長らくこういう企画をやってなかったんですが、久しぶりにやります。もっとも、「わたしが生の舞台を観たうちで」という前提付きですので、あしからず。
わたしが去年観た歌舞伎の舞台は以下の通り。
1月 国立劇場、新橋演舞場、ル・テアトル銀座(玉三郎)
2月 新橋演舞場(勘九郎襲名)
3月 新橋演舞場、国立劇場
4月 新橋演舞場(忠臣蔵通し)、国立劇場
5月 新橋演舞場
6月 新橋演舞場(猿之助襲名)、国立劇場(鑑賞教室)、コクーン歌舞伎(クドカン新作)
7月 新橋演舞場(猿之助襲名)
8月 新橋演舞場
9月 新橋演舞場(秀山祭)
10月 新橋演舞場、国立劇場
11月 新橋演舞場、国立劇場、明治座(夜の部のみ)
12月 新橋演舞場、国立劇場
そして、いよいよ各賞発表!
●2012年MVP
①坂田藤十郎
②尾上菊之助
③市川猿之助
迷ったんですが、富十郎、芝翫、雀右衛門という人間国宝の訃報が続く中、2012年の藤十郎の舞台の充実ぶりは驚異的でした。特にエバーグリーンの大傑作は、「九段目」の戸無瀬もよかったけど、やっぱり「勧進帳」の義経でしょう。しかも、定評のある近松物以外の成果だというところも凄い!というわけで、この人で決まりです。
2位の菊之助は十二月の八ツ橋ばかりでなく、一月の雪姫から安定した実力を発揮。忠臣蔵四段目の判官をこの若さでここまでやれたのは、さすが梨園の優等生!確実に大役をこなし、充実度で同じ歳の海老蔵を上回っていたという評価です!
そして、3位は亀治郎改め四代目猿之助。襲名興行もさることながら、忠臣蔵の勘平を上型式でやって、そこまでのレベルというのが素晴らしい。明治座の「天竺徳兵衛」もエンタメした序幕から、悪女役も素晴らしく、ポスト勘三郎はこのひとかなと思わせる活躍ぶりでした。
●敢闘賞
・六代目中村勘九郎(鏡獅子、天日坊)
2月の新橋演舞場での襲名披露時には、まさか12月に勘三郎がこの世を去るとは想像もつかず、父親の腰の入った「鏡獅子」とは違う、背筋の正しい「鏡獅子」の踊り手が出てきたなあ~と感心しました。親子で違うタイプの踊りが出てくるところが面白いなあ~と思ったし、それぞれの進化がこれから見れると期待していたのに…。でも、勘九郎は所作事といい、芝居といい、生真面目一本の楷書の芸で、駄作としか思えなかったクドカンの「天日坊」も勘九郎にだいぶ救われたんじゃないですか、ねえ、クドカン!というわけで、今後に期待という意味で、敢闘賞!
●特別賞
・中村錦之助(稲妻草紙 名古屋山三の役で)
11月の国立劇場公演は染五郎の怪我で急遽の代役だった錦之助。しかし、これは観客にとっても錦之助にとっても最高の結果に終わったんじゃないですか!涼しい美男ぶりに、憂愁さえ加わった演技で、梅玉さんの演じるような役の後継者はこのひとに決まりだと思いましたよ!もっとチャンスを与えてほしいという意味で特別賞!息子の隼人くんも個人的に応援しております!
