月のひびき (徳正寺だより)

“いま”出遇えた一瞬をパチリ
それは仏さまとの日暮らし…

会話姿勢

2012年02月26日 20時02分28秒 | 仏々相念(住職日記)

パイロット、いいよね~・・・

 

何事も人と話す時にはその人を見ながら話さないといけませんね。

その人が見えないのに、返答したりアドバイスしたり判断したりすることは慎むべきことなのでしょう。

よくあることに、もめごとの真ん中に立たされる時、相手がいないのに片方の方にだけにお話を伺い「どう思いますか?」って尋ねられるパターン。

相手の方の事があってのことですので、片方の意見だけ伺っても返答できませんよね。

余程、気を付けて言葉を発しなければ大変なことになります。

 

ご法話をさせていただく時にも、やっぱり相手を見ながらお話しさせていただかなければなりません。

お参りさせていただき始めの頃は、法話もドキドキでできればしたくなかったような次第。

一度は真っ白になり言葉が出なかったことも・・・今でもそのことを思い出すと嫌な汗が出てきます。

そんなこんなで法話もせずに帰ることもありました。

そんな時はやっぱり後味が悪く、何してんだろうって後悔してました。

下手は下手なりに何でも話して帰らなくては・・・

そう思い立ち、その時のお味わいをさせていただいていたことです。

丁度その頃の私、若かったんでしょうね・・・

絶対、人の目を見て話そう!そう決めてお話ししていました。

それはもの凄くいいことなのですが・・・

そうすると必然的にお参りなさっているお方と目が合うのです。

そこで考えることは、この方が目を背けるまでずっと見るんだ!ってことなのです。

つまらんことするよな~って今だから思うのですが、当時は真剣にしているのです。

「相手の目を見て話す」の意味が違っているのですから・・・

どこかで「馬鹿にされたくない」なんて気を起こしていたのでしょうか・・・

 

今でも法話をするのは好きではありません。

どうしても吃音がしんどくて・・・

でも、やっぱり仏さまのおはたらきをみんなと喜びたくて・・・

一生懸命にさせていただいています。

決して若かりし頃のような思いではなく、皆さんの雰囲気を感じながらゆったりとお味わいさせていただくことです。

目が合っても乙女の如く恥じらいながら目を背けるコイツ。

可愛いものです!

 

昨日の夜、用事をしている私の背中に姉と話す息子の声が聞こえるのです、

「パイロット、いいわ~!やっぱ、いいわ~!」って。

ん?パイロットになりたいんか~・・・

高所恐怖症なのにどんな気持ちの変化があったのだろう・・・

パイロット、カッコいいやん・・・

その一言の中にいろんな事を考えつつ、その言葉が終わるや否や、

「お~っ、パイロットいいやん!なりんさい!カッコいいやん!」って用事をしながら背を向けて息子に言ったのです。

「えっ?んっ?・・・」

何か変な空気が漂うのです。

何か可笑しいと振り向くと、そこにはパイロット社製の消しゴムを見つめながら固まっている息子の姿が・・・

何をいいよるんや、親父!ってな感じで、目をパチクリ・パチクリ。

テスト期間中の息子は、勉強で使うパイロット社製の消しゴムがよく消えるという称賛だったのです。

みんなで大爆笑でした。

 

話しは人を見ながらせんといけんね~ってお味わいさせていただきました。

 

背中を向けてばっかりでは阿弥陀さまのお心に出会えません。

阿弥陀さまに向きを向けさせていただきお念仏申させていただきましょう。


納骨帰省

2012年02月25日 19時34分08秒 | 仏々相念(住職日記)

ここにしか・・・

 

一度は関東まで車で行ってみたいな~ってよく思います。

名古屋までは通して行ったことがあるのですが、その先は残念ながら・・・

富士山もいいよな~、ディズニーランドもいいよな~・・・

長野とか爽やかそうでいいよな~・・・等々。

家族でワイワイ行けたら楽しいだろうな~って思います。

 

お母さんの49日と納骨に埼玉からお帰りになられました。

初めてお会いするお方です。

予め相談させていただいており今日の日を迎えました。

 

「何時間かかりますか?」

「通してくると12時間程でしょうか。この度は大阪の叔母の所に寄ったものですから・・・」

「遠方ですのに、ようお帰りになられましたね。」

「はい、ありがとうございます。お墓は、こちらにしかありませんから・・・」

過日の墓事情ではありませんが、つらつらとそんなことが頭によぎりながらのご縁となりました。

 

2時間程、本堂で一緒に過ごさせていただき、お墓へ・・・

ここから車で20分ほど走ります。

喪主様の後に続いて上がらせていただいたのですが、長旅の疲れもあるのでしょうがその背中はどこか寂しく見えることです。

「お母さん、帰ったね・・・」

つぶやきながら納骨をされました。

そこに遺骨はあってもそこにいる御教えではありません・・・

でも、何となく分かる気がするのです。

 

旅行とか行ってもそうですよね。

旅行はもの凄く楽しいものです。

しんどい日常を離れいろんな珍しいモノを観たり食べたり・・・

私は、人見知りですので、多分、知った人に会わないだろうということが楽だったりします。

でも、人混みの中で息が詰まりそうになったり時間に追われるしんどさの中に「はよ、ウチに帰ろう・・・」

酷い時には、ウチ大好きの私は家から出て間なしに帰ることを考えることもあります。

長旅を終え辿り着いた我が家で、「あ~、帰ったね~」って言い合う。

心地いい疲れが出る時です。

 

