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切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『美しい星』 三島由紀夫 著

2010-05-13 23:59:59 | 超読書日記
三島由紀夫異色のSF(?!)として、名作の誉れ高い一冊。読んでなかったんで読んでみました。しかし、いま読んで面白いですか?これは?!

自分たちを宇宙人と信じる家族の物語であり、地球を救おうとする自称宇宙人VS地球を滅亡させようという自称宇宙人のディスカッション・ドラマでもあるこの小説。「こういうの、今は流行らないだろうなあ~」と思って読みましたね~。

というのも、この小説の眼目は後半のディスカッション部分で、文庫の解説を書いている奥野健男氏はドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』の大審問官のくだりまで引き合いに出していますが、さて、それほどのものなのか?

というより、ドスト氏の大審問官自体がわたしはあんまり面白くなくて、過大評価だと思ってしまうんですけどね。だって、キリスト教内部やキリスト教VSイスラム教、ユダヤ教の対決を通過しているヨーロッパならいざ知らず、徳川家康の家来が一向一揆に加わっていたみたいな、錯綜しているのが当然な日本で、神学論争みたいな話ってピンとこないですよ。

で、その段でいえば、この小説『美しい星』のディスカッション部分もわたしにはまるで邪悪なものを感じない空虚な会話そのもの。全然怖くもなんともなかったというのが正直な感想ですね。

それに、こういうわかりにくい観念ゲームを今喜んで読む読者がいるのかどうか?ご立派な大人はバカにするでしょうが、漫画『デスノート』の方がよっぽどわかりやすい形で神学論争を語っているんじゃないですか?

というわけで、わたしがこの小説で面白かったのは美人の妹が美しい男に騙されるくだり。突拍子もないかもしれないけど、娼婦が聖者として扱われるモウパッサンの「テリエ館」という短篇を思い出しました。言葉による錬金術みたいな意味でね~。

それに、三島の観念ゲームは『近代能楽集』くらいのサイズじゃないとわたしは乗れないですね。もっとも、芝居ならよいってことか・・・。

しかし、アマゾンではこの小説、高評価なんですよね~。わたしなら、三島ビギナーには短篇を薦めます。「山羊の首」「魔群の通過」「百万円煎餅」「月澹荘奇譚」「女方」など。

美しい星 (新潮文庫)
三島 由紀夫
新潮社

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