
ドラマ『点と線』の後半、見ました!視聴率もよかったみたいですね。確かに、力作ではあったし、見ごたえはありましたが…。感想です。
・テレビ朝日『点と線』公式HP
・ビートたけし主演『点と線』、20%超える高視聴率
予算がそれなりにあって、監督以下スタッフ、役者ものって作っているのがわかるドラマではありました。
たぶん、一番やる気を出していたのは監督、カメラマンじゃないですか。凝ったアングルの画作りをしていたし、あの時間帯のドラマで、あれだけ逆光のアングル、ローキーの画面にこだわったのは、確信犯的なものでしょう。
しかし、見終わって、どうも深い感動まで届かなかったのはなぜかって考えてみると、やっぱり、監督、脚本、他の役者がビートたけしに気を使いすぎたってことに尽きるんじゃないですかね?
おそらく、脚本家は、映画『HANABI』でたけしが演じた刑事をイメージしながら脚本を書いたんだろうけど、北野映画のアウトロー的な刑事像と『点と線』の鳥飼刑事は少しタイプが違うんだと思いますね。
原作の鳥飼刑事は四十代でもう少し若いのですが、地方の定年前の仕事人間型職人刑事というのは、基本「まじめな刑事」ってことでしょう。しかし、北野映画のビートたけしって、もうちょっと無頼派で<アンチ組織>人間という感じが強い。
無頼派イメージを強調するために、原作にはない鳥飼刑事の「兵隊やくざ」的な軍隊体験が語られるのだけど、周囲から愛される老刑事と破天荒な兵隊のイメージがうまく繋がってこず、人物像が膨らんでいかなかった気がわたしはしました。
また、ミステリー物のパターンとして、推理を明晰に語る台詞回しというのがありますが、前の記事でも書いたように役者ビートたけしの声、台詞回しは必ずしも巧みではなく、推理を語る役はちょっと無理があった。かつて、『犬神家の一族』の映画化で、監督の市川崑が石坂浩二にこだわった理由がこういうところでわかります。
北野映画の演出が台詞を省略し少ない言葉のやりとりや間(ま)のリアリティを中心にしているのは、監督本人の演技にたいするいま一歩の自信のなさがそもそものきっかけなのかもしれないと、改めて思いましたね。
そして、鳥飼刑事を美化しようとするあまり、後半がセンチメンタルになり過ぎた。橋爪功や小林稔侍の役の鳥飼刑事に対する気を使った態度は、スタッフのたけしに対する態度を見るようでなんだか痛かったですね。もう少し、「さりげない気遣い」みたいな演出のほうが、哀愁が出たんじゃないかな?
それと、役者全般は熱演していたけれど、「ちょっとこの話にしては若いなあ」ってところもちらほら。
かつて映画化されたときは、たけしの役は加藤嘉 だったそうだけど、犯人の人妻は高峰三枝子がやっていたと聞いてちょっと納得。
・新旧の『点と線』のキャスティング
以前は大嫌いだった柳葉敏郎がかなりがんばっていて好感を持ったけど、このひとがいい味を出しそうなのは十年後くらいじゃないですかね。それと、竹中直人、大鶴義丹、宇津井健はいくらなんでも大げさすぎか。
そんなわけで、悪口ばかり書いてしまったようですが、これくらい力を入れて作られたドラマなら見る気になれますし、茶々を入れる気になります。だから、最近のリメイクドラマに比べたら、断然高評価だし、スタッフの方々、ご苦労様というのがわたしの心境。次に期待します!
ところで、最後に、前の記事で松本清張ファンを怒らせるようなことを書いちゃったんで、ちょっとだけ弁明。小説でいったら、『点と線』より、短編の「地方紙を買う女」っていう作品のほうが断然好きですね。宮部みゆきの解説も良かったし!
