以前、オリコンのやった調査で「新入社員に薦めたい本」というのがあったんだけど、正直仰天した。1位「三国志」、2位「司馬遼太郎の本」、3位「マナー本」なんだってさ!?まあ、これって、先輩の話なんか話半分でいいんんじゃないのってことを示してるんじゃないのかな?で、「じゃあ、おまえは何を薦めるんだよ?」っていわれそうなので、考えてみました、わたし流に!!
①『労働ダンピング』 中野麻美 著
まず前提として、先輩も会社もあなたを絶対に騙しています!わたしは自分が社会に出た頃、このことを思い知らされました。つまり、知らされるべきことなんてなかなか教えてくれないものなんですよ。というわけで、「働く」ってことが「搾取される」ってことにならないように読むべき本がこれ。ホワイトカラーエグザンプションなんかにも触れられていますので、先輩社員の方々もどうぞ!!
②『カルト資本主義』斉藤貴男 著
宗教にたいして胡散臭さを感じているあなたも、企業文化こそが宗教的だってことに気づいたりしませんか?いいかえれば、日本社会が無宗教的な仮面を被りつつ、じつは宗教的なコミュニティーだって気づくはず。資本主義(会社社会)とカルトの関係を考える上での基本文献です、これは!!
③『秀十郎夜話』 千谷道雄 著
これは歌舞伎の裏方の半生記なんだけど、社会に出てわたしが考えてしまったのは、「アーティストより名もなきアルチザンの方が偉いんじゃないか」ってこと。社会には尊敬すべき仕事の職人がたくさんいますが、大言壮語の経営者を目指すか、名もなき職人を目指すのか?これって、結構重要な社会人としての問いなんじゃないですかね?というわけで、この本は、名もなき、でもプライド高き裏方の一代記。しかも、歌舞伎界残酷物語という感じもしなくはないなあ~。
④『放浪記』林芙美子 著
働く女の小説といえば、古典ながらこれでしょう。林芙美子の独特の言い切り調の歯切れのよい文章や詩は、この人の生活力を反映していると思うんだけど、これは地に足の着いた詩情という感じで、ろくすっぽ働いていない私小説作家とはまるっきり違う。非正規雇用全盛の時代に、働く女の孤独を描いた小説として再評価されていいのかも?因みに、高峰秀子主演、成瀬巳喜男監督の映画版『放浪記』も秀逸です!
⑤『編集王』 土田世紀 著
しかし、このマンガを読み返して何度わたしは目頭を熱くしたことだろう!!マンガ雑誌編集部を舞台にしたこのマンガは、安野モヨコの『働きマン』よりも前に、すべての働く人たちのために書かれた作品だったといってもよいのでは!! 女性編集者の悲しみを描いたくだりと、東大卒エロ編集者・明治君のくだりは涙なくして読めません。個人的にも愛読しております。(因みに、わたしが持っているのは愛蔵版です!)
⑥『作家の誕生』 ブラッサイ 著
最後の最後、やっぱり、働くのなんか嫌になった!という人に勧めるのはコレ!ヒッピーなんかが登場する以前に、まさに働くのを止め、放浪生活に入った男・ヘンリー・ミラー。彼が文名をとどろかすのは、60歳を過ぎてからだったのだけど、大物にふさわしい堂々たる放浪生活を送っていた彼を間近で見守った友人の写真家ブラッサイの筆による、まさに大作家の誕生の目撃談がこの本!ここまでやる気があるのなら、わたしは止めませんが、さて、どうでしょう!因みに、この著者ブラッサイは大変に文才があって、「プルースト/写真」という本は、格好の「失われた時を求めて」入門といえる作品です。
★番外<映画>編
①「黒の試走車」 増村保造監督
猛烈社員ってこんなだなって思う一本。高松英郎みたいな上司って、あなたの周りにいませんか?
②「フルメタル・ジャケット」 スタンリー・キューブリック監督
ベトナム戦争を扱った作品で、前半の訓練風景について評論家あたりが、「普通の若者を非人間的な殺戮兵器に変える鬼教官」なんていう表現をするんだけど、最近改めて見直したら、この教官は鬼でもなんでないなあなんて、見方が変わってしまった!
つまり何が言いたいかって言うとと、猥語連発のこのいわゆる「鬼教官」って、どこの組織にもいる、不器用で猥語でしかコミュニケーションできない、実は人畜無害なオッサンなんだってこと。
わたしなんか、見直していたらこのオッサンの面倒見のよさにある意味感心してしまいましたよ。
で、なんでこの作品を取り上げたかというと、学生時代のわたしなら非合理的な指導と思えた、この映画の鬼教官の姿も、社会に出れば当たり前の先輩からの指導というかディシップリン(試練)なのであって、なにもことさらに「鬼」とか、「非人間的」などと思う必要はないのではないかってこと。
だから、この映画を見て、「鬼~」と思った新入社員諸君ははっきり言って甘いって、わたしは思いますね。むしろ、何も言わない先輩社員、黙って既得権益を手放さない連中、こういうのが一番たちが悪いんだって、大人なら思ってほしい。
というわけで、どう感じるか、リトマス試験紙的な意味合いで取り上げてみました。入社直後と入社数年後で、感想が変わるんじゃないかな?
因みに、映画評論家なんて永遠にガキなんだとも思うけど・・・。だって、実際の映画界ほど軍隊的なところもないでしょうから!
というわけで、誰も参考にはしないでしょうが、どうぞご随意に!!