●功労賞
・二代目市川猿翁(「楼門五山桐」久々の舞台姿から)
・十八代目中村勘三郎(鈴ヶ森)
三代目猿之助改め二代目猿翁と十八代目勘三郎といえば、歌舞伎座七月の猿之助奮闘公演と八月の三部制納涼歌舞伎で観客動員を引っ張った二人。しかし、長らく舞台を遠ざかっていた猿翁が痛々しい姿で舞台に上がり、勘三郎が永遠に舞台を去った2012年って…。
とにかく、一つの時代の終わりというか、時代の変わり目みたいな気がして、功労賞です。もっとも、猿翁や勘三郎が元気なときはずいぶん批判記事を書きましたけどネ。
●2012年の忘れがたい舞台・忘れがたい演技
・金閣寺(新橋1月) 雪姫=菊之助
・鏡獅子(新橋2月) 勘九郎
・鈴ヶ森(新橋2月) 吉右衛門、勘三郎
・忠臣蔵九段目(新橋3月) 戸無瀬=藤十郎
・忠臣蔵四段目(新橋4月) 菊之助
・忠臣蔵六段目(新橋4月) 亀治郎(猿之助)
・絵本合邦衛(国立4月) 仁左衛門
・義経千本櫻 四ノ切(新橋6月)静御前=秀太郎、義経=藤十郎
・寺子屋(新橋9月) 松王=吉右衛門
・馬盥(新橋9月) 吉右衛門
・勧進帳(新橋10月) 義経=藤十郎
・塩原多助一代記(国立10月) 三津五郎
・引窓(新橋11月) 仁左衛門
・文七元結(新橋11月) 文七=菊之助
・稲妻草紙(国立11月) 名古屋山三=錦之助
・天竺徳兵衛(明治座11月) 猿之助
・籠釣瓶(新橋12月) 八ツ橋=菊之助
個人的には、仁左衛門の「絵本合邦衛」がわたしの全歌舞伎観劇体験の中でも指折りのインパクトでした。ただ、この舞台って前年の再演ではあるので、純粋な意味で2012年の舞台と言えるのかという問題は残るのかもしれませんね。そこで、もうひとつベストアクトを選ぶとすると、じつは相当困る。あえて選ぶなら、「鈴ヶ森」、「寺子屋」、「引窓」、「稲妻草紙」かな~。
考えてみれば、2012年の国立劇場はかなり充実していて、「塩原多助」も「鬼一法眼三略巻」もかなり良かったんですよね。ただ、吉右衛門の一條大蔵卿は過去に観た二度の舞台ほどにはよくなかったという意味で今回あげませんでした。
そんなわけで、歌舞伎は木戸銭払って観てない人が想像するより日々充実しているんですよね。
勘三郎が死んだとき苦々しかったのは、勘三郎の舞台はもちろん、歌舞伎なんか観てもいないくせに、意味不明の勘三郎礼賛コメントとかツイートをしている浅はかな連中が結構いたこと。謙虚さって重要なんじゃないのってことと、やたらに同調したい共感したいって反応はネットの悪弊の一つなんじゃないかってことですかね?違いますか?ああいうバカをみるにつけ、恥の感覚はないのかって言いたいですよ!
ということで、話を本題に戻して(笑)、一応もうひと演目は勘三郎&吉右衛門の久々の共演だった「鈴ヶ森」ということにしておきましょう!
異論反論甘んじて受け入れます。
以上がわたくしが選ぶ2012年歌舞伎ベストアクトでした!
わたしが去年観た歌舞伎の舞台は以下の通り。
1月 国立劇場、新橋演舞場、ル・テアトル銀座(玉三郎)
2月 新橋演舞場(勘九郎襲名)
3月 新橋演舞場、国立劇場
4月 新橋演舞場(忠臣蔵通し)、国立劇場
5月 新橋演舞場
6月 新橋演舞場(猿之助襲名)、国立劇場(鑑賞教室)、コクーン歌舞伎(クドカン新作)
7月 新橋演舞場(猿之助襲名)
8月 新橋演舞場
9月 新橋演舞場(秀山祭)
10月 新橋演舞場、国立劇場
11月 新橋演舞場、国立劇場、明治座(夜の部のみ)
12月 新橋演舞場、国立劇場
そして、いよいよ各賞発表!
●2012年MVP
①坂田藤十郎
②尾上菊之助
③市川猿之助
迷ったんですが、富十郎、芝翫、雀右衛門という人間国宝の訃報が続く中、2012年の藤十郎の舞台の充実ぶりは驚異的でした。特にエバーグリーンの大傑作は、「九段目」の戸無瀬もよかったけど、やっぱり「勧進帳」の義経でしょう。しかも、定評のある近松物以外の成果だというところも凄い!というわけで、この人で決まりです。
2位の菊之助は十二月の八ツ橋ばかりでなく、一月の雪姫から安定した実力を発揮。忠臣蔵四段目の判官をこの若さでここまでやれたのは、さすが梨園の優等生!確実に大役をこなし、充実度で同じ歳の海老蔵を上回っていたという評価です!
そして、3位は亀治郎改め四代目猿之助。襲名興行もさることながら、忠臣蔵の勘平を上型式でやって、そこまでのレベルというのが素晴らしい。明治座の「天竺徳兵衛」もエンタメした序幕から、悪女役も素晴らしく、ポスト勘三郎はこのひとかなと思わせる活躍ぶりでした。
●敢闘賞
・六代目中村勘九郎(鏡獅子、天日坊)
2月の新橋演舞場での襲名披露時には、まさか12月に勘三郎がこの世を去るとは想像もつかず、父親の腰の入った「鏡獅子」とは違う、背筋の正しい「鏡獅子」の踊り手が出てきたなあ~と感心しました。親子で違うタイプの踊りが出てくるところが面白いなあ~と思ったし、それぞれの進化がこれから見れると期待していたのに…。でも、勘九郎は所作事といい、芝居といい、生真面目一本の楷書の芸で、駄作としか思えなかったクドカンの「天日坊」も勘九郎にだいぶ救われたんじゃないですか、ねえ、クドカン!というわけで、今後に期待という意味で、敢闘賞!
