切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『心中天網島』  篠田正浩監督

2008-01-15 00:10:40 | アメリカの夜(映画日記)
若い頃の吉右衛門が出ていることでも知られる映画なんだけど、見逃してたんですよね~。なんでかっていうと、篠田正浩が嫌いだから!もちろん、主要な作品は見てるんですけどね。と、そんなことはともかく、感想です。

そういえば、篠田正浩っていうとちょっと思い出があって、むかし早稲田の演劇博物館をぶらぶらしていたら、いたんですよね、このひと。

他にひともいないものだから、話したそうな顔をしていたんだけど、当時バリバリの映画オタクだった生意気なわたしは、適当にかわして外に出ちゃったんですよ。しょうがないんで、職員相手に歌舞伎の話をしてましたね~。なんか映画の取材だったのかな?

まあ、そんなことはともかく、これは、素晴らしい成島東一郎カメラマンの映画です!(悪意ありすぎか?)

舞台風のセットに黒衣。強いコントラストの白黒で、中間のトーンのグレーはあんまり出てこない。強いライトを当ててるせいで、岩下志麻はちょっと気の毒でしたけど。(肌の表面が光で強調されちゃうから。)

舞台美術っぽいセットが素晴らしいし、役者の演技もいいものだから、結構納得して見ることはできます。ただ、象徴主義に堕した作品だって批評はあたってなくもない。

言葉を変えるなら、文楽や歌舞伎を知ってる人が観る映画みたいになってしまっていて、近松の新解釈ということにはなってないわけですよ。そのあたりが、どうも物足りないといえば、物足りないかな。でも、この監督の作品としては最良の作品だとは思います。(ただ、岩下志麻の足を強調した演出は、ちょっと面白かった。)

で、わたしが一番感心したのは、じつは吉右衛門。

やっぱり吉右衛門はこの頃からうまかったんですね。

当時吉右衛門は25歳くらいのはずだけど、今、これくらい上方和事の役をやれる若手歌舞伎役者っていますかね?できますか?染五郎さん!

ただ、歌舞伎や文楽に親しんだ目で見てしまうと、この映画って東京の人が作った近松物ではありますね。坂田藤十郎や文楽のこってりとした上方和事とは明らかに違う、スッキリとした近松物。その点が、人間に迫るというより、芸術映画然としてるとはいえるんじゃないかな?

しかし、コレを見ちゃうと、吉右衛門は近松もいけるんじゃないかって思ってしまうなあ~。今はやる気はないのかしら?上方のものだと「桂川連理柵」なんかはやったりしてるけど・・・。

そんなわけで、吉右衛門の近松物という<見果てぬ夢>を思い描かせてくれる一本でした!

PS:この頃の岩下志麻って、割合顔が丸いんですよね。ちょっと、アングルによってはアヤパンみたいだし・・・。どうでもいいんですけど・・・。

心中天網島

東宝

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