切られお富!

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『コマンダンテ』 オリバー・ストーン 監督

2008-08-29 04:31:53 | アメリカの夜(映画日記)
アメリカの社会派映画監督オリバー・ストーンが、最後のカリスマ的指導者といわれるキューバの指導者フィデル・カストロにインタビューしたドキュメンタリー映画。「アメリカが上映を拒絶した問題作」というふれ込みはともかく、演説している以外のカストロの映像は珍しいし、先日発表された彼の引退を考え合わせても、貴重で興味深い作品ではないでしょうか?因みにわたしはチェ・ゲバラよりカストロの方が魅力的だと思う口なんですけどねぇ・・・。

・フィデル・カストロとは
・チェ・ゲバラとは

信念を曲げず39歳で死んだチェ・ゲバラと、現実と柔軟に対応していく老練なカストロ。

サルトルやジョン・レノンみたいな青臭いひとたちがゲバラ・シンパであるというのは実に判りやす過ぎる話ではあるけれど、長生きしたっていう点に関してだけは、三島由紀夫に対する吉本隆明みたいな感じがしませんか、カストロって!(ちょっと、突拍子がなさ過ぎか?!)

で、話をこの映画に戻すと、まず目を引くのは、オリバー・ストーンのカメラワークと編集術。

複数のカメラを使った撮影と、ちょっと複雑なモンタージュ。

これが、この映画の持っている臨場感とかカストロにフレンドリーさを感じる大きな要因になっていて、ワンカメ・据え置き式の撮影だったらかなり印象が変わるんじゃないですか?(カメラがサルサのリズムを踏んでるってこと?)

で、肝心のオリーバー・ストーンの質問だけど、案外突込みが甘いというか、カストロのかわし方がうまいとはいえ、カストロ個人の持っているオーラにちょっと押されぎみという印象は持ちましたね。

(どうも、この映画のオリバー・ストーンは、終始ニコニコ顔だったという印象ばかりが残る。)

ところで、この際だからゲバラについて思っていることをちょっとだけ書いておくと、ゲバラがキューバを出てアフリカや南米のゲリラ戦に加わったのは「純粋さ」ゆえじゃなくて、組織人として失敗したからだと思うんですよ。

今も語られる「ゲバラ伝説」の中核は「純粋さ」を基調にしたもので、それゆえに若者はゲバラTシャツを買うわけだけど、組織人として居場所がなくなったからキューバを出ざるを得なかったというのが本当のところで、一応、社会人やってる今だからこそ、そうとしか思えないっていうのが、じつはわたしのゲバラ観。

で、国家経営も会社経営も「飯を食わせてく責任」みたいなところでは同じであって、かわしながらブレないカストロのしなやかさっていうのは、この映画の受け答えの中で随所に感じられます。ただし、カストロからは「純粋さ」っていうのは感じないなあ~。大人な感じではありますけど・・・。

(このあたりが、作家バルガス・リョサのカストロ批判とどこかで繋がっているような気がする。)

さて、この映画の中でわたしがいちばん面白かったのは、カストロ支持者の若い女性がカストロに頬をキスされて感動のあまり走り出すシーン。

カストロにせよゲバラにせよ、女好きで尚且つモテる。

そして、カストロの弁舌とゲバラの文才。

言葉にセンスがあってセクシーっていうのは、政治家の絶対条件であって欲しいなあって、つくづく~。

どっちもない政治家だらけの国はどうするんだってところだけど・・・。

<過去のわたしの記事>
・『モーターサイクル・ダイアリーズ』 ウォルター・サレス 監督(ゲバラの青春時代を描いた映画)
・『苺とチョコレート』  トマス・グティエレス・アレア監督(キューバ映画)


PS:そういえば、ベニチオ・デル・トロがゲバラを演じた伝記映画も公開されるんだよね

・7年かけてリサーチ。ベニチオ・デル・トロがチェ・ゲバラを熱演【カンヌ映画祭】


コマンダンテ COMANDANTE

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