ここのところ、三島由紀夫関連の出版が続いているのだけど、この本はその中でも異色の一冊。幻の映画『憂国』の演出家で劇作家・堂本正樹氏の回想録。冒頭、三島と氏との出会いのきっかけが語られるのだけど、これが当時32歳の美貌の若手女形・中村芝翫(後の六代目歌右衛門)に関する会話なんですよね!読まずにいられないでしょ?歌舞伎ファンとしては!
三島が当時学生だった筆者に投げかけた質問が、「君は芝翫、女と思う。男と思う。」というのも笑えるのだけど、芝翫の六代目歌右衛門襲名のときの三島の言葉、「君、歌右衛門は近くで見ても凛として美しいよ。あれが若い時男衆と駆け落ちしたかと思うと、つくづくそいつが空おそろしい」っていうあたりは、読んでるこっちもなかなか空おそろしい…。
(因みに、歌右衛門が福助時代に男と北海道まで駆け落ちしたって話は知ってる人は知っている有名な話。)
そして、問題は幻の映画『憂国』の話。この映画に関しては三島自身の言葉も結構残っているのだけど、なにしろ気取った人のいうことだから、現場の状況に関しては眉唾な面もあった。しかし、この本ではかなり具体的な状況が語られていてなかなか興味深く読める。ただし、肝心の映画の方をまだ見れない状況なので、わたしとしては判断保留。早く見てみたい気にはなるんだけど…。
三島由紀夫の映画「憂國」のフィルム発見
とりあえず、三島読者、歌舞伎ファンには興味深い一冊です。三島ファンは『三島由紀夫 映画論集成』という本のなかの『憂国』に関する記述とあわせて読むといいかも。
ところで、ついでだからわたしの好きな三島作品について、ちょっとだけ語っておくと、わたしが好きなのはあくまで初期の短編群。山田詠美や河野多恵子が無闇に褒める「青の時代」や「美徳のよろめき」、「音楽」みたいな中編はわたしにはどうも生ぬるくて、ジャン・コクトーを思わせる怜悧な言葉のちりばめられた初期の作品が断然好き。
個人的には「山羊の首」というアプレゲール世代のドンファンの話が好きで、この小説を読んでいると、三島は坂口安吾や太宰治、椎名麟三とある意味同様に、戦後の匂いを色濃く残した作家だったということがよくわかる。そして、三島由紀夫が光クラブ事件の山崎晃嗣と知り合いだったという話は保阪正康の本『眞説光クラブ事件』で知ったんだけど、「青の時代」以上に、時代の気分を漂わせるのが「山羊の首」だって気がします。
因みに、わたしの嫌いな石原慎太郎が『わが人生の時の人々』という本の中で「山羊の首」を好きな作品にあげているのにはちょっと苦笑しましたけどねぇ…。(「山羊の首」は『ラディゲの死』<新潮文庫>という短編集に入ってます。)
三島が当時学生だった筆者に投げかけた質問が、「君は芝翫、女と思う。男と思う。」というのも笑えるのだけど、芝翫の六代目歌右衛門襲名のときの三島の言葉、「君、歌右衛門は近くで見ても凛として美しいよ。あれが若い時男衆と駆け落ちしたかと思うと、つくづくそいつが空おそろしい」っていうあたりは、読んでるこっちもなかなか空おそろしい…。
(因みに、歌右衛門が福助時代に男と北海道まで駆け落ちしたって話は知ってる人は知っている有名な話。)
そして、問題は幻の映画『憂国』の話。この映画に関しては三島自身の言葉も結構残っているのだけど、なにしろ気取った人のいうことだから、現場の状況に関しては眉唾な面もあった。しかし、この本ではかなり具体的な状況が語られていてなかなか興味深く読める。ただし、肝心の映画の方をまだ見れない状況なので、わたしとしては判断保留。早く見てみたい気にはなるんだけど…。
三島由紀夫の映画「憂國」のフィルム発見
とりあえず、三島読者、歌舞伎ファンには興味深い一冊です。三島ファンは『三島由紀夫 映画論集成』という本のなかの『憂国』に関する記述とあわせて読むといいかも。
ところで、ついでだからわたしの好きな三島作品について、ちょっとだけ語っておくと、わたしが好きなのはあくまで初期の短編群。山田詠美や河野多恵子が無闇に褒める「青の時代」や「美徳のよろめき」、「音楽」みたいな中編はわたしにはどうも生ぬるくて、ジャン・コクトーを思わせる怜悧な言葉のちりばめられた初期の作品が断然好き。
個人的には「山羊の首」というアプレゲール世代のドンファンの話が好きで、この小説を読んでいると、三島は坂口安吾や太宰治、椎名麟三とある意味同様に、戦後の匂いを色濃く残した作家だったということがよくわかる。そして、三島由紀夫が光クラブ事件の山崎晃嗣と知り合いだったという話は保阪正康の本『眞説光クラブ事件』で知ったんだけど、「青の時代」以上に、時代の気分を漂わせるのが「山羊の首」だって気がします。
因みに、わたしの嫌いな石原慎太郎が『わが人生の時の人々』という本の中で「山羊の首」を好きな作品にあげているのにはちょっと苦笑しましたけどねぇ…。(「山羊の首」は『ラディゲの死』<新潮文庫>という短編集に入ってます。)
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