どんこの空(そら)に 。

きっと何かが足りない~それを探す日記~

Carry on。

2014-03-24 | Sandstorm




その昔、仕事場に5、6歳年上の女(ひと)がパートで働いていた。
もう20年近くも前になる。
バツイチで小さな子供が二人。
5、6歳年上とは言っても、その頃は自分も若かったから、それなりに色気も十分にある綺麗な女(ひと)だった。
さすがに子供がいるだけあって、まだ若いとは言っても同世代の独身女性に比べると落ち着いた物腰と話し方をする品格を持ち合わせていた。
時折見せる、その憂いと若さが同居した何とも言えないその表情には、自分が到底かなわないような深さを感じていた。
もちろん仕事上の部下であるから、話すことは機械的な会話がほとんどではあったが。
その彼女が、年に一度くらいのペースで子供を連れて故郷にかえる。
そして毎回、お土産で買ってくるのが決まって「九十九せんぺい」だった。
彼女は長崎の生まれであった。
”いいトコですよ”と彼女は何度も自分の故郷を自慢した。

”一度来てくださいよ”

さすがにあの頃はそんな余裕もなかったから、赴くことは一度もなかったが、それでもあれから程遠い年月が経った今でも「九十九島せんぺい」のことをたびたび思い出すことがある。
何度も何度も、同じものをお土産で貰っていたせいかも知れない。
まるで、この「九十九島せんぺい」に描かれている女性のような線の細い女(ひと)だった。































今年も長期休暇に旅行を考えていた。
ふと、「九十九せんぺい」のことを思い出した。
九州・・・、長崎、佐世保。
あまりにも遠い。
時間とお金は、ギリギリであった。
これまでも、北は北海道、南は本州四国までしか行ったことは無い。
それもまだ経済的に余裕があった頃の話である。
まだ親のスネをかじっていた頃には、カナダやグアムにも行ったことはある。
が、今この自分の置かれた状況で、九州の旅は正直厳しいところはある。
まあ一生に一度のつもりくらいの決心があれば、行けないことはないのだが。
十万馬券を連発しなければ?(笑)
とはいえ、人生はチャンスとタイミング。
思い立ったら百年目である。
いざ、九州4泊5日の逃避行。
列車とレンタカーとバスを乗り継いで。
もちろん、もうすでにその長崎の女(ひと)など、とうの昔に疎遠である。
彼女に会いに行くわけでもない。
はるか昔に感じた憧れを、ひとつ成就させに行く・・・・・そんな感じだろうか。































このブログも晴れて1000回目。
春遠からじ。
野球もゴルフもようやくシーズン突入である。
結局、今年も一度も雪山には行かなかった。
心が動かない。
それだけのことである。
ただいつかはまた再び、訪れることになるだろうという予感はある。
心のどこかに、あの素晴らしい世界がある限り。
冬が終わるまでは、冬の思い出にはまだ戻れない。
そんな心のわがままに、素直に従いたいと思っている。





















<九州の旅~スナップより>


















特急みどり。
博多~佐世保間を結ぶ。
旅の始まり。
















佐世保駅。
午後に名古屋を出て、到着はもう暗くなってからであった。















弓張の丘。
沈む夕日は見れなかったが、朝日に写る九十九島も十分に美しかった。
















西海パールシーリゾート。
水族館があり、ここから九十九島の観光船も出ている。
















新種のクラゲだとか。
人間にはまだまだ未知の世界があまりにも多い。
















波止場。
観光船パールクイーンに乗船。
















快晴。
4泊5日は予報通り、晴れ×4+雨だった。
















かつて彼女が自慢していた風景の中にいる。
20年経った今、そこにいるのは不思議な感覚。
そういえば、自分は他人に自らの故郷を自慢したことがあるだろうか。
ふと、そんなことを思う。
















