草むしりしながら

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草むしりの「幼年時代」その2

2018-11-16 12:01:03 | 草むしりの幼年時代
草むしりの「幼年時代」その2
小学校低学年の頃
 
 三浦哲朗の「盆土産」には泣かされた。声に出して読んでみると、早世した母親の墓参りの場面でグッときて、出稼ぎに出る父親を送る場面で涙が出て声が詰まった。
 
 舞台は東北の寒村なのだろうか。主人公の少年は給食に鯖サバフライが出ると書いてあったから、私よりも少し年下だろう。なぜならば私は中学校二年生の時に給食が始まったからだ。少年の姉と同じ歳くらいだろう。
 
 少年の父親は出稼ぎに出ているが、私の知りうる限り、自分の回りには父親が出稼ぎに出ている家は無かった気がする。雪の多い東北に比べ温暖な九州はそれだけ恵まれているのだろう。
 
 夏には稲を作り冬には麦を植える。出稼ぎこそしないが、農家の仕事は限りない。私の家は兼業農家で、母はモンペを穿いて手ぬぐいを頭に被っていつも野良仕事をしていた。子供心に「農家は嫌だなー」と思っていた。
 
 それでもテレビで炭鉱の落盤事故のニュースを見たり、漁船が難破して漁師の死んだと聞くと、家は農家でよかったと思った。
 
 今でも覚えている。霧の深い晩には遠くで汽笛が鳴っていた。物悲しい汽笛の音は、親を亡くした子供が泣いているようで、暖かな蒲団の中でそっと母の手を握ったことを。

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