第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

米国医療訴訟 Risk and Evidence Based Intervention Program

2021-01-04 10:09:48 | Harvard medical school

みなさま、こんにちわ。

しばらく2週間ほどゆっくりしてしまっていました。

さて、今日からWinter 集中プログラムです。Harvad Medical Schoolの特徴として、Fall とSpring の間にSummer program とWinter programがあります。

どうも米国のリサーチ分野の分類で言えば、Generalistとしての僕の専門領域はHospital medicineであり、その中でも医療の質と安全領域になるようです。

以前僕が書かせてもらった論文から。

 

OGPイメージ

Academic Hospitalistは先駆を切らねばならない-日本の大学でGeneralがこれから爆発するために- - 第三部 熱帯夜の明けに~Generalist in 出雲 大学編~

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僕の所属するプログラムはほぼ全て必修が決まっているので一つも落とせません。しかし、まさに自分が研究してきた内容そのままなので、読んだことある論文ばかりなので助かります。

 

Harvard大学の医療の質と安全分野の研究は、先行研究とランドマークレポート的にも確実に世界一であると思います。

理由の一つにErrorから学ぶという姿勢、訴訟からRisk reductionのために実際に行動に移す姿勢を重要視してきたからとおもいます。

後述しますが、大学の医療訴訟対策機関であるCRICOは全米一位の医療訴訟に負けない、また訴訟に発展させない取り組みをどこよりもがんばってきたとのことで授業ではそのようなエラーを起こさない、裁判に発展させない、負けない、様々なノウハウとスキルを学びます。

単に訴訟で負けないとか勝つとかそういものではなく、研究対象としてどうすれば訴訟に発展するようなエラーを防ぐことができるか?またどのようにして、患者リスクをへらす介入ポイントを探るかということが大事です。これは患者への安全性を高める当たり前の大きなメリットがあるだけでなく、一生懸命働いている医療職の精神的摩耗・時間的ロス・離職を防ぎ、結果的に双方にとって建設的な良い結果を生むものになる重要な取り組みです。僕はこれをホスピタリストの病院の治療(どの病院でも、"患者"として側面がありそれに対する的確な診断と治療が必要と考えてきました)

今回は、そのような内容を少し記載しておきます。

冬季集中セミナーの前半は医療訴訟と対策&質の改善についてです。後半はリーダーシップWSで集中的にマネージメントを学びます。

 

前者は

  • Captive Malpractice Company
  • The Business of Malpractice
  • The Financing of Malpractice
  • Protecting Providers: Medical Legal Process
  • Malpractice for the Provider’s Perspective
  • CARe Program
  • Coding, Analytics, Data Visualization
  • Promoting Safety: Patient Safety Risk Mitigation
  • Risk Assessment Programs
  • Patient Safety Organizations
  • Risk Specialty Areas: Emergency Medicine, Surgery, Obstetrics, Primary Care
  • Simulation in Health Care
  • Patient Safety Adoption Initiative
  • Spread and Sustainability of Patient Safety Initiatives
  • Technology and Risk

です。

 

ちょっとだけ医療訴訟の話の内容を記載しておきます。

なぜ医療訴訟の研究が重要であるか?それは、もっともMedical errorの改善の余地可能な、Human errorやSystem errorレベルを洗い出すことができること一般的に言えます。しかし、訴訟の研究は医療者側(Provider)を訴訟から守り、そして患者側の安全も同時に守るという視点に直結していることが特徴といえます。通常のインシデントレポートやエラーの報告からだけではは訴訟における医療者提供者を守る視点などは含むことはあまりありません。

世界で最も医療訴訟の対策と医療安全介入を行っている自前の保険会社(CRICO)の活躍が大きいです。大学専属の医療訴訟に対する保険会社であり、かつエビデンスの高い介入を実際に実装することで訴訟を減らし、患者の満足度を上げ、訴訟での支払いをへらす事で大学附属の保険会社としても利益があがるという非常にWin-Winの素晴らしいシステムです。

我が国の21倍も医療訴訟件数が多い米国だからこそ会社運営ができるのかもしれませんが、日本の医師賠償保険にはこのような医療者側(被保険病院・施設・医師)への質の改善と安全の介入は全く行っておらず盲点であると思います。(そもそも大学病院でも医療の質と改善の専門家が、Evidenceに沿って横断的かつアクティブにImplementationできている施設はすくないと思います)。

自分もこのような会社を作り、全国の病院に介入しようかと思いましたがかなりの心労と体力的な負担になりそう断念しました 笑。

脱線しましたが、Harvard Medical School 関連の医療訴訟のデータ(CRICO report)では

原告の勝訴が2%、医療組織側が14%、和解31%、却下・取下げ等が53%とこれだけみると米国(特にHarvard CRICO)では訴訟を起こしても殆ど医療施設が負けることがないことがわかります。ただ、先述したように日本の医療訴訟の21倍の訴訟数がありますのでそのあたりを加味すると、どの医療現場でも金銭目的で医療訴訟に発展する風土があるとも言えます。

 

また有名な

Jena, AB et al, N Engl J Med 2011;365:629-36の論文では、

医師が65歳までに訴訟に直面すると予測される累積グラフで、リスクの低い専門分野の医師では45歳までに36%の医師が最初の医療訴訟に直面すると予測されます。リスクの高い専門分野の医師では88%と極めて高い割合で訴訟に発展しています(なんだこれは?日本では考えられない・・)。また65歳までにはリスクの低い専門分野の医師達で75%が、リスクの高い専門分野の医師の99%は医療訴訟を経験していると予測されています。

米国では臨床医をやっていると訴訟は必発であり、精神的に摩耗しやすいようで、実に恐ろしいです。

 

一方で、医療訴訟の診療科別傾向性では大きなばらつきがありまして、これは我々の日本の複数のデータでも特徴的な傾向があります。

医師一人あたりの換算で、脳神経外科、胸部心臓血管外科、一般外科が米国では訴訟に遭遇しやすい診療科です。やはり米国では高度な外科系専門家になればなるほど極めて高い訴訟リスクを背負っているといえます。

冬休みはだらけてしまいましたが、このような感じで、再び全力で闘争を開始したいと思います。忘れないように自分のout putをこちらにしるしていこうと思います。

 

 

 

 



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