●特別賞
・中村錦之助(稲妻草紙 名古屋山三の役で)
11月の国立劇場公演は染五郎の怪我で急遽の代役だった錦之助。しかし、これは観客にとっても錦之助にとっても最高の結果に終わったんじゃないですか!涼しい美男ぶりに、憂愁さえ加わった演技で、梅玉さんの演じるような役の後継者はこのひとに決まりだと思いましたよ!もっとチャンスを与えてほしいという意味で特別賞!息子の隼人くんも個人的に応援しております!
●功労賞
・二代目市川猿翁(「楼門五山桐」久々の舞台姿から)
・十八代目中村勘三郎(鈴ヶ森)
三代目猿之助改め二代目猿翁と十八代目勘三郎といえば、歌舞伎座七月の猿之助奮闘公演と八月の三部制納涼歌舞伎で観客動員を引っ張った二人。しかし、長らく舞台を遠ざかっていた猿翁が痛々しい姿で舞台に上がり、勘三郎が永遠に舞台を去った2012年って…。
とにかく、一つの時代の終わりというか、時代の変わり目みたいな気がして、功労賞です。もっとも、猿翁や勘三郎が元気なときはずいぶん批判記事を書きましたけどネ。
●2012年の忘れがたい舞台・忘れがたい演技
・金閣寺(新橋1月) 雪姫=菊之助
・鏡獅子(新橋2月) 勘九郎
・鈴ヶ森(新橋2月) 吉右衛門、勘三郎
・忠臣蔵九段目(新橋3月) 戸無瀬=藤十郎
・忠臣蔵四段目(新橋4月) 菊之助
・忠臣蔵六段目(新橋4月) 亀治郎(猿之助)
・絵本合邦衛(国立4月) 仁左衛門
・義経千本櫻 四ノ切(新橋6月)静御前=秀太郎、義経=藤十郎
・寺子屋(新橋9月) 松王=吉右衛門
・馬盥(新橋9月) 吉右衛門
・勧進帳(新橋10月) 義経=藤十郎
・塩原多助一代記(国立10月) 三津五郎
・引窓(新橋11月) 仁左衛門
・文七元結(新橋11月) 文七=菊之助
・稲妻草紙(国立11月) 名古屋山三=錦之助
・天竺徳兵衛(明治座11月) 猿之助
・籠釣瓶(新橋12月) 八ツ橋=菊之助
個人的には、仁左衛門の「絵本合邦衛」がわたしの全歌舞伎観劇体験の中でも指折りのインパクトでした。ただ、この舞台って前年の再演ではあるので、純粋な意味で2012年の舞台と言えるのかという問題は残るのかもしれませんね。そこで、もうひとつベストアクトを選ぶとすると、じつは相当困る。あえて選ぶなら、「鈴ヶ森」、「寺子屋」、「引窓」、「稲妻草紙」かな~。
考えてみれば、2012年の国立劇場はかなり充実していて、「塩原多助」も「鬼一法眼三略巻」もかなり良かったんですよね。ただ、吉右衛門の一條大蔵卿は過去に観た二度の舞台ほどにはよくなかったという意味で今回あげませんでした。
そんなわけで、歌舞伎は木戸銭払って観てない人が想像するより日々充実しているんですよね。
勘三郎が死んだとき苦々しかったのは、勘三郎の舞台はもちろん、歌舞伎なんか観てもいないくせに、意味不明の勘三郎礼賛コメントとかツイートをしている浅はかな連中が結構いたこと。謙虚さって重要なんじゃないのってことと、やたらに同調したい共感したいって反応はネットの悪弊の一つなんじゃないかってことですかね?違いますか?ああいうバカをみるにつけ、恥の感覚はないのかって言いたいですよ!
ということで、話を本題に戻して(笑)、一応もうひと演目は勘三郎&吉右衛門の久々の共演だった「鈴ヶ森」ということにしておきましょう!
異論反論甘んじて受け入れます。
以上がわたくしが選ぶ2012年歌舞伎ベストアクトでした!
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