切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

本日、国立劇場におりました!

2010-12-18 22:17:00 | 私の写メ日記(観劇版)
国立劇場の歌舞伎公演「仮名手本忠臣蔵」を観てきました。今年の観劇で一番体調不良でしたね~。なので、えらそうな感想は言えませんが、でも…。ということで、簡単に…。

今回は変則版「忠臣蔵」で、いきなり三段目から始まり、四段目で一度幕間。お軽・勘平の道行があって、跳んで七段目があって、十一段目の討ち入りという形。

で、率直に言うと、なんだか食い足りないんですよね。忠臣蔵の厳かな感じとか豪華さがない。これは、国立劇場の構成・企画に問題があるのでは?(たとえば、七段目なんて、遊び感覚が何もないような省略の仕方!)

三段目で幸四郎初役の師直だけど、意外に悪くなかったです。結構ニンに合っているのかもしれないですね。わたしは、映画の「忠臣蔵(大映)」の滝沢修のイメージを想像していたんだけど、今回の幸四郎はたっぷり厚塗りの化粧で、一瞬幸四郎とは分からないくらいの貫目があった。特に顔が大きく見えるんですよね。だから、滝沢修というよりは、野村克也みたいだったなあ~。(ほっぺの感じのイメージと嫌味がね。)

三~四段目の染五郎の判官も悪くないんだけど、少し線が細い。切腹の場面なんか畳二畳が広く見えちゃって…。だから、気品に加えて貫禄がないと駄目なんでしょう、この役は。(当代勘三郎や梅玉、昔なら梅幸は、もうちょっと貫禄もありますからね~。細い感じがしたんですよ。)ただ、顔世御前の福助は厳かさがあって、よかったですね。花道の引っ込みも含めて。

そして、道行~七段目の福助のお軽(二役目)。これも悪くなかったですね。道行は指先に表情があってよかったし、七段目も変にうるさくなくて、慎ましさがあった。ただ、問題なのは染五郎の勘平、平右衛門との相性。前者ではカップルに見えないし(カップルだとしても、年上女房って感じ。)、後者では兄妹に見えない。これも、染五郎のせいとばかりは言えなくて、少なくとも染五郎の平右衛門はなかなかの熱演だった。相性の問題なのか、なんなのか?!染五郎も相手が孝太郎だったら、相性があったのかな~。ちょっと、この点、わたしは結論を持っていないんだけど…。

それと、染五郎ついでで思ったことを。

このひと、容姿だけなら、顔の小ささで十五代目市村羽左衛門とか十一代目市川團十郎に似てるかな~なんて、今日初めて思いましたよ。

だけど、この人の血筋の高麗屋(幸四郎)とか播磨屋(吉右衛門)って、橘屋(羽左衛門)や成田屋(團十郎)と違って、写実主義というか、心理主義風の台詞になるでしょう。容姿からいったら、十五代目羽左衛門みたいな心理主義じゃないカラッとした台詞が合っているのに、心理主義風にやろうとするから、芝居に愉悦感ないのかな~と。といっても、いまさら、いまの菊五郎みたいな芸風にもなれないから、気持ちよさと心理主義のより良い折衷、使い分けを模索するってことになるんでしょうねえ~。

で、やっぱり、最後に上演形態についてひとこと。

変則形式自体は悪くないんだけど、討ち入りは十分か十五分でいいですよ。芝居としての見どころがないんだから。歌舞伎を普段観ないような観客だって、「討ち入り」にこだわるほど馬鹿じゃないと思いますけどね。(いっそ、七段目の前の講談の説明と一緒で、講談で語ってお終いにするとか!)

それと、どうせなら、六段目、七段目、九段目中心の舞台で充分ですよ。特に九段目が置き去りにされている傾向が強い!そういう意味では、以前国立劇場でやった坂田藤十郎(当時は中村鴈治郎)の上方版忠臣蔵は素晴らしかった!九段目を入れただけでも偉かったのに、舞台も傑作でしたからね~。こういう濃い舞台の連続の<忠臣蔵セレクション>がわたしの今後の期待です!

というわけで、感想でした。

PS:あと、言い忘れたけど、今回も中村亀鶴が巧かった!このひとは何でも巧いなあ~と感心。亀鶴襲名のときの「戻り籠」ではこんな役者になるなんて想像もしなかったけど、素晴らしい。
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2 コメント

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おそまきながら感想を (ひでかず)
2011-01-02 22:59:11
お富さんは年末はご病気だったとか,御身お大切に.
ところで,「日記帖」には記しませんでしたけど,先月17日にわたくしも国立劇場の「忠臣蔵」を見ています.そこで疑問におもったことがふたつあります.

四段目を「古例により」「通さん場」として,客席への出入りを禁止する,との説明書きがロビーに張り出され,職員のひとたちの肉声による説明もありましたが,それならば,判官をつとめる役者はこれ一役だけで他の役は演じないという「古例」も尊重されていいのではないかと,おもいます.(もっとも,判官と他の役を同時に演じることもけっこうおこなわれていたようですが).

七段目でお軽が身の上のことを実家に知らせようと手紙を書くところで,仲居が持ってきた巻紙に,あらかじめ「天紅」がほどこされていたようですが,これってほんらいは手紙を書き終えたあとで遊女がじぶんのくちびるを紙に押しつけて紅色をつけるのではないでしょうか.

つまらぬことをくどくどと書きこんで,失礼しました.
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コメントありがとうございます。 (切られお富)
2011-01-06 01:33:33
ひでかずさま

コメントありがとうございます。

四段目「通さん場」の件ですが、若干遅れて観劇したせいで、職員の肉声の説明は聞けませんでした。でも、「通さん場」を強調されるほどの判官はなかなかないなあ~というのが正直な実感ですかね。

それと、本当は判官役者は自分の出番が終わったらすぐ帰らなくちゃいけないんでしたよね。

もっとも、今回みたいに染五郎が三役やっていたら無理ではあるけれど…。

それと、七段目のおっしゃる部分、わたしも実はなんとなく気になったのですが、今回の七段目はだいぶディテールが省略されていたので、仕方ないのかな~とも思いました。

ただ、その日のわたしは体調最悪で、あんまり記憶も定かじゃないんですけどね~。
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