事実に基づく議論を発展させるのはどなた？

報道は事実に基づいたものでなければならない。

　事実には範囲と深さがある。広範囲にわたる事実は深さは浅くせざるを得ない。広範囲でしかも深さを追求したのでは、その報道量は膨大を極め、すべてを報道することは不可能となる。かといって、範囲を極限して深さを追求すると詳細な情報を報道できるが、全体が見えなくなる。範囲と深さを適当に設定するためには冷静な判断力が必要になる。この頃のメディアの報道を見ていると、どちらかというと範囲を局限した深さを追求した事実をもって全体の事実を暗示するような表現が多いように思える。

全体の事実を暗示する手法では、本来の事実が曖昧になる。

　例えば、一つの事実をもって全体に敷衍しようとすると、敷衍する事実は抽象的にならざるを得ない。善悪とか美醜とか真偽とか合法か違法かとかである。本来はそのような感情的な判断は慎まなければならないが、短絡的な思考がさも真実であるような錯覚をもって民衆を惑わし扇動するような報道があちこちで散見される。その証拠に捏造された民衆の熱病のようなブームが立ち去ると、その後には何も価値あるものが残っていない現象が繰り返されている。

まずは、事実が何かを正確に報道すべきである。

　事実そのものは、面白くも可笑しくもないものであるが、それが「事実」なのである。淡々と事実を語ることは退屈なことでもある。真面目なニュース番組を見て笑ったり泣いたりすることはない。それは単に事実を報道しているからである。我々民衆に事実を突付けているだけなのである。しかし、これがもともとの事実である。この事実を退屈であっても面白おかしくなくても、まずは理解し掌握する必要がある。この事実を詳細に解りやすく冷静に偏向せず報道するのがメディアの第一の使命である。

事実を弄んではいけない。

　事実は事実なのである。そして、事実に基づいた分析や評論や様々な見解がある。しかし事実以降の展開の結果が事実そのものを曲げることがあってはならない。時々事実に基づいた分析や評論や様々な見解が、事実そのものを裏付ける考察にならないで、違う目的に向かって暴走する場面をあちこちで見かける。いつの間にか被害者意識の助長や恐怖心の増大や個人攻撃や体制批判になってしまい、本来の事実が見失われてしまう。本来の事実を裏付ける議論はどこに消えてしまったのだろう。そしてその議論を可能とする人達はなぜ口を噤んでいるのだろう。

事実を裏付ける議論のできる人を大切にしなければならない。

　その知識と能力と権限と、そして的確な判断力を有する人材を重用しなければならない。一般大衆や素人や関係のない第三者は、感想や賛同や拒否や個人的な意見を述べることはできても、それは単に参考意見にしかならないし、本来の事実を詳細に研究する人材ではない。何故、本来の知識と能力と権限を持った者がメディアの中で取り上げられ議論に参加しないのだろうと疑問に思うことしきりである。メディアの中にこのような意識が働いているのか、体制批判の側に立つメディアとしてはこのような人達の意見は取り入れられないのだろうか？

一つの事実が発生すると、

　メディアは、それに付随する個別の事象をつぶさに報道して、そこから類推される全体の事実を暗示させようとする。一般大衆はそちらの方が解りやすいのでその報道に飛びついて一喜一憂している。しかしこれは冷静な判断とは到底言えない。個別の事象の集大成の中に事実を裏付けるものが存在し、少なくとも個別の事象を集約した分野別の分析や判断に基づいた結論くらいでないと使い物にならないのではないか？この結論を提供できる人材はどこにいるのだろう。何故、そこに情報源を求めないのだろう。そのような結論を自信たっぷりに述べる人物を危険人物とみなしているのだろうか？不思議でしょうがない。