今は一介の芝居好きの顔をしている私ですが、一応、元映画オタクです。(今はわけあって距離置いてるけど…。)でも、最近はまるっきり映画を観てないので、<おすすめ映画>について述べてみようかな。
過去のこのブログの記事を読み返していたら、東宝、東映、松竹、大映、新東宝ぐらいまで話題が出てくるのに、一社忘れてたなあということに気づいた。そう、日活です。
別に日活のために何かする義理なんてないのだけれど、公平性(?)ってやつを保つかってことでこの企画。セレクトの主旨としては、めったに見ることのできない戦前作(京都大将軍時代や日活多摩川時代などいろいろあるんだけど。)と日活ロマンポルノ(じつはひょんなことから嵌ってしまって一家言あり。推薦作をあげると20本は下らない。)は除外して、「戦後作品でロマンポルノ以前のもの」という基準で選んでみました。
①『素っ裸の年齢』(鈴木清順監督)
普通、日活時代の鈴木清順といえば、『東京流れ者』(たまにカラオケで歌います!)、『関東無宿』、『けんかえれじい』、『殺しの烙印』あたりだろうし、私としても、『河内カルメン』や『花と怒涛』なんか大好きだが、あえてこの一本。
赤木圭一郎なんて、いまどき話題にもならないだろうけど、日活撮影所内のゴーカート事故で死んでしまった“和製ジェームス・ディーン”といわれる役者。しかし、この人の初主演映画を鈴木清順が監督していたということは案外知られていないのでは?
この頃の鈴木清順はシャープな職人監督的なところがあって、『影なき声』とか『踏み外した春』なんていうのも結構渋い。一時間足らずの短い作品ながら、“苦い青春”という感じの佳作。
因みにこの後、赤木の主演した『拳銃無頼帖』シリーズを監督した野口博志(博康)は鈴木清順の師匠に当る監督で、再評価されるべき人。『拳銃無頼帖』シリーズの銃撃戦のカット割りは、日本のハワード・ホークスと言いたくなるような突拍子のなさがあって痛快。現在の清順作品の不思議なカット割りのルーツはココにあると思うんですがね…。
なお、最高傑作という噂の最新作『オペレッタ狸御殿』の公開も楽しみですね、清順さん!
②『洲崎パラダイス赤信号』(川島雄三監督)
これは知る人ぞ知る傑作。川島雄三の日活時代といえば、『幕末太陽伝』と『愛のお荷物』が有名だが、個人的にはやっぱりこの作品。場末に生きる男と女を三橋達也と新珠三千代が好演した作品で、冒頭の橋のシーンからヌーヴェル・ヴァーグっぽい洒落たモノクロ画面でカッコいい。
③『あした晴れるか』(中平康監督)
石原裕次郎主演作。全盛期の裕次郎を知らない世代にとって、なんで裕次郎が人気があったのか?というのは、なかなかわかりにくい問題なのだけど、その謎を解くカギは、案外こうしたスクリューボールコメディ(今風に言うとラブコメ?)の中にあるような気がする。要するに、それまでの単なる美男役者と違って、<本音で生きる等身大の若者>っていうところに魅力があったのではないか?
