切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『営業ものがたり』 西原理恵子 著

2005-11-01 23:17:09 | 超読書日記
サイバラこと、西原理恵子の新刊は、傑作「朝日のあたる家」も素晴らしいんだけど、それより何より、「うつくしいのはら」!この一篇だけで浦沢直樹の「PLUTO」を飛び越してる。やっぱりサイバラは天才だな~。!

前半の「営業ものがたり」のお笑いネタと後半の「うつくしいのはら」「朝日のあたる家」の叙情性に分裂があるので、一冊通すと散漫な印象もなくはないんだけど、全編片方のノリにしなかったところが彼女のバランス感覚なのかなっていう気もする。

「うつくしいのはら」という作品は、簡単に言ってしまえば「反戦マンガ」っていうことになってしまうんだろうけど、そんな手垢のついたイメージを飛び越える含みのある作品。ネタバレは避けたいので詳しくは書かないけど、絵柄、色彩の素晴らしさ、ストーリーの構成力など、短い作品なのに全てを語り多くを想像させるもので、天才の作品としか言いようがない。(「浦沢さんとわたくし」のなかで、「浦沢は話が長い」っていってるのは本音なんだと思うな。)わたしは三回読んで三回泣きました。

『ぼくんち』の番外編「朝日のあたる家」は、番外編なんていう言葉が場違いに思えるほどの完成度、完結性でやっぱりすごい。なんでサイバラがこういう世界を自分のものとして描けるのかわからないのだけど、車谷長吉なんか到底及びもつかない表現力だし、中上健次だってこんな世界は紀州ネタの連作など、たくさんのページ数を使わなければ表現できなかった。それを、なんて簡潔に直接に描いていることか!(因みに、この作品を読んで『ぼくんち』が気になった人は、すぐに本屋さんへ駆け込んでください!)

前々からわたしは同時代を生きている数少ない天才の一人にサイバラをあげているんだけど(他は、中村吉右衛門、椎名林檎など)、今回も本当に圧倒されました。サイバラにお笑いのみを求めているひとには不満が残るかもしれないけど、「うつくしいのはら」は『夕凪の街 桜の国』(こうの史代 著)と並ぶ今年の収穫です!とにかく、おすすめ!!

<わたしのサイバラ・ネタ記事>
『上京ものがたり』 西原理恵子 著
「毎日かあさん」論争

営業ものがたり

小学館

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