切られお富!

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『TOKYO!』 (オムニバス映画)

2009-05-19 23:59:59 | アメリカの夜(映画日記)
フランスの監督たちが東京を舞台に撮ったオムニバス映画です。というか、あの『ポンヌフの恋人たち』で知られるレオス・カラックスが久々に監督をやってるということで話題になった作品ですよね~。というわけで、簡単に感想!

以前の記事なんかを読んでいただければ、いかにわたしがカラックスを好きかということが伝わると思うのですが(?)、とりあえず、順番に感想を書きましょう。

①ミシェル・ゴンドリー監督・脚本 / 「インテリア・デザイン」

地方から上京してくるカップルの話。で、自主映画やってるカップルなんですよね。

要するに、このカップルの目を通して、東京での暮らしをフランス人に紹介するみたいなつくりなんでしょう、きっと。

(因みに、東京の駐車場の問題に監督がこだわっているのは、パリが路駐解放区みたいな都市だから。パリに行くとよくわかりますよ。)

とにかく気になったのは、「こんな日本人いねぇよ」っていいたくなる主人公のカップル。要するに、言ってる事や態度があの身勝手なフランス人(?)そのもので、全然日本人じゃない!

ま、そこが面白いともいえますが、まさにフランス人演出家VS日本人俳優という感じ。たとえでいうなら、永瀬正敏&工藤夕貴出演の『ミステリー・トレイン』(ジム・ジャームッシュ監督)の違和感の残る「日本人」に近い印象ですね。

だから、カップルの女性(藤谷文子)がアイデンティティ・クライシスに陥るっていうストーリーもまさにフランス人的で、たぶん日本の女の子はそんな風に悩んだりしませんよ。(没個人、没個性的な子も多いからね~。)

というわけで、まさに「異文化交流」的な作品という感想でした。

因みに藤谷文子ってスティーブン・セガールの娘でしたよね。『英語でしゃべらナイト』で見たことがあった!彼女は非常に熱演してます!

②レオス・カラックス監督・脚本 / 「メルド」

いよいよ、カラックス!

「メルド」ってフランス語は英語における「シット」みたいなもので「くそったれ」みたいな意味なんだけど、要するに東京の地下に生息する究極の嫌われ者を、カラックスの分身ともいわれた俳優ドニ・ラヴァンが演じているという作品。

ま、結論からいうとかなり微妙な作品でしたが、過去の作品以上にドニ・ラヴァンの役はカラックスの分身だという気はしました。

カラックス自身も毒舌だし、なかなか作品を撮らないとか、妥協を知らない完全主義者だとか、とかく批判されることの多い人ですからね~。

ただ、カラックスの尊敬するゴダールと違い、短編映画はうまくないんだなってことはよくわかったかな~。(というか、これはたぶん知性とか教養の差の問題のような気もしたけど…。)

なお、続編があるかのような最後のテロップはゴダールの『はなればなれに』のパロディなんでしょ?浅いなあ~、こういうの!

③ポン・ジュノ監督・脚本 / 「シェイキング東京」

個人的にはこのオムニバス映画のベストだと思います。

引きこもり青年(香川照之)と宅配ピザの少女(蒼井優)の出会いを描いた作品。

引きこもりというと、フランスの小説で『浴室』という、男の子がバスルームにこもっちゃう小説があったけど、あの小説の引きこもりは日本人と違って理屈っぽくて、意外と行動的でしたよね。

しかし、この映画の引きこもりは結構日本人的というか、香川照之の熱演が光ります。それと、蒼井優がこういう変な役似合うんですよね。

それと、この作品の静謐な撮影スタイルや画面の色彩設計がたぶん日本人好みだって感じはしますね。(静的ニュアンスは、小津とか吉田喜重みたいな感じか…。あるいは、色調は是枝風?)

というわけで、この作品については万人受けする内容だと思います。

以上、トータルではいまひとつのインパクトですが、けだるい昼下がりなんかにはいいかも…。

オススメ。

<過去の関連記事>
・カラックスの毒舌はいかが?
・あのレオス・カラックスが、TOKYOを舞台に新作!
・カラックスが監督したサルコジ夫人のPV。

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<参考>
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