切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

2.26事件を題材にした表現をめぐって。

2016-02-26 22:57:57 | アメリカの夜(映画日記)
2.26事件の日というのは、じつは日本映画監督協会の発足日だったりするという不思議な縁もあって、映画、小説といろいろありますよね。ということで、簡単に雑感。

個人的には、226事件って陸軍内部の派閥対立がことの核心だと考えているんで、過大評価は禁物だと思っているし、515事件やこの事件をきっかけに「軍部の発言権が強くなった」というのはミスリードで、政党が自分から腰が引けていったというか、軍部にも批判が集まったが、政党も全く期待されていないことがはっきりした事件だったってことだと思うんですよ。そういう意味では、政党政治への不信感の顕在化というレベルで、当時の二大政党制も今の二大政党もよく似ているんだと思うんですけどね・・・。(今の「維新」なんて、大政翼賛会っぽい団体だし。)

で、表現の話に戻るんだけど、映画で2.26の生々しさを表現した作品といえば、中島貞夫監督の『日本暗殺秘録』なんじゃないかと思います。これは、「仁義なきシリーズ」でおなじみ笠原和夫脚本による、日本近代の暗殺事件百貨店みたいな作品だけど、他の2.26を描いた作品より、冷え冷えとした感覚があって、案外センチメンタルじゃない。個人的には、センチメンタルに描いた作品が最悪だと思うんですよね~。

で、意外と問題作なのは、三島由紀夫の小説『憂国』とその自主映画。数年前くらいに、幻とされたフィルムが発見されて、DVDにもなっていますが、音楽にワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」が使われていることからも暗示されている通り、三島の本音は、政治活動をもエロスの糧に使ってしまうという一種の掟破りの方で、こっちが本当のテーマだったんじゃなかったかと思うんですが、いかがでしょうか。(そういう意味では、三島の命日が「憂国忌」だというのは皮肉だけど・・・。)

なので、2.26を餌に三島が本当に政治を語ったのは、「英霊の声」の方じゃないかと思うんだけど、わたしはこっちはあんまり好きじゃありません。だって、英霊の声という発想自体が、どっかの新興宗教の教祖が書いた本みたいで、嘘くさいでしょう。中身も案外薄いし・・・。

というようなわけで、映画『2.26』とかじゃなく、『日本暗殺秘録』と『憂国』をこの際どうぞ。

PS:そういえば、あまり好きじゃないけど、阿部和重の『インデヴィジュアル・プロジェクション』って、裏テーマが2.26なんじゃなかったっけ?登場人物の名前が2.26がらみになっていて・・・。

(以前書いた記事)
・三島由紀夫の映画「憂國」のフィルム発見
・映画『憂国』のトリスタンって、誰の指揮?


日本暗殺秘録 [DVD]
クリエーター情報なし
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)


憂國 [DVD]
クリエーター情報なし
東宝


英霊の聲 オリジナル版 (河出文庫)
クリエーター情報なし
河出書房新社


インディヴィジュアル・プロジェクション(IP)
クリエーター情報なし
コルク
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 10月の新橋演舞場花形歌舞伎... | トップ | 『探偵を捜せ』 パット・マ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

アメリカの夜(映画日記)」カテゴリの最新記事