この作品は、以前、渋谷のユーロスペースでやった中平康特集でも取り上げられていたけど、八百屋の息子でカメラマンの裕次郎に相手役が芦川いづみ。芦川いづみがメガネを掛けた早口の女の子役で出ているんだけど、今っぽくて可愛いんだな~。
晩年は酒びたりで評判の悪い中平康だけど、若い頃のシャープな映画は今見てもなかなか良い。個人的には『その壁を砕け』、『猟人日記』、『紅の翼』(冒頭の暗殺者の主観の長回しが圧巻!)みたいなサスペンスタッチに手腕があったように思える。加賀まりこ主演の『月曜日のユカ』ばかりが再上映されるけど、これだけじゃあないですよ。あと、『俺の背中に陽が当る』なんていうのも埋もれてるなあ…。
裕次郎に関しては、『あいつと私』(中平康監督)というのが再評価されてもいい作品で、60年安保当時の大学生の「性」をテーマにした今見ても大胆な作品。それと裕次郎主演・恋愛映画の極北はやっぱり『憎いあんちくしょう』(蔵原惟膳監督)かな。ロードムービーとしても、今見てもなかなか凄い。(確か浅丘ルリ子も、もう一度やりたい映画と言っていたっけ。ところで日活初のカラー映画でコニカラーというシステムで撮られた映画『緑はるかに』(井上梅次監督)の主演は少女時代の浅丘ルリ子。この映画ってたまにフィルムセンターで上映されますね。)
④『非行少女』(浦山桐郎監督)
『キューポラのある街』で御馴染み、浦山桐郎の監督二作目。モノクロの美しい画面に、浜田光夫と和泉雅子!当時の和泉雅子は、今とは別人のような美少女。(勝気な感じは今も昔も変わらないが…。)確か、最後に列車の中でキャラメルを食べるシーンなんか、可愛かったですよ!この作品、当時モスクワ映画祭金賞を獲得。カメラは現在撮影監督協会・名誉会長の高村倉太郎氏。(②や『渡り鳥』シリーズも担当されてます。)
因みに、浦山監督の兄貴分、今村昌平に関して。いわゆる「重喜劇路線」の『にっぽん昆虫記』『赤い殺意』『人間学入門』は、私にとっては姫田真佐久カメラマンの望遠レンズのルックが今見ても強烈な作品という印象。『果てしなき欲望』という軽い感じの職人的犯罪映画もなかなか忘れがたいものがある。(といっても、これもカメラは姫田氏だけど。)最後の大雨のシーンは圧巻です!!
⑤『かぶりつき人生』(神代辰巳監督)
ストリッパーの母娘を描いた、神代監督の初監督作品。この作品は当時の日活でも空前の不入りで神代監督はロマンポルノ路線になるまで干されてしまう。
この映画、以前ある映画館で観ていた時、ホントに興奮した作品で、60年代のゴダール作品を思わせるモノクロ・シネスコ画面でかっこよかった~。早すぎた一本っていう事なんでしょう。
この映画の主演女優と神代監督は結婚することになるのですが、この人、大変もてたらしい。『渡り鳥』シリーズのチーフ助監督時代、日本各地のロケ先に先乗りしては、モテまくっていたという伝説がある。ところで『渡り鳥』シリーズの斉藤武市監督というのも再評価されていい人のような気がする。『東京の暴れん坊』なんて、確か大滝詠一が好きな映画にあげていたし…。
★ ★ ★
後は宍戸錠の『コルトは俺のパスポート』(野村孝監督)、渡哲也主演で『勝手にしやがれ』のパロディ『紅の流れ星』(舛田利雄監督)、くすんだ色調が印象的な『野良猫ロック』シリーズ(藤田敏八監督他)なんかも忘れがたいけど…。
しかし、こんなことを書いてると、一体幾つなんだと言わそうですね?そんな年ではないですよ!念のため。でも今や、情報収集なんて簡単な時代ですからね。自分からアクセスするかどうかの問題ですから。岡田斗志夫が、以前「家庭用ビデオの普及がオタクを進化させた」と言っていたけど、一理あるような気がする。でも、ココに挙げた映画って、ほとんど映画館で観てるな、私。
PS:今観たいと思っているのは、『カナリア』(塩田明彦監督。新興宗教(オウムがモデル?)の子供のその後を描いた作品。この人の映画ってたまたま全部映画館で観てるんですよね。)と『トニー滝谷』(市川準監督。村上春樹の『レキシントンの幽霊』収録の短編の映画化。少なくとも原作は面白いです。イッセイ尾形と宮沢りえ主演。)あたりかな。行くかどうかわからないけど…。観た人!感想聞かせて下さい、ネタバレなしで!!
