切られお富!

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『忠直卿行状記』 森一生監督

2016-01-13 23:59:59 | アメリカの夜(映画日記)
菊池寛の原作に加えて、原作にインスパイアされて書かれた太宰治の短篇「水仙」も併せ読むとよいんじゃないでしょうか。映画の方は、もちろん市川雷蔵主演で、初代水谷八重子がよい役で出ています。なお、大坂夏の陣で真田幸村を討ったのは忠直卿の家来なんですよね。

徳川家康の孫にあたる越前藩主松平忠直が主人公で、文武に秀でた忠直が家来のひそひそ話をたまたま聞いていしまうんですね、「槍の試合で、殿に勝ちを譲った。殿が腕を上げたんで、最近は勝ちを譲るのが楽になった」と。この時以来、人間不信に陥った忠信のご乱行の数々・・・。

シェイクスピアばりの苦悩を江戸時代の殿様のなかに見出した菊池寛はなかなかのものだったと思うんですが、「実は殿様は本当に強者で、あれは家来の負け惜しみだったんじゃないか」と仮説を立てて短編を編んだ太宰もなかなかだな~と思います。ちなみに、太宰の小説では、絵の才能があるとおだてられた人妻が家出をしてしまうという話なんですけどね~。

で、映画の方。同じ監督の『若き日の信長』に比べると、この映画の方が作りがしっかりしています。人間不信に陥る瞬間の市川雷蔵のバックの映像なんて、なかなか凝ってますし、爽やかな名君が滅茶苦茶になっていく様は、『陽気な殿様』みたいな映画もやれば、『大菩薩峠』の退廃の極致みたいな主人公・机竜之介も好演できる演技力の雷蔵ならではの力でしょう。

でも、この映画の白眉はなんといっても、初代水谷八重子演じる忠直の母親が息子を説得する場面。水谷八重子の映画出演のなかでも記憶に残る名演の一つではないでしょうか。

ということで、『若き日の信長』より、この映画と原作の方が現代にも古びないテーマを扱っている気がしますね~。

ご興味のある方はどうぞ。

PS:ちなみにあさのあつこさんご推薦の短篇時代小説でもあります。

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