ちょうど10年前の1月のこと。
寝台特急「あけぼの」がもうじき廃止されてしまうとの情報を目にした。
「あけぼの」は上野から青森まで東北本線、奥羽本線を経由して運行している夜行寝台列車だった。
廃止されてしまったらもう二度と乗れなくなる。
それならばと、大人の休日倶楽部パスを利用して乗ってみることにした。
「あけぼの」は普段でも乗車率がそこそこの人気の列車だった。
なので休日倶楽部パスの利用可能な期間は特に予約が難しく、しかもこのパスではB寝台だけがしか利用できなかった。
それでも空席のある日を探し出してすぐに予約し、どうにか乗ることができた。
上野駅のホームに「あけぼの」が入線してきた時はワクワク感でいっぱいだった。
夜行列車は前にも利用したことがあったが、寝台列車は初めてだったから。
予約できたのはB寝台の4人用区画の上段のベッド。
この車両は片側に通路があり、もう一方が部屋で、部屋の中は向かい合わせの二段ベッドになっていた。
部屋は女性4人、他の3人は東京から青森に戻るところらしく、この列車には何度も乗ったことのある人達らしかった。
上段に上るのにどうしたものかと考えていたら、その中の一人が窓の中央にあった折りたたんである梯子を開いてくれた。
たったこれだけのことでも珍しく、他の人たちに笑われながら自分でも何度もやってみた。
[取っ手を持って開くと梯子になる]
[下段のベッド]
[上段のベッド]
上段は落下防止のためか、ネットが張ってあり、枕と毛布が置いてあるだけの簡単な作りのベッドだったが、カーテンを閉じれば全くの個室だった。
それからは4人でしばらくおしゃべりしていたが、消灯時間になり、いつの間にか眠ってしまった。
いくつか駅を通り過ぎたのは何となく分かった。
はっきりと目が覚めたのは酒田をちょうど発車した時、朝の5時ごろだった。
外は暗くて何も見えなかった。
秋田を過ぎた頃から明るくなってきたが、一面真っ白の雪景色だった。
そして、10時近くになり、終点の青森に着いた。
駅の周りは雪で真っ白、降りた電車も凍っていた。
ずっとこのように凍ったまま走っていたのかと思うと、何だかすごく感動してしまった。
この時は寝台列車に乗るのが目的の旅だったので、どこにも寄らずそのまま新幹線で戻ってきただけだったが、とても贅沢な、良い体験になった。
寝台特急「あけぼの」は、2014年3月に廃止になってしまった。
もう二度と乗れないのかと残念に思っていたところ、秋田県にある「小坂鉄道レールパーク」に「あけぼの」24系客車が当時のまま保存されていて、それが「ブルートレインあけぼの」という名前で宿泊施設として復活しているということだった。