過去のこのブログの記事を読み返していたら、東宝、東映、松竹、大映、新東宝ぐらいまで話題が出てくるのに、一社忘れてたなあということに気づいた。そう、日活です。
別に日活のために何かする義理なんてないのだけれど、公平性(?)ってやつを保つかってことでこの企画。セレクトの主旨としては、めったに見ることのできない戦前作(京都大将軍時代や日活多摩川時代などいろいろあるんだけど。)と日活ロマンポルノ(じつはひょんなことから嵌ってしまって一家言あり。推薦作をあげると20本は下らない。)は除外して、「戦後作品でロマンポルノ以前のもの」という基準で選んでみました。
①『素っ裸の年齢』(鈴木清順監督)
普通、日活時代の鈴木清順といえば、『東京流れ者』(たまにカラオケで歌います!)、『関東無宿』、『けんかえれじい』、『殺しの烙印』あたりだろうし、私としても、『河内カルメン』や『花と怒涛』なんか大好きだが、あえてこの一本。
赤木圭一郎なんて、いまどき話題にもならないだろうけど、日活撮影所内のゴーカート事故で死んでしまった“和製ジェームス・ディーン”といわれる役者。しかし、この人の初主演映画を鈴木清順が監督していたということは案外知られていないのでは?
この頃の鈴木清順はシャープな職人監督的なところがあって、『影なき声』とか『踏み外した春』なんていうのも結構渋い。一時間足らずの短い作品ながら、“苦い青春”という感じの佳作。
因みにこの後、赤木の主演した『拳銃無頼帖』シリーズを監督した野口博志(博康)は鈴木清順の師匠に当る監督で、再評価されるべき人。『拳銃無頼帖』シリーズの銃撃戦のカット割りは、日本のハワード・ホークスと言いたくなるような突拍子のなさがあって痛快。現在の清順作品の不思議なカット割りのルーツはココにあると思うんですがね…。
なお、最高傑作という噂の最新作『オペレッタ狸御殿』の公開も楽しみですね、清順さん!
②『洲崎パラダイス赤信号』(川島雄三監督)
これは知る人ぞ知る傑作。川島雄三の日活時代といえば、『幕末太陽伝』と『愛のお荷物』が有名だが、個人的にはやっぱりこの作品。場末に生きる男と女を三橋達也と新珠三千代が好演した作品で、冒頭の橋のシーンからヌーヴェル・ヴァーグっぽい洒落たモノクロ画面でカッコいい。
③『あした晴れるか』(中平康監督)
石原裕次郎主演作。全盛期の裕次郎を知らない世代にとって、なんで裕次郎が人気があったのか?というのは、なかなかわかりにくい問題なのだけど、その謎を解くカギは、案外こうしたスクリューボールコメディ(今風に言うとラブコメ?)の中にあるような気がする。要するに、それまでの単なる美男役者と違って、<本音で生きる等身大の若者>っていうところに魅力があったのではないか?
