切られお富!

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『ほんとうのジャクリーヌ・デユ・プレ』

2004-09-09 17:12:38 | アメリカの夜(映画日記)
最近実は、柄にもなくクラシックにはまっていて、
その流れで、話の種に観た映画です。

主人公のジャクリーヌ・デユ・プレは伝説的なチェロ奏者で
16歳でデビュー、25歳で体の自由が利かなくなる難病
に冒され45歳で失意のうちに死んでしまったという女性です。

映画のジャンルとして伝記映画というのは大抵抹香臭くて詰らないものだし、ジャクリーヌ・デユ・プレのプロフィールを考えてもなんかまじめな闘病生活の話かなと思ったのですが、いい意味で予想は裏切られました。

何が映画を面白くしたかというと、ジャクリーヌ・デユ・プレという人が60年代に青春を謳歌した極めて奔放な女性だったということ。
BB(ブリジット・バルドー)も斯くや、という奔放ぶり。チェロでふざけてキンクスの「ユー・リアリー・ガット・ミー」を弾くあたりちょっと親近感沸きました。
全体の4分の3がこの青春ぶりに割かれ、残りが闘病生活というバランスも話が変にまじめにならなかった原因でしょう。

しかし、この映画のテーマは彼女の天才ぶりというより<姉妹(兄弟)というものの不可思議さ>にあるというのが私の見方です。そもそもこの映画の原作が彼女の姉と弟が書いた暴露本で、特に姉のほうはよくこんなこと暴露しちゃったなと思うようなことまで暴露していて、映画の中にも出てきます。他人には窺いしれない、でも姉妹(兄弟)のある人なら心当たりのある複雑な関係と愛憎。姉妹というものの持つ密室感。特に、親子の関係との違いは<性>の問題であり、その意味ではヴィスコンティの「熊座の淡き星影」なんかに連なるタイプの映画だと思います。
(だから、<天才と平凡>というようなテーマ性を超えているというのが私の見方。)

冒頭の海辺のクレーン撮影など、リリカルな映像を使った構成も秀逸で大傑作でもないけど秀作ですね。
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