![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/71/927ff92d5e92a410eb33300938175209.jpg)
仁左衛門の毛谷村と、染五郎の空海の話の新作。観てきました。簡単に感想。
仁左衛門の毛谷村は、東京初演なんですってね。というか、大阪での初演も比較的最近の話のようで、縁の薄い演目だったとは意外でした。
ただ、それにしては実にはまっている。仁左衛門の六助の明瞭さ、透明感は独特のものだと思いました。吉右衛門だと、田舎に埋もれた大物って感じだったし、梅玉だと、田舎とはいえ品位を保って暮らす男という感じ、若手でも、染五郎の和事めいた柔らかみ、海老蔵の意外にも朴訥な青年像など、近年でもわりと傑作揃いの芝居ながら、仁左衛門は邪気のない笑顔と決まり決まりのカッコ良さが際立っていて、記憶に残る舞台でしたね~。
一方、女形の大役・お園は孝太郎だったけど、このひとも貫録がついたというか、堂々たるお園だったと思いました。この芝居だと、先代雀右衛門の花道の虚無僧姿(女が男装して花道を歩く姿を女形が演じるという倒錯?)の腰の雰囲気が絶品で、敵だと思っていた六助が許婚だと知った時の、急に出てくる色気も匂い立つようで素敵でした。さすがに今回の孝太郎は先代雀右衛門には及びませんが、女武道の貫録十分で、仁左衛門の六助に釣り合いが取れてましたよ。
脇だと、東蔵の母・お幸がその貫録で絶品でしたし、歌六の微塵弾正の古怪さ、彌十郎斧右衛門の滑稽味。まずまず、しっかり古典を観たという充実感が得られました。早めに、衛星劇場で放送してほしいですね。杉坂墓所をはじめ、こうだったっけというところが、いろいろあったんで。
次が夢枕獏原作、染五郎主演の新作歌舞伎「幻想神空海」。
2時間20分幕間なしのぶっ続けで、正直疲れました。疲れた原因の一つは、ストーリがよくわからなかったこと。「新作だから、予習なし」という観劇があだになりました。はっきりいって、かなりわかりにくい。幕間があれば、そこで筋書きを読むという手もあるんですが、幕間はないし、終始場内は暗い照明だったしで、ひさびさに困惑した観劇でした。
同じく、夢枕獏原作の新作歌舞伎「陰陽師」のときは、漫画も映画もあったんで、ある程度の予備知識を前提に舞台を観ることができたんだけど、今回は白紙の状態で観てしまったんでね~。
とはいえ、話の構造は「陰陽師」といっしょで、探偵役が染五郎の空海、ワトスン的相棒が松也演じる橘逸勢の「謎解きミステリー」という感じでしたが・・・。
で、手短に結論から言ってしまうと、歌舞伎にミステリー仕立ては合わないとつくづく思いました。染五郎には悪いけど、乱歩歌舞伎といい今回の芝居といい、外してる感が否めない。團十郎がやっていた半七捕物帳もわたしにはつまらなかったんだけど、舞台だと謎解きの説明部分がくどくなっちゃって、面白くないんですよね。しかも、舞台ゆえにやや説明不足になってしまうし。
熊谷陣屋とか千本櫻の鮨屋の謎解きは、謎解きが面白いんじゃなくて、意外性が主眼でしょう。近松半二の義太夫狂言の「実は~、実は~」という繰り返しの展開も、非現実感を畳み掛けてくるから面白いんで、その無理ある理屈を観客が納得しているわけではない。
というわけで、今回はどうにも乗れない芝居でした。
なお、美点を上げると、回り舞台を使って切れ目なく展開する場面転換の美術と照明が素晴らしく意欲的だったのと、役者では雀右衛門の楊貴妃が出色。あと、最後だけでてくる幸四郎の皇帝が、大した何かをやっているわけじゃあないんだけど、圧倒的存在感。こういうのは、確かに舞台役者のマジックですね。
あと、児太郎の演じていた悪女が面白くて、背の高い人だけにミッツ・マングローブみたいな、変な存在感でした。あれは確かに記憶に残る。米吉、梅丸の役の可愛さを圧して強力でした。また、たぶん、芝のぶのやった女狂言回しみたいな役もちょっと面白かったですね。