懐かしい故郷の空気に触れながら、「お母さん、帰ったね・・・」って自然にこぼれ出るのでしょう。

どれだけこの故郷を離れていたのかは存じません・・・

でも、ながい人生の旅を終えこの故郷に連れて帰るのです。

しんどかったね~・・・なのでしょうか。

辛かったね~・・・なのでしょうか。

楽しかったね~・・・なのでしょうか。

心地いい疲れと寂しさを抱えつつ納骨されました。

 

また、12時間かけて帰っていくのです。

自らが掴んできた空間に・・・

それを保つがために歩む日常に・・・

例えそこにはしんどさと苦しさの現実が待ち構えていようとも、そこに帰っていくのです。

高台にある墓地から故郷を眺めておられました。

まるで心にしっかりとこの光景を焼きつけ、現実に押し潰されそうになったらこれを思い出そう・・・そんなお姿に感じたことでした。

 

これからも、ず~っと一緒におって下さいます。

仏さまのおはたらきとなって・・・

私の人生の旅を一緒に歩んで下さってます。

ず~っと、ず~っと抱きしめておって下さいます。

だから、安心してこの一日を大切に過ごさせていただきましょう。

 

安心して・・・


孫之微笑

2012年02月24日 20時32分59秒 | 仏々相念(住職日記)

お~っ、帰って来てくれたんか・・・

 

奥様の49日法要でした。

ご夫妻揃われ徳正寺を支えて下さったお方でした。

ご主人も身体の調子を崩され入院中ですが、久しぶりに我が家にお帰りになられたのです。

 

「よう、お参り下さいました。家内もよう来てくださったと喜んでいるように感じます。」

「ありがとうございます。私もお参りさせていただいてその声を聞かせていただいたような気がします。」

久しぶりにその家に温かい空気が満たされます。

去年のお取り越しにお参りした時にはお二方も留守でもの凄く寂しかったのを思い出していました。

 

「ワシは、ここでは死ねんな~・・・」

なかなか思うように回復しない身体を見つめる日々が続くのでしょうか・・・

「もうすぐワシも死にますけんな~、その時は迷惑掛けます・・・」

切ない言葉に、否定することもできずに手を擦るのが精一杯でした。

無力です・・・

 

懐かしい愛する人の空気に触れながら、

捜したでしょう・・・

呼んだでしょう・・・

先日のニュージーランドの話ではありませんが、捜さずには、呼ばずにはおれなかったでしょう。

襖に、廊下に、ドアに、畳に・・・どこを触れても愛する妻を思い出す、そんな空気。

 

お納骨をされるのにお墓まで行けないご主人の足の上に御遺骨を乗せられました。

軽くとも重い愛する人の御遺骨、

堪らず泣かれました・・・

今も尚、こうやって愛する人を思う姿のなんと尊いことか・・・

 

「ワシも直ぐに行くけんの・・・」

御遺骨を抱きしめながらつぶやいておられました。

 

ご法事の途中で松山にいるお孫さんが帰って来てくれました。

夜勤明けなのに、疲れた表情など見せることもなくお爺ちゃんの横に座られました。

足を擦って上げながら見上げるお孫ちゃんの顔のなんと優しいこと。

あ~、大事に育まれたのだな~って知らさせていただくことです。

そのお孫ちゃんの頭を撫でながら「よう帰ってくれたの~」って又、涙・・・

 

寂しい心が、そんな優しさ、温もりに触れ融けるのでしょうか・・・

もしかしたら死に別れ、会えるお前じゃなかったのに・・・

会えてよかった!

婆さんのご縁に会えてよかった・・・

 

ご縁の間中、私の背中を人生の大先輩の温かいお念仏が擦って下さいます。

私も参りますから・・・


後部座席

2012年02月23日 20時19分57秒 | 仏々相念(住職日記)

過去か・・・

 

3月10日、宇和~宇和島間の高速が開通します。

無料区間ということで待ちわびるコイツがいることです。

これができるとかなり楽になります。

だって、宇和島からどこまでも高速で行けるのです、島根であろうと京都であろうと・・・

 

昼前、本屋に用事があったために坊守と娘を誘い買い物ついでに一緒に行ってもらいました。

一緒に行ったら楽しいかなっと思い・・・

「運転して行きさいや!」

「うん!」と娘。

ニコニコのハンドルを握ります。

私はというと後部座席に・・・

2枚ドアの為に助手席の背もたれを畳み乗り込みます。

腰の痛いものにとっては少々キツイ乗り込み方でありますが、滅多に乗らない後部座席にウキウキするのです。

慣れた運転席はあまり気にもならないのですが、後部座席の飛び方は半端じゃありません。

ヘタなジェットコースター、敵いません!

楽しんでいるコイツはキョロキョロするもんですから運転の邪魔だったようで・・・

バックミラーの半分、顔!って・・・

そこまで言うか!

 

フロントガラス越しの未来はしんどさと不安、そして嬉しさを描きながら飛び込んできます。

ハンドルを握りしめながら一歩一歩・・・

どれだけ力入れて握りしめているんだろう、ニコニコのハンドルの右上はツルツルになってしまっています。

痛かろうに・・・とゆっくりと撫でてやります。

どれだけ支えてくれているのでしょう・・・

私と坊守の日常・・・

今、そのハンドルを娘が握っているのです・・・

娘はフロントガラスの向こうにどんな未来を描いているのでしょう・・・

 

バイパスに上がると車の数が少なく空いています。

振り向くと誰もいません・・・

久しぶりにリアガラス越しに今来た過去を見送っていました。

車でのこんな経験、何十年振りだろう・・・

何ら変わらないしんどさと不安、そして嬉しさ・・・

一緒なら歩めていました。

 

願生ろう・・・