切られお富!

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『山猫』 ルキノ・ヴィスコンティ監督

2009-08-06 23:59:59 | アメリカの夜(映画日記)
先日、NHK-BSでイタリア語完全版を放送してましたよね。せっかくなので、ひっさびさに見直しました。改めて気づいたことなど…。

はじめて『山猫』を観たのは随分前の話なんですが、そのときは英語短縮版だったんですよね~。

なので、「ヴィスコンティにしては、随分ハリウッド映画風の淡白な演出だ」というのが当時のわたしの感想。

でも、その後にイタリア語完全版を観て、まったく印象が変わってしまった!本当は繊細なヴィスコンティらしい心理劇だったりするんですよね、この映画。

それに、英語版とは根本的に画質が違っていて、「以前見たあれは何だったの?」というくらい画面が向上している。

さて、今回見直してみての印象ですが、風をうまく演出に使っているなあということが気になりました。

もちろん、映像で「風を吹かせる」には、風に揺れる何かを画面に配置するということになるのですが、映画冒頭の大邸宅に揺れるカーテンに象徴されるように、大河ドラマ的な、ゆったりとした空気が画面に表現されているんですよね~。

もうひとつ気になったのは、この映画は三角関係を繊細に描いた映画だということ。

以前観たときはそれほど強く感じなかったのですが、アラン・ドロン演じる貴族の青年とその親戚の貴族の娘、そして中産階級の美貌の娘(クラウディア・カルディナーレ)の三者、とりわけ、恋に敗れる貴族の娘の心理を巧妙に描いているなあと思いました。

晩餐会でのそれぞれの視線とか、クラウディア・カルディナーレの爪を噛む仕草など…。

兎角、この映画は最後の豪華な舞踏会の場面ばかりが話題になりますし、もちろんあの場面は素晴らしいのですが、そこに至る心理の綾があってこそ、最後の舞踏会のカタルシスと、宴の後の寂しさが印象に残る。

日本でいえば幕末の話に当たるし、時代から取り残される運命を背中に感じる貴族役のバート・ランカスターの威厳…。

まあ、とりあえず、この映画の舞台シチリアには行ったことがなかったなあ~なんてことを思いつつ映画を観終えましたよ。

そういえば、同じヴィスコンティの『揺れる大地』から、オペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』、『シチリアの晩鐘』など、数々の名作の舞台になったシチリア!おっと、『ゴッドファーザーⅢ』もありましたね~。

というわけで、せっかちじゃない人向けの映画です。

久々に見直してよかった!

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