
戦前の日活多摩川撮影所、伝説の名作『土』(1939)。今回、京橋のフィルムセンターで上映されたのは、現存する最長のもので、貴重な上映会でした。簡単に感想っ。
フィルムセンターの説明によると、
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土[最長版]
(117分・35mm・白黒)
小作農の一家の厳しい生活をリアリスティックに描いた内田吐夢の戦前の代表作。封切り当時は142分の長さであったが、1968年に東独の国立映画保存所で発見されたのは、戦前のヴェネチア国際映画祭に出品するため短縮された版で、冒頭と結尾の巻が欠落した93分のフィルムであった。1999年には、ロシアのゴスフィルモフォンドで冒頭の巻などを含む115分の版が発見された(結末部分は欠落)。今回上映するのは、東独版の93分とロシア版の24分(いずれもドイツ語字幕版)を合わせた117分の「最長版」である。
'39(日活多摩川)(監)内田吐夢(原)長塚節(脚)八木隆一郎、北村勉(撮)碧川道夫(美)堀保治(音)乗松明宏(出)小杉勇、風見章子、どんぐり坊や、山本嘉一、見明凡太郎、山本礼三郎
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貧農の姿を描いた小説『土』は、夏目漱石をして「余の娘が年頃になって、音楽会がどうだの、帝国座がどうだのと云い募(つの)る時分になったら、余は是非此『土』を読ましたいと思って居る。」といい、「娘は屹度(きっと)厭(いや)だというに違ない。より多くの興味を感ずる恋愛小説と取り換えて呉(く)れというに違ない。けれども余は其時娘に向って、面白いから読めというのではない。苦しいから読めというのだと告げたいと思って居る。」とまで言っている文学史の傑作!(といっても、原作は相当読みにくいんですが!)
ということで!究極の貧乏ネタ映画なんですが、原作では地主と小作の関係や社会制度まで踏み込んでいる側面がある一方、映画はさすがにそこまで踏み込めなかったんでしょうねえ~。
ちょっとセンチメンタルな映画という印象さえ残る。
中身としては、農村の四季の風景を織り込みつつ、妻を亡くした夫、娘、幼い息子に舅のおじいさんの4人が登場人物。夫と舅の葛藤と和解が物語の縦糸になっています。
特に圧巻なのは、最後の火事のシーンなんだけど、黒澤明の戦後作品の火事のシーンに全然負けていない壮絶な映像で、後で資料を読んだら、監督を含む多くのスタッフがやけどを負ったとのこと!
戦前の日活多摩川撮影所スタッフの執念を感じさせてくれる貴重なフィルムでした!
ただ、リアリズム志向ゆえに、台詞がよくわからないんですよね、方言がきつくて。字幕が欲しいくらいでした。松竹大船の都会的なセンスに対して、日活多摩川の泥臭さ!
因みに、この映画製作当時の撮影所所長根岸寛一は映画監督根岸吉太郎の親戚で、日活を辞めた後、満州映画協会に関わっています。
なかなか観る機会がない作品なので、機会があれば是非ごらんあれ!
フィルムセンターの説明によると、
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土[最長版]
(117分・35mm・白黒)
小作農の一家の厳しい生活をリアリスティックに描いた内田吐夢の戦前の代表作。封切り当時は142分の長さであったが、1968年に東独の国立映画保存所で発見されたのは、戦前のヴェネチア国際映画祭に出品するため短縮された版で、冒頭と結尾の巻が欠落した93分のフィルムであった。1999年には、ロシアのゴスフィルモフォンドで冒頭の巻などを含む115分の版が発見された(結末部分は欠落)。今回上映するのは、東独版の93分とロシア版の24分(いずれもドイツ語字幕版)を合わせた117分の「最長版」である。
'39(日活多摩川)(監)内田吐夢(原)長塚節(脚)八木隆一郎、北村勉(撮)碧川道夫(美)堀保治(音)乗松明宏(出)小杉勇、風見章子、どんぐり坊や、山本嘉一、見明凡太郎、山本礼三郎
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貧農の姿を描いた小説『土』は、夏目漱石をして「余の娘が年頃になって、音楽会がどうだの、帝国座がどうだのと云い募(つの)る時分になったら、余は是非此『土』を読ましたいと思って居る。」といい、「娘は屹度(きっと)厭(いや)だというに違ない。より多くの興味を感ずる恋愛小説と取り換えて呉(く)れというに違ない。けれども余は其時娘に向って、面白いから読めというのではない。苦しいから読めというのだと告げたいと思って居る。」とまで言っている文学史の傑作!(といっても、原作は相当読みにくいんですが!)
ということで!究極の貧乏ネタ映画なんですが、原作では地主と小作の関係や社会制度まで踏み込んでいる側面がある一方、映画はさすがにそこまで踏み込めなかったんでしょうねえ~。
ちょっとセンチメンタルな映画という印象さえ残る。
中身としては、農村の四季の風景を織り込みつつ、妻を亡くした夫、娘、幼い息子に舅のおじいさんの4人が登場人物。夫と舅の葛藤と和解が物語の縦糸になっています。
特に圧巻なのは、最後の火事のシーンなんだけど、黒澤明の戦後作品の火事のシーンに全然負けていない壮絶な映像で、後で資料を読んだら、監督を含む多くのスタッフがやけどを負ったとのこと!
戦前の日活多摩川撮影所スタッフの執念を感じさせてくれる貴重なフィルムでした!
ただ、リアリズム志向ゆえに、台詞がよくわからないんですよね、方言がきつくて。字幕が欲しいくらいでした。松竹大船の都会的なセンスに対して、日活多摩川の泥臭さ!
因みに、この映画製作当時の撮影所所長根岸寛一は映画監督根岸吉太郎の親戚で、日活を辞めた後、満州映画協会に関わっています。
なかなか観る機会がない作品なので、機会があれば是非ごらんあれ!
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