初めてのお買い物

日本国内では、幼い子によるこの「初めてのお買い物」なる企画がテレビで人気だと思う。
だが、欧米特に米国では、この企画は児童保護センターに通報される危険があるという。
そして、最悪は児童虐待で逮捕されることもあるらしい。
そんなこととは、まったく違う話がこうです。
元クイズ王にして、著述家の西沢泰生氏の紹介だ、実話か創作かは定かではありませんが。

◆実演販売人の体験
　Aさんは、有名百貨店で実演販売を行っている。
　開店直後の、他のお客さんがほとんどいない時間帯にこの顧客が来店した。
　それは脳性麻痺で両手両足を動かすこともできず、ただベッドに横たわって介護されているミサちゃんだ。
　中学生くらいのその顧客は、介護の先生に話しかけられていた。
　ミサちゃん、ほら商品がいっぱいあるよね、楽しいね・・・
　ミサちゃんは、アーとかウーとか返事をしている。
　
　Aさんは、いつものように高級石鹸を売るための話しかけをした。
　「お嬢様、お手をどうぞ。」
　介護の先生は、ミサちゃんおじさんが手を洗ってくれるんだって、やってみる？と話しかける。
　わずかしか動かない手をAさんの前に差し出そうとするミサちゃん。
　では、手を洗いますね、この石鹼はお肌がスベスベになりますよ。
　いつもと同様に説明し、少女の手を石鹸で泡立て、そして洗面器で洗い、タオルで拭き上げる。
　先生は、奇麗になったね、スベスベだね、どうもありがとうございましたと言って去ろうとする。
　
　だがミサちゃんが、アーアーと声を上げる。
　どうしたの、ミサちゃん欲しいの？石鹸買いたいの？買えるかな？
　５９１円だよ。ミサちゃんは、アー、ウーと答える。
　買えるよね、ミサちゃんのお小遣いで買えるよね、買うの？
　ウー、先生はミサちゃんの黄色のかわいい財布を出して会計しました。
　ミサちゃんは、どうやらにっこりしているようです。

　そんなミサちゃんを見て、付き添いの先生は大泣きしています。
　ありがとうございます。ありがとうございます。こんな経験をさせてあげたかったのです。
　もしかしたら、それはミサちゃんにとって「初めてのお買い物」だったのかもしれません。
　そして同様に、販売員のＡさんにとっても、販売して喜ばれるという体験だったのです。

　→おいらも涙涙。