この作品は、以前、渋谷のユーロスペースでやった中平康特集でも取り上げられていたけど、八百屋の息子でカメラマンの裕次郎に相手役が芦川いづみ。芦川いづみがメガネを掛けた早口の女の子役で出ているんだけど、今っぽくて可愛いんだな~。
晩年は酒びたりで評判の悪い中平康だけど、若い頃のシャープな映画は今見てもなかなか良い。個人的には『その壁を砕け』、『猟人日記』、『紅の翼』(冒頭の暗殺者の主観の長回しが圧巻!)みたいなサスペンスタッチに手腕があったように思える。加賀まりこ主演の『月曜日のユカ』ばかりが再上映されるけど、これだけじゃあないですよ。あと、『俺の背中に陽が当る』なんていうのも埋もれてるなあ…。
裕次郎に関しては、『あいつと私』(中平康監督)というのが再評価されてもいい作品で、60年安保当時の大学生の「性」をテーマにした今見ても大胆な作品。それと裕次郎主演・恋愛映画の極北はやっぱり『憎いあんちくしょう』(蔵原惟膳監督)かな。ロードムービーとしても、今見てもなかなか凄い。(確か浅丘ルリ子も、もう一度やりたい映画と言っていたっけ。ところで日活初のカラー映画でコニカラーというシステムで撮られた映画『緑はるかに』(井上梅次監督)の主演は少女時代の浅丘ルリ子。この映画ってたまにフィルムセンターで上映されますね。)
④『非行少女』(浦山桐郎監督)
『キューポラのある街』で御馴染み、浦山桐郎の監督二作目。モノクロの美しい画面に、浜田光夫と和泉雅子!当時の和泉雅子は、今とは別人のような美少女。(勝気な感じは今も昔も変わらないが…。)確か、最後に列車の中でキャラメルを食べるシーンなんか、可愛かったですよ!この作品、当時モスクワ映画祭金賞を獲得。カメラは現在撮影監督協会・名誉会長の高村倉太郎氏。(②や『渡り鳥』シリーズも担当されてます。)
因みに、浦山監督の兄貴分、今村昌平に関して。いわゆる「重喜劇路線」の『にっぽん昆虫記』『赤い殺意』『人間学入門』は、私にとっては姫田真佐久カメラマンの望遠レンズのルックが今見ても強烈な作品という印象。『果てしなき欲望』という軽い感じの職人的犯罪映画もなかなか忘れがたいものがある。(といっても、これもカメラは姫田氏だけど。)最後の大雨のシーンは圧巻です!!
⑤『かぶりつき人生』(神代辰巳監督)
ストリッパーの母娘を描いた、神代監督の初監督作品。この作品は当時の日活でも空前の不入りで神代監督はロマンポルノ路線になるまで干されてしまう。
この映画、以前ある映画館で観ていた時、ホントに興奮した作品で、60年代のゴダール作品を思わせるモノクロ・シネスコ画面でかっこよかった~。早すぎた一本っていう事なんでしょう。
この映画の主演女優と神代監督は結婚することになるのですが、この人、大変もてたらしい。『渡り鳥』シリーズのチーフ助監督時代、日本各地のロケ先に先乗りしては、モテまくっていたという伝説がある。ところで『渡り鳥』シリーズの斉藤武市監督というのも再評価されていい人のような気がする。『東京の暴れん坊』なんて、確か大滝詠一が好きな映画にあげていたし…。
★ ★ ★
後は宍戸錠の『コルトは俺のパスポート』(野村孝監督)、渡哲也主演で『勝手にしやがれ』のパロディ『紅の流れ星』(舛田利雄監督)、くすんだ色調が印象的な『野良猫ロック』シリーズ(藤田敏八監督他)なんかも忘れがたいけど…。
しかし、こんなことを書いてると、一体幾つなんだと言わそうですね?そんな年ではないですよ!念のため。でも今や、情報収集なんて簡単な時代ですからね。自分からアクセスするかどうかの問題ですから。岡田斗志夫が、以前「家庭用ビデオの普及がオタクを進化させた」と言っていたけど、一理あるような気がする。でも、ココに挙げた映画って、ほとんど映画館で観てるな、私。
PS:今観たいと思っているのは、『カナリア』(塩田明彦監督。新興宗教(オウムがモデル?)の子供のその後を描いた作品。この人の映画ってたまたま全部映画館で観てるんですよね。)と『トニー滝谷』(市川準監督。村上春樹の『レキシントンの幽霊』収録の短編の映画化。少なくとも原作は面白いです。イッセイ尾形と宮沢りえ主演。)あたりかな。行くかどうかわからないけど…。観た人!感想聞かせて下さい、ネタバレなしで!!
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