第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

なぜ医師が今後王道的臨床以外も目指すようになるか?

2021-02-04 00:12:17 | Harvard medical school

さて、Globisの田久保先生との楽しい語らいも終わり、日常に戻りHarvard Medical SchoolのSpring termが今日から始まります。今日からまた普通のFull time大学院生です。

ゴリゴリとRoot cause, Flow chart, Stakeholder analysis, Effort matrix, などを一人で島根の未来を考えながら、どうしたら今の現状が良くなるか、僕らの業界や総合診療医の育成の課題などなど、全体が良い方向へシフトするか省察と考察をしております。 戦略と戦術を考えるのが以外と好きです。

 

いつの時代も情報が勝負を決めます、明智光秀を討ち取った豊臣秀吉の時代も、今風に言えば情報とデータで勝負が決まります。情報はいかなる時も力であり、金であり、武器であると思います。

それくらい情報というのは重要ですが、臨床医としての重要な情報は、当然これまでのヘルスケア業界で最も主要で王道と考えられた臨床医学的な情報(いわゆる診断や治療ですね)です。医学生などもまずは良い臨床医を目指しています!!と答えることが多いので、これはうなづけます。

しかし、下記のように患者のヘルスケアのアウトカム死亡や疾病などの原因を考えた時に、実は臨床的な原因であるのは約15パーセントのみです。たった15%です。えっ、本当ですか?

*Hood CM et al. County health rankings: Relationships between determinant factors and health outcomes. American Journal of Preventive Medicine. 2016;50(2):129–35)

*https://www.mckinsey.com/industries/healthcare-systems-and-services/our-insights/the-era-of-exponential-improvement-in-healthcare

 

では他の要因は何かと言うと、残りは、Social determinants of health 社会的要因(40%)だったり、Health Behavior 健康行動(20%)だったり、本人にはどうしようもない遺伝学的要素(15%)が要因であるとされているわけですね。85%位は臨床的なもの以外の要因か・・。

ふと振り返ると最近では王道的な臨床分野以外のことを積極的に学び、外へ外へベクトルを広げていく臨床医が増えてきている印象です。いや、実際かなりの速度で増えています。

その意味で我々ジェネラリストも新しく生まれ変わった大学ならば、これからかなりの速度で大学へ回帰するのは必然であるという予感がしています。逆を言えば、それらの需要に供給を合わせることができない、Change managementができない大学は少子化と予算削減の中にかなり強いSelectionの圧力がかかると思います。


さて、ここからが重要で、王道的な臨床医学の情報量は地球上に発進される患者のアウトカムに寄与する全体に対する割合は極わずかです。一方で、社会的環境的要因や行動要因などの情報は臨床的情報の約2,750倍以上の圧倒的なデータ量で、秒レベルでどんどん溢れ出しているのだそうです。

このような医療の患者のアウトカムにもともと大きく関わる重要なデータ(情報)が王道の臨床医学以外のところから大量に発生してきていることや、どんどん進化するテクノロジーと融合する世界では、患者のアウトカムに効率的に寄与させる他の介入方法として、王道的臨床よりも圧倒的に質と量で重要な分野へ進みたくなるわけです(というか、もう若い先生達はなっているような・・)

つまり、熱心な臨床医がSocial determinants of healthとHealth Behavior に特化して学び、それを応用したい!!と考えることはとても自然であり、今後普通に考えなければならないマインドセットだと思います。そして社会的要因健康行動の要因も考える診療科として際立っているのが総合診療科であるとも言えます。だから比較的新しい総合診療医学との学問的な親和性が高くなるのか!! とふと感じた夜でした。

周囲のビジネス業界へ突入していく友達や先輩後輩をみていると、このあたりが根本的な理由だろうかと思います。

王道的な臨床医学情報よりも、より多くの患者アウトカム、健康アウトカムに貢献できるのならば、多分本能的・直感的だったり、理論的に考えている先生はITやベンチャー企業へ視点が向かうことが多くなるのは必然ではないかと思うわけです。

そして田久保先生と議論して面白かったのが、我が国のベンチャーやIT企業は当然医療に素人ですので、企業からすればそのようなマインドセットを持っている臨床医は珍しい希少価値の高い人材になります。強いLove callが送られて簡単に企業とカップリングされる構造があるのも納得です。

医学生さんは、解剖学や、生理学や、診断学や治療学などを一生懸命ならって覚えて、アウトプットしてなどの勉強方法が今でも主流ですが、このような話をすると驚き戸惑い不安になりながらやたら納得されます。おそらく、ネットやSNSの大量の情報に常時晒されているので、肌感覚で理解しているのでしょうね。

多分、医師というその存在の意義は、未来では大きく変わっていく気がしています。

僕も未だにずっと学生ですが、情報を自分で取りにいける学生であるかどうか、これが大きく学生としてのアウトカムを分ける時代の到来になっちゃったなぁと、もう若くないのにぃ・・と同じ様に少し不安です。






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