佐世保バーガーと焼きカキ。
思い出しただけで、ヨダレが。。。
















展海峰から望む九十九島。
まるで、言葉はいらない。
















レンタカーと路線バスを乗り継いで雲仙へ。
ハウステンボスも、長崎界隈も、今回はスルーした。

















老舗、九州ホテル。
目の前には、雲仙地獄。
















雲仙地獄。
絶好の散歩日和なり。
















地獄の青空。
無為を為さんとせず。
ただ地獄の中を歩く。
















「地獄」といえば、ヒートウェイヴ。
ヒートウェイヴといえば、やはり九州か。
メジャーデビュー前の話。
「千の夜」は、名曲だと思う。
千の夜は流れて、
全てが過ぎた数だけ・・・。












島原港にて。
















海鳥の群れ。
















熊本港に向かうフェリーの船上にて。
観光客から糧を求めて、鳥の群れがデッキに集まってくる。
良く知ったものだと思う。
















生きていくのは大変だ。
破廉恥なことなど何も無い。
















全ての根底は、弱肉強食の理。
でも人としてのモラルは、最後まで持ち続けていたい。
そう願う。
















この目の前のお嬢さん。
服部真夕プロに似てる?
















そういえば、今年もゴルフシーズンが開幕した。
マタちゃんは3戦連続予選通過。
















必ずしも絶好調ではないようだが、何とか粘れている。
それが大事。
















彼女はきっと、ゆっくり成長できる人。
















熊本駅前。
熊本といえば、先日一ノ瀬優希プロがプロ2勝目を挙げた。
森田理香子プロも、どうやら実力は本物のようだ。




















阿蘇山の火山口付近。
山は、まだ観光シーズンへ向けて焼かれてハゲ山だった。
















草千里ヶ浜。
ハイシーズンはあんなに美しい風景も、枯れ草の季節。
これもまた真実の顔。
















月。
夕暮れ近い大観峰にて。
















丘の上のホテル。
180度オーバーの星空を眺めての露天風呂は最高だった。
















ホテルのテラスより。
空と海と山と大地と。
そして人と。
















落陽。
太陽が地平に沈み、月が光る夜空の星に包まれる。
この旅は、きっと無駄ではなかった。
















熊本県内に、どこにでもいるクマもん。
クマもんて、なにもん?















九重”夢”大吊橋。
とうとう大分へ突入。
















橋より、鹿伏山方面を望む。
















別府、地獄巡りを敢行。
九州には、本当に地獄が多い。
都会にも、もっと結構すごい地獄があるけどね。。。
○ービス残業地獄とか。(笑)
笑えない?
















海地獄。
















地獄へようこそ。
















鬼石坊主地獄。
















地獄名物?
















山地獄。
















メシくれ~。
地熱の温かさで飼われている生き物たち。
















フラミンゴの中に、なぜかブラックスワンが・・・。
アフラック?
















かまど地獄。
地獄へ入っていく若いカップルが。。。
余計なお世話だが、お幸せに。
















地球の熱で噴出す温泉には、条件によってさまざまな顔を持つ。
















地獄の5丁目。
















天台宗の僧侶でもあり、直木賞作家の今東光氏が、この地獄めぐりのパンフレットに「地獄讃」たるものを記している。



”ダンテにしても、ミルトンにしても、ブレークにしても、その描いた天国はちっとも美しくもなければ面白いこともない。
それなのに地獄篇になると、全く凄まじい楽しさだ。
(中略)
しかしながら我が別府に遊ぶと八大地獄が現前する。
これは確かに恐ろしい地獄に相違ない。
(中略)
・・・何等かの意味でおのれを空しうして反省し、生きる道を考えるには別府の地獄の諸相を目の当たりに見ることを寧ろ御すすめしたい。
地獄をくぐって生き返った人間こそ本当の人間だからだ。”



なにか生きるということについて、深い言葉が含まれている。
日ごろ満たされすぎて生きていると、やもしたら地獄すら憧れてしまう人間の浅はかな心理。
現代の世俗、風潮にも十分当てはまるのではないだろうか。
















