切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

今更ながら、『ぴんとこな』がぴんとこなかったわけ。

2013-09-06 00:12:05 | かぶき讃(トピックス)
歌舞伎を取り上げたドラマ『ぴんとこな』を一回だけ観たんだけど、もういいやとしか思えなかったわたし。文楽を取り上げた小説『仏果を得ず』がドラマにならないことを祈るな、いち伝統芸能ファンとして…。

①原作のマンガは読んでいないので、純粋にドラマの感想とだけ受け取って欲しいんだけど、中高生ぐらいが読む少女マンガみたいなストーリーだなと。二人の男の間に挟まれる普通っぽい女の子がヒロインみたいなね。だからリアリティがないし、大人のわたしにはついていけません。

②若手歌舞伎役者という設定の二人(御曹司と御曹司じゃない方)だけど、肝心の歌舞伎を演じるシーンの酷いこと…。もちろん、本職じゃないんだから仕方がないんだけど、あれを見ちゃうと、本職の歌舞伎の御曹司たちがいかに素晴らしく教育されているか、逆説的によくわかります。というか、別の言い方をすると、歌舞伎を観に行ったことがないひとがあのドラマを見たら、とんでもなく勘違いしかねない。還暦過ぎるまで小僧扱いくらいの厳しい社会だってことが、このドラマにせよ、『仏果を得ず』にせよ、描かれてないから問題なんですよね。

③第一話の最後に、お軽・勘平の道行を二人の若手が演じる場面が出てくるんだけど、踊りが駄目なのは仕方がないにしても、化粧が酷かったのにはゾッとしました。言葉は悪いけど、ぼったくりオカマバーみたいな感じというか…。ま、キャスティングに大問題があったということではないでしょうか。本来なら、本物の歌舞伎の御曹司でもキャスティングできればよかったんでしょうが、ジャニーズありきのドラマ枠でしょうしね。

というわけで、別にドラマを貶める気はありません。純粋に歌舞伎を見続けている人間の感想です。こう思った人がいることだけ、残しておきたかっただけ。ご参考になれば幸いです。

PS:歌舞伎の世界の厳しさやそのなかでの切ない恋愛を味わいたければ、宮尾登美子原作『きのね』という小説をお勧めいたしましょう。この本は亡くなった十二代目團十郎のお母さんをモデルにしているといわれています。成田屋の関係者には不評のようですが、わたしは素直に感動した作品でした。同様なパターンの文楽版としては有吉佐和子の『一の糸』という小説もあります。こちらも素晴らしく感動的。伝統芸能を扱って、大人の鑑賞に堪える小説もあるんですよね。だから、作り手の志しの問題なんですよ。ま、これ以上言っても仕方がないけど…。

ぴんとこな 1 (Cheeseフラワーコミックス)
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仏果を得ず (双葉文庫)
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きのね〈上〉 (新潮文庫)
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きのね〈下〉 (新潮文庫)
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