・テレビ朝日『点と線』公式HP
・ビートたけし主演『点と線』、20%超える高視聴率
予算がそれなりにあって、監督以下スタッフ、役者ものって作っているのがわかるドラマではありました。
たぶん、一番やる気を出していたのは監督、カメラマンじゃないですか。凝ったアングルの画作りをしていたし、あの時間帯のドラマで、あれだけ逆光のアングル、ローキーの画面にこだわったのは、確信犯的なものでしょう。
しかし、見終わって、どうも深い感動まで届かなかったのはなぜかって考えてみると、やっぱり、監督、脚本、他の役者がビートたけしに気を使いすぎたってことに尽きるんじゃないですかね?
おそらく、脚本家は、映画『HANABI』でたけしが演じた刑事をイメージしながら脚本を書いたんだろうけど、北野映画のアウトロー的な刑事像と『点と線』の鳥飼刑事は少しタイプが違うんだと思いますね。
原作の鳥飼刑事は四十代でもう少し若いのですが、地方の定年前の仕事人間型職人刑事というのは、基本「まじめな刑事」ってことでしょう。しかし、北野映画のビートたけしって、もうちょっと無頼派で<アンチ組織>人間という感じが強い。
無頼派イメージを強調するために、原作にはない鳥飼刑事の「兵隊やくざ」的な軍隊体験が語られるのだけど、周囲から愛される老刑事と破天荒な兵隊のイメージがうまく繋がってこず、人物像が膨らんでいかなかった気がわたしはしました。
また、ミステリー物のパターンとして、推理を明晰に語る台詞回しというのがありますが、前の記事でも書いたように役者ビートたけしの声、台詞回しは必ずしも巧みではなく、推理を語る役はちょっと無理があった。かつて、『犬神家の一族』の映画化で、監督の市川崑が石坂浩二にこだわった理由がこういうところでわかります。
北野映画の演出が台詞を省略し少ない言葉のやりとりや間(ま)のリアリティを中心にしているのは、監督本人の演技にたいするいま一歩の自信のなさがそもそものきっかけなのかもしれないと、改めて思いましたね。
そして、鳥飼刑事を美化しようとするあまり、後半がセンチメンタルになり過ぎた。橋爪功や小林稔侍の役の鳥飼刑事に対する気を使った態度は、スタッフのたけしに対する態度を見るようでなんだか痛かったですね。もう少し、「さりげない気遣い」みたいな演出のほうが、哀愁が出たんじゃないかな?
それと、役者全般は熱演していたけれど、「ちょっとこの話にしては若いなあ」ってところもちらほら。
かつて映画化されたときは、たけしの役は加藤嘉 だったそうだけど、犯人の人妻は高峰三枝子がやっていたと聞いてちょっと納得。
・新旧の『点と線』のキャスティング
以前は大嫌いだった柳葉敏郎がかなりがんばっていて好感を持ったけど、このひとがいい味を出しそうなのは十年後くらいじゃないですかね。それと、竹中直人、大鶴義丹、宇津井健はいくらなんでも大げさすぎか。
そんなわけで、悪口ばかり書いてしまったようですが、これくらい力を入れて作られたドラマなら見る気になれますし、茶々を入れる気になります。だから、最近のリメイクドラマに比べたら、断然高評価だし、スタッフの方々、ご苦労様というのがわたしの心境。次に期待します!
ところで、最後に、前の記事で松本清張ファンを怒らせるようなことを書いちゃったんで、ちょっとだけ弁明。小説でいったら、『点と線』より、短編の「地方紙を買う女」っていう作品のほうが断然好きですね。宮部みゆきの解説も良かったし!
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でも「点と線」も好きです
すいません。去年はあまり自分のブログを見ていなかったもので、ご返事が遅れました。コメントありがとうございます。
『点と線』も嫌いではないですよ。ただ、今だと映像にしにくい原作かもしれません。『地方紙~』は昔からよく映像化されるんですよね。神代辰巳監督も無名時代にテレビで演出してますし。