鬼山地獄。
















鬼山地獄のワニの群れ。
この中に放り込まれたら・・・・・。
















血の池地獄。
















血ノ池軟膏とか。
手のアカギレには効くのだろうか。
塗って血糊みたくなったら、それこそ大騒動だが。
















龍巻地獄。
















この間欠泉の周期の短さは、世界的にも珍しいのだとか。
ただそんな短い周期の噴出すら、見る時間もなく・・・・・。
旅に来てまで、時間に追われる悲しき人生。
















特急SONIC。
これに乗りたいがために。。。
















乗ったのは別府から大分まで、わずか6分間足らず。
快適・・・を感じる前に大分駅に着いてしまった。
















おおいた。
















1両編成の由布院行きローカル。
それも夕方の通勤通学時間。
















一転、ローカル列車の旅に。
結局由布院まで小一時間ほど、荷物抱えたまま座れずじまい。
これもまた楽し?
















とうとう、旅の最終目的地。
















離れの和室。
















露天風呂。
















足湯場。
















青湯の温泉。
まさに極楽。
















足湯場から、由布院駅方面を望む。
















プチ雲海。
















外は雨。
だが、あとは日常に帰るのみ。
最後の朝は、静かに過ごす。
















由布院駅構内。
















特急ゆふいんの森。
















あとは博多から、新幹線で名古屋へ直行のはずだったのだが・・・・・。
















乗っていた列車が踏切で車と衝突。

















列車は踏み切り直後のローカル駅に差しかかったところで緊急停車。
















一時、あたりは物々しい雰囲気に。
















幸い乗客乗員にケガはなし。
あとでニュースで調べたのだが、衝突した車に乗っていった女性も軽症だったとか。
ただ、停電はするしトイレの水は出ないし、結局バスで久留米駅まで搬送されることに。
2時間で博多に着くはずが、結局5時間以上かかってしまった。
帰るだけの自分はまだ良かったが、これから目的地に向かう観光客は大幅な計画変更を余儀なくされるはず。
一寸先はわからない。
塞翁が馬、である。
















乗るはずのなかった九州新幹線。
意外や意外の道程になった。
















もちろん、博多までは無料。
博多~名古屋の指定席特急券も払戻しでもらった。
















博多駅、17時過ぎ。。。
ただ全ては心の持ちよう次第。
















博多駅で予定外のディナーを。
とんこつラーメンにめんたいこ。
















お土産に買った炙りめんたい。
これは自分用。
そういえば、九十九島せんぺいの自分用を買うのを忘れた。
九十九せんぺい、食べられへん。。。
















皆に、九州の旅はどうだったか?と訊かれる。
どうだったのだろう。
ただ思うのは、いくら大きな憧れや幻想を描いていても、やはりいつだって目の前にあるのは現実だということである。
たとえ極楽にいても地獄にいても、できることは目の前の景色に感動し落胆し、そして次への道程を考え、行動することしかない。
夢は見れたか?
想いは叶えられたか?
そんなことは、あとになって考えることでしかない。
20年近く憧れた九十九島の情景は、やはり写真で見るよりも想像以上に美しかった。
だが、はるか昔のあの頃に聞いた彼女の話の中の九十九島は、それよりもはるかに美しい情景を湛えている。
それはたぶん、その言葉ひとつひとつに、その人の想いが込められていたからだと思う。
旅は終わった。
そしてまた、その想い出を胸に、日々を何事もなく歩いていくだけだ。
九州の風よ、ありがとう。















Carry on ~千の風に吹かれて。















Carry on・・・
風よ、連れて行ってくれないか。
どこかへたどり着けたなら、
過ぎた日々にも、風が吹く。

Carry on・・・
風よ、連れて行ってくれないか。
どこかへたどり着けたなら、
過ぎた日々にも、虹がかかる。




 「CARRY ON」

   ヒートウェイヴ
      アルバム 『NO FEAR』(1994)より




































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