切られお富!

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梁石日の『夜を賭けて』で知った大村収容所の話。

2010-03-19 23:59:59 | 超読書日記
大阪の「アパッチ族」を描いた小説といえば、開高健の『日本三文オペラ』が有名だけど、当時開高健の取材に答えた現役のアパッチ族が詩人の金時鐘と後に作家となる梁石日だったとは、凄い運命のいたずらですよね~。で、映画にもなった『夜の賭けて』の原作で面白かったのは、映画では描かれなかった第二部。大村収容所の話です。

原作では第一部がアパッチ族の話で、第二部がアパッチ族の後日談。

アパッチ族というのは、アマゾンのレビューからそのまま引用すると「昭和33年に大阪造兵廠跡で警察と大攻防戦を繰り広げ世間を騒がせた在日コリアン集団“鉄くず窃盗団アパッチ”」ということだけど、開高健の小説では、在日ということはそれほど強調されていなかった印象。これも時代の制約ってことなんでしょうかね?

いっぽう、梁石日のほうは、なぜ在日が「アパッチ族」になるに至ったかを、その置かれた状況から描いている面があって、だからこそ必然的に後半の後日談につながっていくんですよね。

さて、このあたりで本来なら、本題の「大村収容所って何?」という問いに答えるべきなんでしょうが、これにわたしには荷が重い…。

いきなりググるのもいいですが、この本を読んでその実態を知ったほうがいいですね。

たぶん、多くの日本人は知らない話だし、戦後の話だってことが大問題。

すぐ北朝鮮への帰国運動や韓国の軍事独裁政権の問題を話題にしたがるウヨクがいたりしますが、じゃあ、当時の日本はなんだったのか?GHQの検閲を問題にする江藤淳以降の言説も、この話の前では無効だって気がします。

沖縄の問題しかり、朝鮮半島しかり、周縁からじゃないと本質って見えてこないなあ~とつくづく思いますね~。

この小説の後半を「夜を賭けて」第二部として、映像化してくれないものでしょうか?映画関係者!

夜を賭けて (幻冬舎文庫)
梁 石日
幻冬舎

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