障害者を事前に排除してしまおうとする日本の社会。



アメリカは日本以上に訴訟の国だけれど、こういう不当な締め出しを食らったことは一度もない。
何も知らない他人が「あなたはできません」なんていう権利はないのだ。



できるかできないかは本人が一番わかる。そして本人しかわからないことがほとんどだ。
他人が勝手に「できない」と判断して行動を制限したり、サービスの提供を拒否することは人権侵害だ。


健常者と同じ入場料を払っているのに、乗り物まで歩いて行って、自分で乗ってシートベルトを締め、終わったら降りてくる、たったそれだけのことなのに、こんな白い棒を持っていたばっかりに「あなたはできません」と決めつけられて拒否された理不尽さ、屈辱。

こんなことってあっていいのだろうか。


長男は乗れなくてがっかりしたというより、すごくショックを受けていた。



私は大崎さんに伝えた。
「私を説得しようとするのはやめてください。あなた方がやっているのは、明らかに差別です。こういう意見が出たことを会議に上げて話し合ってください。」

おそらく、電話を切った後は「あー、またうるさい客だった。」と愚痴って終わったことだろう。


そして、また何にはばかることもなく堂々と「視覚障害者はこのアトラクションには乗れません」と露骨な差別を言ってのけるのだろう。

まるで障害者を守っているような顔をして。


以下障害者差別をなくすための日本の法律 (ウィッキペディアより引用)


障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件をつけることなどにより、障害者の権利利益を侵害すること。法は、事業者、行政機関等いずれに対しても不当な差別的取扱いをすることを禁止している。








遊園地での障害者差別 その1

2019-07-15 12:36:13 | 難聴・手話
せっかく日本に来ているのに雨だ。
お台場に屋内遊園地があるらしい。行ってみよう。

連休の日曜日、雨の日とあってさすがに込み合っている。
どれもこれもアトラクションに乗るためには1時間~2時間待ち。
列に並ぶ夫と子供たちを見送って、私はカフェでゆっくりすることにした。

帰る途中、三男の耳に補聴器がついていないのに気づく。

イヤーモルドはついているのに、チューブの先の補聴器の部分がない!
補聴器の部分だけ落ちるなんて初めてのことだ。
無理やり引っ張ったりしない限り普通落ちたりはない。

いったいいつ落としたのか?
すぐに遊園地に電話をした。

乗ったアトラクションを聞かれたので答えると、そのアトラクションに乗るときは補聴器をはずいてもらうのだという。

は?なんで?私は耳を疑った。

「あの、今なんとおっしゃいました?補聴器を取らせるんですか?なぜ?」

「落としてしまう可能性がありますので、補聴器は取っていただくようお願いしております。」

は?落としてしまう?冗談でしょ。

「補聴器はそう簡単に取れるものではありません。耳の型を取って作ったイヤーモルドは個人個人の耳に完璧にフィットしています。耳は中もらせん状になっているため、装着するときは少し回すように、ねじを入れるようにして装着します。逆さになろうと、どんなに首を振ろうと手を使わずに取ることは不可能です。」

そう。モルドはそう簡単には取れない。無理やり取ろうとすると、チューブの部分を痛めてしまう。

見えた! 

三男は自分の番が来て、補聴器を取るように言われたので、急いで力任せに引っ張ったんだ。
それでチューブのところでブキチれるようにして補聴器の部分だけ取れてしまったんだ。


「では眼鏡をかけている人はみんな眼鏡を取るようにお願いしているのですか」

「いえ、それは。。。」


簡単に取れてしまう眼鏡はいいのに、そう簡単に取れない補聴器は「落ちる可能性があるから」取れというのか?ますます許せない。


「なぜ眼鏡はOKなのに、補聴器は取らなきゃいけないのですか。」

「落ちてなくされたり破損されたりしたものに関しては責任は一切持たないとお断りしておりますので。眼鏡に関しては自己責任ということで。。。」

じゃぁ補聴器だって同じじゃないの。責任持たないのになんで取れと命令するの?


っていうか、何か重大なことをこの人たちはわかってない気がする。
落ちる、落ちないの問題以前に、補聴器はイヤフォンやピアスなどとは違う、体の一部なんだということを!!!

義足をしている人に「そこに義足を置いていきなさい」と言えますか?

補聴器を取れだなんてもってのほか、絶対に許せない。

私は補聴器は取れにくいものであること、眼鏡はOKで補聴器はダメと言うのはおかしいのではないかということ、そして体の一部である補聴器を取らせるという行為はいかがなものかということを伝え、必ずこのことを上に伝えるように言って電話を切った。
(でも後で聞いたら、やっぱり上には伝えてなかった。きっと「またうるさい客だった」と愚痴りながら切ったのだろう)


幸い補聴器はジョイポリスで見つかり、手元に戻ってきた。


しかし、また別のことが発覚した。(続く)

新しい補聴器

2019-07-05 12:33:49 | 難聴・手話
長男に新しい補聴器を買ってあげた。

$7000を超す買い物。

最近では、もっと安くてもいいものはたくさん出ているようだ。

でも、安いのとの違いを知ると、結局今市場に出ている中でもっともいいものを選んでしまう。
やっぱりね、体の一部だから、お金には代えられない。

新しい補聴器はスマートフォンのアプリで自分で自由自在に設定を変えることができる。

音の大きさを変えるのはもちろん
騒がしい所で目の前の人の声だけを拾うモード
外で風が強い時に風の音を抑えるモード
飛行機の中など騒音を抑えるモード
後ろの音を拾うモード

色々できる。

ブルートゥースでスマホとつながっているため、イヤフォンのように音楽や電話が耳に直接入ってくる

その時も、周りの音も拾うモード
周りの音はシャットアウトして、スマホからの音のみを拾うモード
と切り替えができる。

補聴器にはマイクもついているので、そのままハンドフリーで話すこともできる。

正直言って、普通の耳より便利だ。

新しい補聴器に満足してくれているようで良かった。

来年は三男の補聴器も買い替えてあげよう。金額的に一年に二個はちょっと無理なので。。。