①『労働ダンピング』 中野麻美 著
まず前提として、先輩も会社もあなたを絶対に騙しています!わたしは自分が社会に出た頃、このことを思い知らされました。つまり、知らされるべきことなんてなかなか教えてくれないものなんですよ。というわけで、「働く」ってことが「搾取される」ってことにならないように読むべき本がこれ。ホワイトカラーエグザンプションなんかにも触れられていますので、先輩社員の方々もどうぞ!!
②『カルト資本主義』斉藤貴男 著
宗教にたいして胡散臭さを感じているあなたも、企業文化こそが宗教的だってことに気づいたりしませんか?いいかえれば、日本社会が無宗教的な仮面を被りつつ、じつは宗教的なコミュニティーだって気づくはず。資本主義(会社社会)とカルトの関係を考える上での基本文献です、これは!!
③『秀十郎夜話』 千谷道雄 著
これは歌舞伎の裏方の半生記なんだけど、社会に出てわたしが考えてしまったのは、「アーティストより名もなきアルチザンの方が偉いんじゃないか」ってこと。社会には尊敬すべき仕事の職人がたくさんいますが、大言壮語の経営者を目指すか、名もなき職人を目指すのか?これって、結構重要な社会人としての問いなんじゃないですかね?というわけで、この本は、名もなき、でもプライド高き裏方の一代記。しかも、歌舞伎界残酷物語という感じもしなくはないなあ~。
④『放浪記』林芙美子 著
働く女の小説といえば、古典ながらこれでしょう。林芙美子の独特の言い切り調の歯切れのよい文章や詩は、この人の生活力を反映していると思うんだけど、これは地に足の着いた詩情という感じで、ろくすっぽ働いていない私小説作家とはまるっきり違う。非正規雇用全盛の時代に、働く女の孤独を描いた小説として再評価されていいのかも?因みに、高峰秀子主演、成瀬巳喜男監督の映画版『放浪記』も秀逸です!
⑤『編集王』 土田世紀 著
しかし、このマンガを読み返して何度わたしは目頭を熱くしたことだろう!!マンガ雑誌編集部を舞台にしたこのマンガは、安野モヨコの『働きマン』よりも前に、すべての働く人たちのために書かれた作品だったといってもよいのでは!! 女性編集者の悲しみを描いたくだりと、東大卒エロ編集者・明治君のくだりは涙なくして読めません。個人的にも愛読しております。(因みに、わたしが持っているのは愛蔵版です!)
⑥『作家の誕生』 ブラッサイ 著
最後の最後、やっぱり、働くのなんか嫌になった!という人に勧めるのはコレ!ヒッピーなんかが登場する以前に、まさに働くのを止め、放浪生活に入った男・ヘンリー・ミラー。彼が文名をとどろかすのは、60歳を過ぎてからだったのだけど、大物にふさわしい堂々たる放浪生活を送っていた彼を間近で見守った友人の写真家ブラッサイの筆による、まさに大作家の誕生の目撃談がこの本!ここまでやる気があるのなら、わたしは止めませんが、さて、どうでしょう!因みに、この著者ブラッサイは大変に文才があって、「プルースト/写真」という本は、格好の「失われた時を求めて」入門といえる作品です。
★番外<映画>編
①「黒の試走車」 増村保造監督
猛烈社員ってこんなだなって思う一本。高松英郎みたいな上司って、あなたの周りにいませんか?
②「フルメタル・ジャケット」 スタンリー・キューブリック監督
ベトナム戦争を扱った作品で、前半の訓練風景について評論家あたりが、「普通の若者を非人間的な殺戮兵器に変える鬼教官」なんていう表現をするんだけど、最近改めて見直したら、この教官は鬼でもなんでないなあなんて、見方が変わってしまった!
つまり何が言いたいかって言うとと、猥語連発のこのいわゆる「鬼教官」って、どこの組織にもいる、不器用で猥語でしかコミュニケーションできない、実は人畜無害なオッサンなんだってこと。
わたしなんか、見直していたらこのオッサンの面倒見のよさにある意味感心してしまいましたよ。
で、なんでこの作品を取り上げたかというと、学生時代のわたしなら非合理的な指導と思えた、この映画の鬼教官の姿も、社会に出れば当たり前の先輩からの指導というかディシップリン(試練)なのであって、なにもことさらに「鬼」とか、「非人間的」などと思う必要はないのではないかってこと。
だから、この映画を見て、「鬼~」と思った新入社員諸君ははっきり言って甘いって、わたしは思いますね。むしろ、何も言わない先輩社員、黙って既得権益を手放さない連中、こういうのが一番たちが悪いんだって、大人なら思ってほしい。
というわけで、どう感じるか、リトマス試験紙的な意味合いで取り上げてみました。入社直後と入社数年後で、感想が変わるんじゃないかな?
因みに、映画評論家なんて永遠にガキなんだとも思うけど・・・。だって、実際の映画界ほど軍隊的なところもないでしょうから!
というわけで、誰も参考にはしないでしょうが、どうぞご随意に!!
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秀十郎夜話―初代吉右衛門の黒衣冨山房このアイテムの詳細を見る |
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編集王 (1)小学館このアイテムの詳細を見る |
作家の誕生 ヘンリー・ミラーみすず書房このアイテムの詳細を見る |
黒の試走車角川エンタテインメントこのアイテムの詳細を見る |
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ここが考えるスタートだと思う。
戦争を考えるスタートで言うなら、ジョージ・オーウェルの「カタロニア賛歌」や、山本七平の「下級将校の見た帝国陸軍」、「瀬島龍三 参謀の昭和史」あたりがわたしの選ぶ基本書かな。
ちなみに、わたしは左翼ではありません。(近頃のネット右翼は、もっと嫌いだけど。)