憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

箱舟  終 (№8)

2022-12-17 13:19:35 | 箱舟 第一部

「ごめんなさい。徹夜続きで、まいってしまってるんだと思うの。

そして、彼女の脳波解析を照合した結果

彼女の「箱舟」は一種、テレポートだと思うの。

丁度、彼女が消えるまえに発した「箱舟」は彼女の母船とのコンタクトをとる呼びかけじゃないかと・・・」

とってつけた説明をしゃべりだす私をスタッフは怪訝な顔でみつめていた。

「それが、どこで、照合できたというんだ?」

つじつまの合わない説明は彼女の仕業でしかない。

私は寄生の事実を認識するとともに、

どうすれば、彼女が寄生型生命体であることを伝えられるか

それを考えていた。

 

私の中にまるで、サトリの化け物がいる。

私の意思をよみとって、寄生の事実にふれようとすると

サトリの化け物は私を支配しだす。

 

「ですから、この部分・・・」

私は脳波の数字羅列をポイントする。

「この部分が「箱舟」の文字を発声した部分になります。

そして、この発声が何度か繰り返されている。

まるで、呪文か、呼びかけのように・・・」

箱舟の発声文字列と照合される文字列をマークしてみると、

確かに何回か繰り返される。

でも、それは、彼女が私によこしたメッセージのそのままでしかない。

箱舟は「運ぶ・・ね」だという彼女の解説部分でしかない。

 

私を差配しだした彼女の言い分に

スタッフはかすかにうなづいて見せている。

このままでは、私は彼女に寄生されたままになる。

どうすれば、サトリの裏をかいて、

寄生の事実を伝達することができるだろう。

 

「ですから、彼女は母船?おそらく、母船にテレポートした。

と、私は判断するのですが・・・」

彼女という生命体はもう二度と私たちの前にあらわれることがないだろう。

と、

彼女は今回の事件と地球外生命体の存在とのコンタクトを

締めくくろうとしていた。

このことで私の進退は窮まった。

何とか画策しようとする私の思考に彼女が入り込んできていた。

私の裏側で彼女の怨念にも似た思いがひびいてきていた。

何かしゃべろうとしても無駄でしょう?

私は彼女に寄生された事実さえ、誰にも告げることは出来ない。

助かる道はない。

ただ共存あるのみ?

この事実を受け入れさえすれば、彼女は私の表面上に現れることなく

私を差配することはない。

彼女がそう言った気がした。

         (終)



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