切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

映画と小説、『ゼロの焦点』

2008-01-02 22:38:53 | アメリカの夜(映画日記)
この<映画と小説、○○○>シリーズは当分続けられそうな感じなんだけど、松竹と新潮社のためにやってるみたいなところが、ちょっとねぇ~。とはいえ、代表的な清張作品としては『点と線』、『砂の器』より優れた小説だと思える『ゼロの焦点』。映画のほうも、まあまあだったなあ~。

話は、見合い結婚をしたヒロインの夫が新婚早々行方不明になり、ヒロインは夫が赴任していた北陸金沢へ、夫を探す旅に出るというもの。

この原作は、戦後の女性の置かれた状況抜きでは語れない作品で、端的に言えば、昭和30年代の見合い結婚やいわゆる“パンパン"の問題が、今の感覚からするとわかりにくいところではある。

たとえば、ほとんど相手のことがわからない状況での見合い結婚。(もっとも、普通に付き合ったからといって、相手のことがわかるってものでもないでしょうけれど。それと、歌舞伎座が見合いで行く所の定番っていうのも、時代を感じるなあ~。)

それと、くだけた英語を話す女性を見て、米軍兵と“関係”があったのではと思うくだりは、帰国子女や海外留学が珍しくない現在では、なかなか理解できないところではないですかね?

さて、映画のほうですが、高千穂ひづる、久我美子、有馬稲子の三女優の競演というのが当時の売りだったようですが、なんといっても高千穂ひづる一世一代の熱演が光るというところか。特に後半は、少々ウェットながら、彼女の独壇場って感じではありましたね。なかでも、車の運転をしているところのキリっとした感じが犯罪モノらしくてよかったと思います。

そして、映画が素晴らしかったのは、冬の北陸の凍てつく寒さが見事に映像として結実していた点。小説も、冬の金沢の雰囲気たっぷりですが、映画は冬の日本海や雪景色を、美しいモノクロ映像で見せてくれています。やっぱり、この頃の川又昴カメラマンはいい仕事をしてますよね。

カメラの好きな人ならわかるでしょうけど、雪景色って写真に撮るのは結構難しいですから、雰囲気のある雪景色の続くこの映画を見ていると、撮影の見事さがとても印象に残ります。

ところで、この作品の終わり方は小説と映画で微妙に違うんですが、わたしは小説のほうの残された者の微妙な感情が残る終わり方の方が好きではあります。でも、映像化はなかなか難しいでしょうけどね。

さて、直接関係ないけれど、戦後の女性の問題を描いた映画としては成瀬巳喜男監督の『浮雲』、夫の失踪というテーマなら、今村昌平のドキュメンタリー映画『人間蒸発』っていうのが『ゼロの焦点』に近いシチュエーションではありましたね。(もちろん、どちらも必見の名作映画です!)それと、失踪ネタといえば、江角マキコ主演の『幻の光』なんていう映画もあったっけ、あんまりたいした映画でもないけれど。

そんなわけで、長くなったのでこの辺で。

ゼロの焦点

松竹ホームビデオ

このアイテムの詳細を見る


ゼロの焦点 (新潮文庫)
松本 清張
新潮社

このアイテムの詳細を見る


浮雲

東宝ビデオ

このアイテムの詳細を見る
人間蒸発

東北新社

このアイテムの詳細を見る


幻の光

バンダイビジュアル

このアイテムの詳細を見る
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« あけおめ!(新年の口上) | トップ | クラシカジャパンにちょっと... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

アメリカの夜(映画日記)」カテゴリの最新記事