と、いろいろ書きましたが、染五郎の新作に賭ける意欲には敬意を表します。でも、もうミステリー物は・・・。
ま、長々ごめんなさい。
仁左衛門の毛谷村は、東京初演なんですってね。というか、大阪での初演も比較的最近の話のようで、縁の薄い演目だったとは意外でした。
ただ、それにしては実にはまっている。仁左衛門の六助の明瞭さ、透明感は独特のものだと思いました。吉右衛門だと、田舎に埋もれた大物って感じだったし、梅玉だと、田舎とはいえ品位を保って暮らす男という感じ、若手でも、染五郎の和事めいた柔らかみ、海老蔵の意外にも朴訥な青年像など、近年でもわりと傑作揃いの芝居ながら、仁左衛門は邪気のない笑顔と決まり決まりのカッコ良さが際立っていて、記憶に残る舞台でしたね~。
一方、女形の大役・お園は孝太郎だったけど、このひとも貫録がついたというか、堂々たるお園だったと思いました。この芝居だと、先代雀右衛門の花道の虚無僧姿(女が男装して花道を歩く姿を女形が演じるという倒錯?)の腰の雰囲気が絶品で、敵だと思っていた六助が許婚だと知った時の、急に出てくる色気も匂い立つようで素敵でした。さすがに今回の孝太郎は先代雀右衛門には及びませんが、女武道の貫録十分で、仁左衛門の六助に釣り合いが取れてましたよ。
脇だと、東蔵の母・お幸がその貫録で絶品でしたし、歌六の微塵弾正の古怪さ、彌十郎斧右衛門の滑稽味。まずまず、しっかり古典を観たという充実感が得られました。早めに、衛星劇場で放送してほしいですね。杉坂墓所をはじめ、こうだったっけというところが、いろいろあったんで。
次が夢枕獏原作、染五郎主演の新作歌舞伎「幻想神空海」。
2時間20分幕間なしのぶっ続けで、正直疲れました。疲れた原因の一つは、ストーリがよくわからなかったこと。「新作だから、予習なし」という観劇があだになりました。はっきりいって、かなりわかりにくい。幕間があれば、そこで筋書きを読むという手もあるんですが、幕間はないし、終始場内は暗い照明だったしで、ひさびさに困惑した観劇でした。
同じく、夢枕獏原作の新作歌舞伎「陰陽師」のときは、漫画も映画もあったんで、ある程度の予備知識を前提に舞台を観ることができたんだけど、今回は白紙の状態で観てしまったんでね~。
とはいえ、話の構造は「陰陽師」といっしょで、探偵役が染五郎の空海、ワトスン的相棒が松也演じる橘逸勢の「謎解きミステリー」という感じでしたが・・・。
で、手短に結論から言ってしまうと、歌舞伎にミステリー仕立ては合わないとつくづく思いました。染五郎には悪いけど、乱歩歌舞伎といい今回の芝居といい、外してる感が否めない。團十郎がやっていた半七捕物帳もわたしにはつまらなかったんだけど、舞台だと謎解きの説明部分がくどくなっちゃって、面白くないんですよね。しかも、舞台ゆえにやや説明不足になってしまうし。
熊谷陣屋とか千本櫻の鮨屋の謎解きは、謎解きが面白いんじゃなくて、意外性が主眼でしょう。近松半二の義太夫狂言の「実は~、実は~」という繰り返しの展開も、非現実感を畳み掛けてくるから面白いんで、その無理ある理屈を観客が納得しているわけではない。
というわけで、今回はどうにも乗れない芝居でした。
なお、美点を上げると、回り舞台を使って切れ目なく展開する場面転換の美術と照明が素晴らしく意欲的だったのと、役者では雀右衛門の楊貴妃が出色。あと、最後だけでてくる幸四郎の皇帝が、大した何かをやっているわけじゃあないんだけど、圧倒的存在感。こういうのは、確かに舞台役者のマジックですね。
あと、児太郎の演じていた悪女が面白くて、背の高い人だけにミッツ・マングローブみたいな、変な存在感でした。あれは確かに記憶に残る。米吉、梅丸の役の可愛さを圧して強力でした。また、たぶん、芝のぶのやった女狂言回しみたいな役もちょっと面白かったですね。
と、いろいろ書きましたが、染五郎の新作に賭ける意欲には敬意を表します。でも、もうミステリー物は・・・。
ま、長々ごめんなさい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます