闇と光の慈愛のコントラスト(85)闇は母
==第二章、闇と光==
--闇は母(008)しばしの休息②--
サンディアは、森の中にいる。
デガドリンの草の葉が胸のあたりまで覆っている。
腰を沈め草に隠れ意識を集中する。
「ザワ ザワ」
草が動く。
サンディアは、手を瞬間に次元移動させた。
その動くものを捕まえた。
矮鶏(ちゃぼ)の先祖である。
サンディアが、鳥の名前を知るはずもない。
名付けて呼ぶなら「ジャンボゥ」である。
アクデシアが死んでからいろいろな動物が増えた。
ある土地には、恐竜が現れたとも聞く。
サンディアは、鳥を持ち、いそいそと帰る。
「アクティス。帰ったよ」
サンディアは、は、アクティスに鳥を差し出した。
「きゃ。素敵」
鳥は、既に締めていた。
ピクリとも動かない。
闇の民である。動じることはない。
アクティスは、サンディアを喜ばす言葉を掛けたかったのである。
「でも、可哀そうなことをしたわね。
私のため?」
「いや。未来の為だ」
それが、アクティスの慰(なぐさ)めになるとは思はないが、
サンディアの気休めである。
サンディアは、鳥の処理をした。
毛を毟(むし)り取った。
そして、肉を食べやすい大きさに千切(ちぎ)る。
アクティスに見えない離れた場所で行った。
2人は一緒に料理をする。
包丁は、木の枝に先に鋭い尖(とが)った石のかけらが埋め込まれている。
アクティスは、緑の葉のキャンジャを千切(ちぎ)った。
赤いボヤゲの根を刻む。
暖炉に薪をくべて火をつける。
暖炉には、石の鍋がある。
鳥をまず焼く。
具材を投入する。
木のへらで混ぜる。
最後にジョガの汁をかける。
刺激のある香りがたつ。
『野菜と鳥もものジョガ炒』は、出来上がった。
あいにく卵がなく鳥骨のスープはお預けとなった。
その代わり、清い水がある。
木の皿に分ける。
イリスも呼んでくる。
イリスは、小麦をこねパンを焼いていた。
それを葉に乗せて持ってきた。
3人は、部屋の真ん中に車座に座(すわ)った。
祈りを捧げる。
「感謝します。全てに運命に。自身が良い行いを出来ますように」
イリスは、唱えた。
鳥は、パリパリに香ばしく焼けていた。
ジョガの汁が甘じょっぱい。
そのせいか食欲がわく。
水が美味しい。
イリスは、サンディアのお父さんと知り合った日を思い出す。
あの時は、光の天空城だった。
今は、自然にかこまれたマウの木の家である。
こんなに賑(にぎ)やかでもなかった。
美味しく三人は食べた。
イリスは、今後のことをアクティスに尋ねるため話し出す。
「昔…、私は、この子のお父さんと光の天空城で巡り合った…」
つづく。 次回(闇の未来①)
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