切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

光市母子殺人について考える前に。

2007-07-03 23:27:24 | TVピープル
死刑廃止論者の弁護士が、被告を死刑にしないように動いているという論調にどうも違和感を感じながら、本当の真実は、検察側の主張とも弁護側の主張とも違うところにあるんじゃないかって思えてしまうわたしは、例外的な心情の持ち主なんでしょうか?とりあえず、この件については判断保留のわたしですが、なんで判断保留なのかってことをつらつら書いてみましょうか?

たとえば、以下のHPに書かれていることは、もっとメディアが詳しく取り上げなければいけない内容で、殺人罪(故意)か傷害致死罪かっていうのは、重要な論点ではあると思います。

・橋下弁護士の口車に乗って光市事件弁護団の懲戒請求をしたあなたへ取り下げるべきだとアドバイス~その5

また、元裁判官や元検察の弁護士ばかりがコメンテイターをやっている朝のワイドショーなんかの論調に流されてていいのかということもあるし、「ドラえもん云々」という被告の法廷での発言にヒートアップしているマスコミやブロガーの熱気も、なんだか共感しがたい。とはいえ、加害者の人権なんてという思いもわたしは享有しているわけで、なかなかどっちつかずの思いのままなのですが、わたしの迷いのきっかけになっている本は以下のようなものです。


①『宮崎勤事件』一橋文哉 著(新潮文庫)

いわずと知れた幼女連続誘拐殺人事件を追ったドキュメンタリーですが、宮崎の部屋の映像や宮崎の肖像写真を発表するタイミングが、マスコミの性格を見抜いた警察の仕組んだもので、法廷対策まで考え抜かれたものだったというのは、この本ではじめて知った。警察・検察の思い描く物語や"法廷の真実”ということについて考えさせられる一冊であり、特に、メディアの人間はこの本を読んだら、軽々しくメディアリテラシーなんて言葉を使わなくなるのではないだろうか。

②『累犯障害者』 山本譲司 著 (新潮社)

以前も感想を書いた本だけど、しかるべき精神鑑定などの処置やケアが行われなければならないはずの知的障害者が、責任能力を問われて有罪になり、犯罪を繰り返していく実態。この本は、刑法39条(心神耗弱)の神話を覆した一冊だといっていいでしょう。

・以前書いたこの本の感想

③『心にナイフをしのばせて』 奥野修司 著 (文藝春秋社)

今度は被害者目線から。酒鬼薔薇事件の先駆とも言える、高校生の同級生殺人。被害者遺族は、心に後遺症を負い、母親は廃人同様になる一方、加害者Aは国費で教育を受け、今は弁護士となって成功し、地元の名士となっている。しかも、Aは被害者や被害者遺族に一度として謝罪をしておらず、被害者遺族は貧しい暮らしをしているという不条理。

もちろん、この本にとりあげられた事例はきわめて例外的なものなんだろうけど、社会にたいするやり場のない怒りを感じるのは、わたしだけではあるまい。衝撃のドキュメンタリー。

④『少年犯罪被害者遺族』 藤井誠二 編著(中公新書ラクレ)

この本はノンフィクション・ライター藤井誠二氏と4人の少年犯罪被害者遺族との対談を納めたもので、最後の4人目が光市母子殺人事件の本村氏。

本村氏というと、テレビの印象があって、遺族としての感情を爆発させたような場面や発言ばかりがメディアでは取り上げられるんだけど、活字になったものなんかを読むと、このひとの印象は正直かなり変わる。

本村氏は、国内法はもとより、海外の司法の仕組みをよく勉強されており、少なくとも活字で読む限りは、感情に訴えられるというより、冷静で論理的だなあと関心さえしてしまう。

このあたり、どうもメディアに責任があるんだろうけど、遺族である本村氏以上に感情を煽っているのはメディアやそれに煽られたネット住人のような人たちであって、この本を読む限り、本村氏の不信感は再犯の責任をとらない裁判官や法廷で被害者遺族以上に保護されているマスコミにも向けられている。

「ドラえもん云々」で、センチメンタルに本村氏サイドに肩入れする前に、この本の彼の主張にこそ耳を傾けるべきだとわたしは思うのですが…。

            ☆   ☆   ☆


それと、最後に安田弁護士について。

安田弁護士のことは以前も書いたことがあって、もう言い尽くしているんだけど、彼自身がマスコミ嫌いで、あまり弁明をしないことがかえってよくないような気がする一方、あのダーティーな中坊公平を批判できなかったマスコミが、どうして安田弁護士を批判する資格があるのか、わたしにはわからない。

・「弁護士欠席」報道に気をつけろ!(安田弁護士について書いた記事)
・司法取引?中坊公平の弁護士登録抹消を受理

それと、「人権派弁護士」、「死刑廃止論者」という言い方が強調されるなか、裁判員の選定過程で死刑廃止論者ははじかれるという話もあって、どうもきな臭いのだけど、これって気のせいなんでしょうか?

(参考)
・「 裁判員候補」に対しての質問と内心の自由について (法務委員会の議事が載っています。)

というようなわけで、ワイドショーやネットが騒いでいるほど、加害者、被害者、司法の問題って、軽くないってことが言いたかったわたしでした。

だから、マスコミには上っ面じゃない報道を望みます。特に、この件では。


宮崎勤事件―塗り潰されたシナリオ

新潮社

このアイテムの詳細を見る


累犯障害者

新潮社

このアイテムの詳細を見る


心にナイフをしのばせて

文藝春秋

このアイテムの詳細を見る


少年犯罪被害者遺族

中央公論新社

このアイテムの詳細を見る
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« あの金田久美子が活躍! | トップ | <訃報> 映画監督 エドワ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

TVピープル」カテゴリの最新記事