憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

箱舟   1(№1)

2022-12-17 13:21:43 | 箱舟 第一部

一見みたそのときは、完璧なヒューマノイドタイプで、私たちは

まず、人間のそれも、行き倒れであると

あわてて、救急車を呼び、彼女あるいは、彼を、病院に搬送した。

 

身元を確認できる物はなく、いっさい、彼女(彼)を証明するものがなく、

名前すらわからなかった。

 

私たちが身元引受人として、病院での治療費いっさいを支払うとして、

病院側では、彼女(彼)の回復を待って、

彼女(彼)の個人情報を得るつもりだったらしく、

その時点で私たちは病院での手続きを終えラボに帰還した。

 

ラボの中では私たちがしていることといえば、たとえば、

「異種生物のDNA段階での交雑により、生物のもつお互いの長所を受け継いだ新種の発生」

ようは、混血による品種改良をDNA段階で進める研究をしてみたり、

「異なる環境下において、生物の対応力がどのようにDNAを変化させてきたか、それがDNAのどの部分に記憶されているかの調査研究」

これも、遺伝子工学の部類に入る物だと思うが、地球の環境変化に適応できるDNAを人間に適応することが

できれば、もっと未来の人類存続が保証できるのではないかという

いわば、ノアの箱舟計画ともいえる人類救済の見地からの研究である。

 

病院から戻ってきて、30分もたたなかったと思う。

病院側が私たちの研究を知っているとうこともあったとおもう。

上に彼女(彼)の身元を引き受けている。

病院から連絡が入った。

「彼女(彼)は地球外生命体であると思える」

病院からの連絡から、1時間もしないうちに、

ラボの中に彼女(彼)を移送し終えた。

 

昏睡状態に陥ったままの彼女(彼)を、

クリーンルームの奥、生命維持装置が並ぶ

厳重な個室のベッドに横たえ、

彼女(彼)に、点滴を開始した。

 

病院側が一見、人間の体そのものでしかない、彼女(彼)を見て

地球外生命体と判断したのは、

彼女の血圧を測ったことが最初だったという。

 

血圧は、無い。

脈も無い。

看護師は慌てて、彼女の生死を確かめた。

心臓も動いていない。

 

瞳孔は開いたまま。

 

植物人間?

 

いや、それならば、生命維持装置もつけず、

生きていられるわけが無い。

 

彼女は仮死状態にありながら、

もっと、言えば、死んだ状態にありながら、生きている。

 

醜悪な映画の主人公、ドラキュラのごとく

墓場の土の中に眠るゾンビのごとく、

目覚めるときをまちながら、

仮死状態でいるのかもしれない。

 

とにかく、レントゲンを撮ろうとレントゲン室に運んで、

撮影した時だったという。

レントゲンの照射により、

彼女の体全体が青白く発光しだした。

 

レントゲン室内に入ったレントゲン技師は

発光が室内全体にまで青白い光を投げかけている様を

ただ、見続けていた。

 

ひょっとすると、彼女は放射能を撥ね返しているかもしれない。

被爆しているのかもしれない。

そんなことも考えつきもせず、ただ、呆然と彼女の発光を見つめ続けた。

 

いつまでたっても、レントゲン室からでてこない技師を

不思議に思いながら、看護士は

彼女を集中治療室に運び入れるための

ストレッチャーをレントゲン室に入れてよいものか、

はたまた、まだ、レントゲンを撮るのか?

尋ね合わせるために技師に声をかけた。

返ってきたのは、技師のかすれた声だった。

「せ・・先生・・よんできて・・早く」

異変を感じた看護士は何らかの応急処置が必要なのだと判断し

まず、自分の目で「患者」の状態を掴んでおこうと思ったに違いない。

だが、結局、レントゲン室に入った看護士は、あわてて、

医師を呼びに行くことに成った。

 

看護士の報告に医師3名が駆けつけ、看護士とレントゲン技師

都合、5人の目撃者の前で

青白い発光が終息をむかえはじめた。

彼女の体の中に光が吸収され、あたりは元の部屋の明色にもどるまで、

ほんの30秒もあっただろうか?

 

まず、動き始めたのが看護士だった。

彼女に恐る恐る、近寄ると、彼女の呼吸を確かめた。

次に脈・・。

心臓が動いている。

 

「先生、呼吸も脈もあります。心臓もうごいています」

看護士の声に呪縛をとかれ、医師達が、彼女の傍に駆け寄った。

 

「どういうことだろう?」

彼女を、どうするか?

 

彼女を、どうすればよいのか?

 

まのあたりにした、青白い光が何であったのか?

 

彼女の正体はなんであるのか?

 

いっさい、討論などで、結論の出る物事ではない。

 

「レントゲンの照射によって・・発光が始まったということは、

たとえば、原子力エネルギーで・・・」

技師の言葉に、看護師はやっと、「被爆」を疑いはじめた。

「先生?彼女をどうするかより、我々の被爆の有無を確かめないと・・」

 

核融合ににた反応が彼女の体の中でおこり、

彼女は核エネルギーで生命を維持しているとするなら、

まちがいなく、医者や看護師で、解明できる「生き物」ではない。

 

正体不明の「生き物」を、どうするかより、

今、考えなければならないのは、

「我々」ではないか?

 

この結論により、

私たちはガイガーカウンターを携え、病院に戻る事になった。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