テレビを見ていると、コンピュータの扱われ方が奇妙なのに気がつく。
例えば、ドラマの中で登場人物がコンピュータ画面に向かって簡単にポンポンとキー入力すると必要なデータが次々に出てくる。このデータはどこから出てきたんだろうと不思議に思う。少なくともドラマの筋書きのようなデータベースをサービスしているところはどこもない。ひどい時はネットワークに接続もしていない。自分の作ったデータをあらかじめ入力していたのなら説明はつくが、個人のデータベースだけではあまり利用価値はない。「そんなのできるわけないよ」と簡単にばれてしまうようなコンピュータ利用の場面を登場人物は真剣な顔をして平然とやり遂げている。コンピュータに疎い人達はこれを信用して誤解してしまうのではないかと心配になってくる。
アクション映画でのコンピュータの利用場面もおかしい。
コンピュータ画面に敵陣地内のあちこちの映像が映し出され、これを使って仲間に指令を出すが、このデータ通信はどうやっているのか、カメラはどうやって設置したのか不思議でたまらない。少なくとも地下では電波は届かないはずであり、電話線があちこちにあるはずもない。いろいろな遠隔制御の機器が登場するが、これも何を使ってどういう技術で制御してるのか不明であり、いろいろなデータを収集してコンピュータに表示してくれるが、どのようなセンサーを使っているのか不思議になる。いつこんなセンサを設置したのかも不明である。とにかくコンピュータさえあれば何でもできるという印象を一方的に植え付けようとしているように見える。そんなことはない。
ドラマだけでなくほかの番組の中でもコンピュータを使っている。
キーボードから入力するとVTRが始まったり、マウスをクリックするとインターネットを想定した画面が現れプレゼンテーションが始まる等である。流される画面とコンピュータは直接は関係ない。そのコンピュータでコントロールしているわけでもない。キー入力やマウスクリックは恰好だけである。どうしてこんなやり方をしなければならないのか疑問になる。人工音声をしきりと使うのも気になる。人工音声でしゃべった内容はコンピュータがしゃべったわけではない。原稿を書く人がいてその人がしゃべらせているのである。コンピュータを介すると信憑性が増大するとでも思っているのだろうか?これはよくマジックで使われるトリックの手法である。
インターネットの使われ方もおかしい。
インターネットがまるで魔法の小箱のように簡単に何でも取り出せるかのように扱われている。特にドラマの中で著しい。また、ハッカーの扱い方もおかしい。簡単にいろんなネットワークに入り込むことができるような印象を持たせる扱いが多い。ドラマであり架空の作り物であると言えばそれまでであるが、コンピュータやネットワークに対する不安感を知らない間に植え付け増幅させているのではないかと心配になってくるし、コンピュータやネットワークでは可能であれば何をやってもかまわないという間違った認識を無意識のうちに植えつけている気がする。いくらドラマとは言え、コンピュータやネットワークの本質的な部分や利用に当たっての最低限のルールははずさないでほしいと切に思うものである。
昔、複写機と印刷装置とカード入力装置を使った「コンピュータ占い」があった。
複写機で手相を複写して、氏名、年齢、性別、生年月日、星座等を入力して、カード入力装置を操作すると印刷装置に入力データと占った結果が印刷され、この印刷結果と複写した手相をお客に渡すのである。これで500円から1000円を取っていたと思う。今ではもうこんな光景は見かけないだろうが、これは完全に詐欺である。複写した手相や入力したデータと占い結果は全く関係ない。占い結果はカード入力装置に読みとらせるカードに適当に入っている。このカードは操作する人が多数の中から勝手に選んだものである。昔はこれでもコンピュータの占った信憑性ある内容だと信じ込んでお金を出す人がたくさん居たのである。テレビもこの詐欺師の流れを汲むのであろうか?
昔、テレビでコンピュータを使った結婚相性診断みたいな番組があった。
複数の相手のデータを入力して、自分のデータを入力すると最も相性のいい相手をコンピュータが選択してくれるという趣向である。選択するだけでなく、人工音声でその理由と結婚した場合の生活の様子まで案内していた。それを聞いている当事者の表情は異様である。コンピュータを信じ切っているし、コンピュータの出した結果は絶対であると思い込んでいる。結果は運命であり変えられないとも考えていて、自分の意志と違う結果が出たためか、同じ結果が出たためか意外な結果が出たためかは知らないが、コンピュータの出した結果に感動し絶句し泣き出してしまう人もいた。本質はくじ引きでカップルを決めているのと何ら変わらない。画期的な相性診断法が見つかったという話は聞いたことがない。その方法が見つからない限りいくらコンピュータ処理したからといって結果はいい加減なものである。
携帯メールが一般的でない頃、パソコンで公衆電話を使ってメールチェックしていたら、
後ろから中年のおばさんが「ちょっとォ、電話をするんだからそんなのは後にしてヨォ!!」と言われた。私は「えっ?」と言って絶句してしまった。これはどういう意味だろうと頭の中でぐるぐると思考回路が巡った。「電話は急ぐけれども、メールチェックはいつでもできるでしょう」と言っているのかとも思ったが、そこまでインターネットに造詣が深そうには見えないし・・・。「時間がかかりすぎたかな」とも思ったが、たかがメールチェックで1・2分のことであるし、このおばさんは今来たばかりである。わ・か・ら・な・い???。
今考えても、真意はわからないが、
どうやら、おばさんは悪戯か遊んでいると思っていたようである。受話器も掛けたままだし、なんやら変な線を使ってテレビゲームみたいなものをつないでいるとでも思っていたのではないかと思う。「電話機は電話のために使うものヨ」「変な使い方しないでヨ」「私は本来の電話として使うのヨ」とでも言いたげな口調であった。わけは解らないが早々に切り上げて電話を譲った。この頃はインターネットが一般生活に浸透してきたようだが、インターネットはごく身近の日常生活の中にあるのに、特殊な人にしか使えないもしくは最高度の技術を必要とする異次元の世界のものと思い込んでいるのではなかろうか。それこそテレビや映画の架空の世界の中でしか存在しないと思っているのであろうか。そして、テレビや映画の中でも架空の扱われ方をしている。
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