筍豊作
「今夜は筍の暴れ食いだよ」
玄関のドアを開けて出て行く夫の背中に、声をかけました。台所からは筍をゆがく米糠の甘い香りが漂っています。
「娘たちにも持ていって」と、姉から送られてきた筍は、すでに皮のむかれた状態でした。なるほどいい考えです。筍は皮付きのままだと大きく見えるのですが、皮をむいてしまうとこれっぽっちって感じだからです。
ナイスなアイデアだったのですがね。4月からは改正された宅配便の配達日数を計算に入れてなかったのが運の尽き。翌日の夜着の予定が翌々日の午前中なってしまったのです。でもその日は私たちも用事があり、結局受け取ったのはその日の18時過ぎになりました。
さて如何なものかと恐る恐る箱を開けてみたのですが、少しだけいたんだところを切り取っただけで済みました。それにしても大量です。今年の筍は大豊作ですね。どの筍も大きくて柔らかくてりっぱでした。姉も筍を掘るのが上手になったものだと感心したのですが、困ったことに我が家には、そんな大量の筍をゆがく鍋がないのです。
我が家で一番大きい鍋は、三人の子供たちが家にいたころに使っていた土鍋です。普通の家庭用の土鍋よりも大きいのですが、それでも一度には入りきらず二度に分けてゆがきました。
夜寝る前に一度、朝起きてから一度です。さて無事に下ごしらえは完了したものの、二鍋分の筍をどうやって食べるかは問題です。休日なら娘たちに持って行けるのですが、平日は無理です。
砂糖を少しまぶして冷凍すると歯ごたえを失わずに済むそうです。一度試してみましょう。また一緒に山椒の葉も入っていたので、木の芽和えもいいですね。筍ご飯をたくさん炊いて冷凍しまよう。
でもやっぱり炊いたのが一番ですね。夫は根元のシャキシャキした固い所が大好物です。今夜は土鍋いっぱい炊き上げて、筍の暴れ食いとしまよう。暴れ食いとは当地の方言でたくさん食べるという意味で、決して暴れながら食べるという意味ではありません。
えっ、そんなに食べられるかって?
大丈夫です。私ら夫婦は筍の炊いたものなら、馬みたいに食べるんですよ。馬みたいに!
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